第十四話 驚愕
「しね! ぶたーっ!」
アナは高速で飛び込み、両手に持った槍でタイタンを突く。タイタンの胸に2つ大きな凹みが出来て吹っ飛ばされる。
アナにとっては、タイタンもブタなのか。確かにずんぐりしているが分類が大雑把過ぎるだろ。
けど、凄い。タイタンは岩でできているから、かなりの重量があるはずだ。細い体のどこにこんな力が隠されているのだろうか? 自己強化の魔法か何かなのか?
ゴゴゴッ!
軋む音をたててタイタンが立ち上がる。瞬時にして、みるみる胸の穴が塞がる。
「回復してる……」
つい、僕の口から呟きが漏れる。
「タイタンはね、地上に足をついている限り、ずっと回復し続けるのよ。けど、それも無駄ね。氷雪の女王よ、その息吹もて、全てのものの動きを止めよ、凍りつけ『凍結地獄』」
サリーの手から出た吹雪がタイタンに触れるや否や、その表面を凍らせるに留まらず、全身をくまなく氷で覆う。タイタンは微動だにしなくなる。
凍結地獄はイリアの得意魔法だが、威力が段違いだ。何を食べたらそんなに魔力が強くなるのだろうか。しかも呪文を唱えてない。無詠唱だ。詠唱を破棄するには、かなりの魔力と修練が必要なはず。
ゴガッ!
その凍りついたタイタンに駆け寄った黒騎士が大剣を深々と突き刺す。そして踏み込むと剣を上に振り上げタイタンを上空に投げ出す。嘘だろ、中身は可憐な少女だったよな?
「いただきます! 戦神降臨!」
駆け出したアナの体が金色に光る。アナは飛び上がり槍でタイタンを突き上げる。タイタンはさらにふっ飛ばされ天井にぶつかり粉々に砕ける。
アナは空中でくるりとまわると音も無く着地する。体を覆っていた光は消えている。
「らくしょう! おかわりはないのか?」
アナは振り返り、バイザーをあげて微笑み、親指を上げる。やばい、格好よく見えてしまった。言ってることはおばかだけど。
『セイクリッド・マローダー』を蹂躙した、無限回復する岩の巨人タイタンが、ものの数秒で、石ころと化した。こいつら化け物過ぎるだろ。これが、黄金認識票の冒険者か……
タイタンの残骸は粉になって消え、後には三つの宝箱が現れる。あ、僕は戦った者としてカウントされてないのね。当然だな。何もしてないしね。
「凄いわね。この人たちみんな生きてるわ」
サリーが『セイクリッド・マローダー』の三人を床に並べて横たわらせている。僕は彼女たちの戦いが衝撃的すぎて彼らの事を全く忘れていた。誰一人死んでないとはさすがだ。ゴキブリなみにしぶといな。
「マリーちゃん、出番よ。治療してあげて」
「うっ……」
サリーが三人を指差す。僕は言葉につまってしまう。
正直こいつらは死んでしまえばいいのにと思う。
けど、見殺しにしたらサリーたちはどう思うだろう。それに、見殺しにしたら、僕もこのクズヤロー3人と何も変わらない。僕はあいつらみたいにはならない。
なんか釈然としないけど、僕は三人を回復させる事にした。
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