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 第四話 強欲なシスター


「ベル様、お買い上げ頂いて、ありがとうございます。不肖リナ、ふつつかながら、あなた様に仕えさせて頂きます。なんなりとお申し付けを」


 シスターは、お金を見るなりベルに頭を下げる。お金は魔物だ、人をだめにする。


「マリー、まずはシスターの足を治すかしら。出来るわよね」


 ベルは椅子にふんぞり返って僕に言う。悪い事言ってる訳じゃないのに、なんかむかつく。


「わかったわよ。シスター、足を出して」


 シスターが、修道服の裾をたくし上げ右足を出す。脛に抉れた様な古傷があり、僕はそれに触れる。なんか背徳的である。


「タッチヒール!」


 僕はそこそこの魔力をタッチヒールに込める。これくらいで、シスターの足は元に戻るだろう。


「ぬるいかしら。マリー。マナよ荒れ狂え! 暴走スタンピート!」


 ベルが、僕の知らない魔法を使う。ベルの手から出た赤い光が僕を包み込む。ん、なんだこりゃ?


 やばい!


 魔力が暴走する!


 やられた……ベルに色々な事を話しすぎた。


 ベルは僕の吸魔のロザリオをむしり取る。反応しようにも僕は魔力の制御で手一杯だ。


 僕の魔力がうねって暴れて溢れる。


「リナ、今こそ願え! お前の強い願いを!」


 ベルが声を張る。


『もっと綺麗になりたい!』


『もっと早く歩きたい!』


『もっと強くなりたい!』


『もっと皆に、愛されたい!』


『もっと、強靱な体になりたい!』


『もっと、回復魔法をつかいたい!』


『もっと、綺麗な服着たい!』


『沢山甘いものを食べたい!』


『もっと、セクシーになりたい!』


『もっと、綺麗な家に住みたい!』


『もっと……』


『もっと……』


『もっと……』


『もっと……』


『もっと……』


『もっと……』


 僕の心に直接シスターの声が聞こえる。清らかな声で欲望を垂れ流しまくっている。


 何て強欲なシスターだ!


 聖職者なのに願い多過ぎやろ!


 最後らへんはもはや何言ってるのか解らなかった……いや、面倒くさくなって耳に入らなくなったんだろう。


 シスターは、暖かい光に包まれて目を閉じる。とっても神々しくは見える。


 目が眩み、目を開けると、そこにはブルーとレッドのオッドアイの人物が!


 元々は地味めな美人さんだったのが、大きな目、高い鼻梁、小顔に、痩せてるけどメリハリのあるボディ。

 元の清楚さを進化させたような、完璧美少女シスターが誕生していた! もはや別人だ。


「凄い! まるで夢みたい! 私の足が治ってる!」


 シスターは、立ち上がってぴょんぴょんしてる。普通くらいだった胸が、育ってぷるんぷるん揺れてる。


 ベルにやられた!


 もう、超人は作らないつもりだったのに……


 僕はキッとベルを睨む。


「マリーだけ、ずるいのかしら! ベルも牛男のような強力な子分がほしかったのかしら!」


 やっちまったものはしょうがない。


 シスターはいい人だと思われるので、暴走はしないだろう。


「ベル様のお望み通り着換えました」


 シスターリナは、胸元がばっくり空いてミニスカでふりふりしたメイド服に着換えている。


 いつの間に?


 露出高いの嫌じゃないんかい!


 お金になびきすぎやろ!


 なんか、もういきなり暴走してる感が……


 貧相で骸骨みたいだったシスターリナはもういない……

 ここにいるのは、ボンキュッボンのナイスバディに、幼さの残った清楚な顔立ちの絶世の美少女だ。これってもはや美容整形ではないのだろうか?


「シスターリナ! 迎えに来たぜ!」


 不愉快なだみ声が遠くから聞こえる。


 バタン!!


 大きな音をたてて扉が開く。


 性質たちが悪そうなスキンヘッドのおっさんが入ってくる。そして僕たちを、ぐるりと見渡す。


「おい、シスターリナは何処だ?」


 ハゲは叫ぶ。シスターに気付いてない。そりゃそうだ。


「リナは私よ!」


 リナがずいっと前に出る。しばらくハゲはじっとリナを見つめる。


「ほう、数日で見違えたな。しっかり稼ぐ為に女を磨いてたんだな。助平な女だ。まずは、俺様が頂くとするか」


 スキンヘッドば下品な笑みを浮かべ、リナににじり寄る。もしかしてここでやる気なのか? メンタルつええな。


 チャリン!


 リナが、スキンヘッドに大金貨を渡す。


「なんのつもりか?」


 スキンヘッドがリナに凄む。


「おいそこのハゲ! リナはベルが買ったのかしら、大金貨15枚で。リナが欲しかったら、リナを買いたいなら、もっとお金持ってくるのかしら!」


 ベルがスキンヘッドに、腕を組んで尊大にのたまう。


 サッと、スキンヘッドは、お金を数え懐に入れる。


「おう、これで借金はチャラにしてやる。けど、金の問題じゃねーんだ。信頼の問題だ。約束したからシスターには来てもらう。あと、お前らも痛い思いしたくなかったらついてこい。気持ちいい事してお金になるぜ!」


 スキンヘッドは、懐からナイフを出しペしぺしする。安っぽい脅迫だ。コイツ、牛男にはびびってないのか?


「お客様はお帰りだ! 牛男お見送りして差し上げろ!」


 僕は収納から牛スペ斧を出して、投げて渡す。牛男は受け取り、その巨大な斧で手をペしぺしする。


「ヒイッ! 化け物!」 


 気付くの遅すぎだろ。ハゲは後退り、近づいた牛男に追い詰められる。


「おいっ。明日行ってやるから、お前達の本拠地をおしえろ!」


 僕はハゲに問いかける。


「お、俺達の本拠地? シャングリラだ、お前ら覚えてろ!」


 言うと、ハゲは一目散に逃げ去った。



 読んでいただきありがとうございます。


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