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 第七話 楽園の残党


「母さん。何で急ぐんだ? 牛男にまかせとけば、大丈夫だろ?」


 僕は母さんに並ぶ。母さんはめっちゃ走るの早いミセスなのに。


「牛男ちゃんだからよ。もし、子供達に危険が迫ったら、加減しないでしょ。秒殺でミンチよ。せっかくの人材確保のチャンスがパーよ」


 チャンスがパー? なんて古びて真抜けたフレーズだろう。僕も今度活用しよう。


「人材確保? いいね、いいね。母さん何処でそんな知恵つけたの?」


「あなたと、牛男ちゃんからよ。牛男死ぬなー! 母さんも少し感動したわ」


 見てたんかーい。はずいやろ。


 ん、2人が居ない? 後ろをみると豆粒になってる。


「母さん。待って! グラビティ・ゼロ」


 遙か後方にいるベルとリナの所へマッハ走りで戻り、二人を小脇に抱える。


「「キャア!」」


 可愛らしい悲鳴がハモる。胸を触らないように気をつける。2人とも、柔らかい。


「行こう。母さん。マックスで」


 僕と母さんは、文字通り風のように駆ける。通路を戻り、ベルハウスを突き抜け、孤児院の庭を通って入り口に着く。疾走中、ずっと、ベルとリナが楽しそうにキャイキャイ騒いでた。


 そこでは、牛男と、黒づくめの鎧を着た4人の銀の冒険者認識票を首からかけた者たちが対峙していた。


「ベル。シャングリラの奴らだろう。僕は面識ないから交渉しろ」


 僕はベルとリナを地上に降ろす。対峙してるという事は、交渉の余地ありだろう。


「マリー、わかったかしら。あんたたち何しにきたのかしら、話だけなら聞いてあげるわよ」


 ベルは4人をビシッと指差す。


「悪魔め! お前達のせいで、我々がどんなひどい目にあったことか……」


 4人のうち、一番ガタイがいい奴が両手で斧を構える。


 ラッキー!


 牛男の斧もってきてくれたんだ。


「裸で塩の山の上に投げ出され、残ったのは、認識票のみ。お尻はいたいわ、○○○はしみるわ、それは悲惨だった」


 痩せて背の高い奴が両手に剣を構える。双剣使いか? 格好いい!


 ぜひ確保したい!


「パンツで顔を隠し町を逃げながら誓った! 悪魔に魂を売ってでもお前達を倒すと!」


 背の低い奴が小剣を逆手に構える。忍者みたいだ!


 なんか、少し嬉しい!


 僕と同じ境遇の人に会えて!


「解る! 解る! 顔にパンツ一丁はそりゃ大変だよ!」


「マリー! 何、共感してるのかしら!」


「そうだ! お前は誰だ? 聖女マリーはどこだ!」


 最後の1人はメイスを構える。


 女の子だ神官系か? 彼女も裸でかけずり回ったのだろうか?


「おい! メイス! お前も裸で走りまわったのか?」


「仲間たちが、下着を確保してくれたから、あたしは裸は免れたわ。けど、デリケートゾーンがめっちやかぶれてるわ!」


「そこまで聞いてないわ。デリケートゾーンいうなや! 家で薬塗って寝とけ」


「……このテンポ、間違いなくマリーかしら……」


 ベルが僕を見て呟く。


「我々はルドラ様から賜った薬をのんだ。進化の秘薬という奴だ。絶大な力を得る代わりに我々は明日までには死ぬ。命が惜しければベルサイユとマリーを差し出せ」


 斧がそう言い、4人は構える。


「なんで、変態でぶっちょの為に命かけるのかしら?」


 ベルの問いかけに、メイスが答える。


「あんなゲスのために死にたくはないわ。契約魔法で縛られてるのよ。逆らったら死ぬ……」


「交渉決裂だな」


 双剣の言葉で、戦いは幕をあけた。


 読んでいただきありがとうございます。


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