第十四話 シームレス・ワールド
「飛ぶわよマリー! 垣根のない世界」
ベルが座ってる僕と牛男の間に来て手を握る。瞬間に回りの景色がまるでテレビのチャンネルが変わったかのように瞬時に変わる。
ピンクの空に、白い雲、芝のような短い草が生えた大地が地平線まで続く。目の前に、白いテーブルと椅子が4脚。テーブルには緑のパラソルがついてる。テーブルの上には3つのカップとソーサーがあり、湯気を立てている。なんなんだ?
「マリー、コーヒータイムかしら」
僕と手を繋いでいるのは、二十歳前後に見える大人のエルフ金髪ツインドリル。
「ベルなのか?」
「誰に見えるのかしら?」
「お前、どうして成長してるんだ?」
「それよりも、ご主人様のほうがすごいですよ、半分マリー様、半分キラ様になってます!」
茶髪の少し角張った顔のイケメンが僕の方を見てる。
「もしかして、牛男か?」
「マリー、聞いて、ここは継ぎ目のない世界、要は夢の中のようなもの、時間の流れもないかしら。ハイエルフが緊急会議に使う魔法、そこのコーヒーには心を落ち着ける効果があるかしら。誰かがコーヒーを飲み干すか、コーヒーが冷めたら元の世界に戻るわ」
なんか、正直理解が色々追いついてない。
僕たちは座ってとりあえずコーヒーを一口すする。
「マリー、今日はしっかり話すわよ、マグロや、女王様には聞かれないから」
女王様? 母さんの事か? ベルは一口コーヒーを飲む。
「ベル。なんで母さんを女王様ってよぶんだ?」
ベルは確か母さんを今まで何回かそう呼んでいる。
「昔会ったサーレの精霊女王様に似てるのよ、それにベルの家に繋がってた所はサーレよ」
ベルハウスに出来た謎の通路の事か?
「サーレってなんだ?」
「失われた迷宮都市よ」
失われた迷宮都市? 意味が解らん?
「ベルは行ったことあるんだよな? 迷宮都市ってなんだ?」
「迷宮都市は、迷宮都市よ、迷宮の中に様々な種族が街を作った所。今は死の砂漠があった所に昔はあったかしら、今は何処にあるのかわからない……」
なんか、意味が解りにくいけど、今のをまとめて、解ったことは、母さんは迷宮都市という所に別荘をもっている。精霊女王という人物に似てる。正直母さんは謎の塊だから、とりあえず置いとこう。
「じゃ、サリーについてだけど、多分吸魔のロザリオの対になる聖杯から出てきた巨大魔石を売ったのだろう。巨大魔石は、スラムでピースフル・ワールドの時に出来たのだと思う……お金もったら、人って変わるのかな? よく考えると、僕はサリーに迷惑ばっかだし……」
「そんな事どうでもいいんじゃないかしら? マリーはサリーが好きなの? どうなの? それが大事かしら?」
一瞬迷うが、言葉が僕の口から出る。
「好きだけど、わからない、初めて僕の変身体質を受け入れてくれたし、ロリだけど、僕の好みではある」
「じゃ、ベルのことは好きなの?」
ベルは少し赤くなる。
「当然ベルは好きだ。とっても可愛いし、プチぱいも嫌いではない。けど、まだ子供みたいだから、恋愛対象としては、法的にNGだと思う。正直子供作ってもいい発言は嬉しかったし、もう少し大人になれば、こちらからお願いしたい」
ベルが真っ赤になってる。おかしい、なんでこんなにすらすら恥ずかしいことを、言うのだろうか?
「ベル。なんでこんなに思ってることを、僕はすらすら話すのか?」
僕も少し赤くなってる気がする。
「それは、ここが、垣根のない世界、シームレス・ワールドだからよ。嘘はつけないし、聞かれた事には、本当の事を答えてしまうのよ」
ベルは口を押さえようとするが、言葉の方が先にでる。しまった感の顔をしている。いかん、さすがベル、えげつない事をする。
ここは自白剤の世界か!
「じゃあ、マリーが一番好きなのは誰?」
「ベル、リナ、サリーの同一首位だけど、いままで1番際どいボディタッチしたサリーが少し、より好きかも」
ベルは、少し悲しそうな顔をするが、すぐに僕に向いて微笑む。
「じゃあ、ベルが一番になるように頑張るかしら。、やる事は、決まったかしら。サリーとしっかり話すのよ。それで、うじうじするのは終了よ。マリーらしくないかしら」
ベルはそう言うと立ち上がり、僕の肩をたたく。心配かけてたんだな、ここしばらくテンション低めだったしな……
「これからする事は、とりあえず、サリーと話す。、バーミング城に行ってロザリオを渡す時にその機会を作ろう」
僕も立ち上がる。やる事が決まったら、動くのみ。
「私は、ご主人様がやりたい事を手伝います。所で私達、どうしてこんな格好なのですか?」
牛男? が初めて口を開く。
「ここでは、魂の形に近い姿になるのかしら。だから、マリーはキラな訳」
僕は自身を確かめる。胸が半分だけ大きく、ちょうど体の正中線のところで、半分男、半分女だ。多分身長はちょうどマリーとキラの中間っぽい。気持ち悪い人体模型みたいになってるのでは……
ベルはポケットから、なんか石みたいなものをだす。
「世界の垣根よ崩れされ。シームレス・ワールド」
ベルの手から光が溢れ、石に吸い込まれていく。
「ベルは、しばらく眠って起きないかしら、どれだけかは解らないわ……超魔法を連打した代償よ。これを握りしめて、シームレス・ワールドって唱えると、ここに来れるわ」
ベルは、僕に石を渡す。ヒンヤリしていて、クリスタルみたいで真ん中で光がちらちらしてる。
「ベル、どうしてそんなことを?」
「マリーがマリーっぽくあって欲しいからかしら。またね」
ベルは、僕に微笑むとコーヒーを飲み干した。大人になったベルはとても魅力的だった……
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