第91話 女子会からのゴーストバスターズ
メリッサと再会し、官庁街にあるカフェでお茶を3人でしながら話し合う。メリッサはやはりナヴォーリ市が俺との繋がりを保つため市長が王都へ送り出したのだという。尤も、アイーシャによれば市長と言うよりも切れ者であるという市長の奥方の思惑らしいけど。
"つまり、その市長の奥方とやらはホルストがナヴォーリから離れないよう娘の身を差し出したという事ね"
"その表現だと直球すぎないか?"
"実際そうでしょう?でも本人もそれを望んでるようだからいいんじゃない?モテる男は辛いわね?"
"メルはそのモテる男の本妻だろ?そう嫌味を言うなって。でも、メルはいいのか?また、その、恋人が増える訳だけどさ"
"私は構わないわ。勇者パーティの弓聖伯爵令嬢に王家の工作員、ナヴォーリ市長の娘が揃って付いていればちょっかいは出せないでしょうしね?メリッサには船で私を追い回した件について小一時間ばかりお説教するけど"
う〜ん、メルからお説教とか、俺なら喜んじゃうけどな。そして、その後は…
"嫌らしい事、考えない!"
ガリッ
「痛てぇ!」
メルの奴、手の甲を引っ掻きやがった。
「あの、ホルスト様?メルダリス様との"お話し"は終わりましたか?」
そんな俺をアイーシャが呆れたように見ている。
「え?お話しって、誰と?」
この辺りもメリッサにちゃんと説明しておかなければならないな。
俺達はメリッサを恋人に迎えるべく金鶏亭の俺の部屋へ河岸を変える事にした。別に嫌らしい事する訳じゃないよ?
〜・〜・〜
メリッサの「高等弁務官補佐見習心得」という役職は、やはり何の権限も無く、これといった決まった仕事も無い地位なのだそうだ。
「だからさ、ホルストが王都に来るまで本当に暇だったの」
俺がナヴォーリを出た後、メリッサは俺を追いかけるようにナヴォーリから真っ直ぐ最短距離のルートで王都へ来たという。
「えぇっ、それじゃあ私もホルストの恋人になれるの?」
愛と癒しの女神ナルディア様の眷属である本来の美少女姿で現れたメルから俺に関する説明を受けたメリッサは驚いて目を見張った。
今、この部屋には俺とメル、アイーシャとメリッサ、そして俺からの連絡で金鶏亭に駆けつけたゾフィの5人がいる。いや、一柱と4人か?
「まぁ、私の本妻は揺らがせようもないけどね。あなたもホルストが好きで故郷を捨ててまで彼を追いかけて来たのでしょう?だったら私達はあなたを歓迎するけど、どうなの?」
ちょっと上から目線で偉そうにメルがメリッサに尋ねると、メリッサはメルの物言いなど気にした様子も無く、メルの提案に一も二もなく同意した。
「なります。いえ、私もホルストの恋人にして下さい!」
「そう、それじゃあ宜しくね、メリッサ」
「はい。宜しくお願いします、メルダリス様」
いや、俺の恋人になろうって話なのに、何で俺の頭越しにメルが全部仕切るんだろうか?まぁ、仲が悪くなるよりは余程良いのだけど。
メルの許し?が出たメリッサは、旧知のアイーシャとゾフィと手を取り合って喜び合う。そして2人から背中を押されるようにして目を伏せると、俺の前に進み出た。
「あ、あの、ホルスト。私もホルストの恋人にしてくれる、の?」
そして頬を染めた顔を少し上げ、上目遣いでそんな事を口にする。
「俺のために王都にまで来てくれたんだろう?有難う、俺もメリッサが大好きだよ。俺の恋人になってくれ」
俺はメリッサを抱き寄せると、メリッサは俺の胸に頬を寄せる。流石にみんなが見ている前でキスは出来ないと俺は思ったのだけど、メリッサには既にメル達に仲間意識があるのか、そんな事を気にした風は無く。やがてメリッサは頤を心持ち上げ、俺と視線を合わせるとその瞳を閉じた。
互いの唇と唇が合わさる部分が見られるのはやはり恥ずかしい。俺はメリッサの頬にそっと手を添えてそこだけ見られないようにしてメリッサにキスをした。一生懸命に唇を押し付けるまだ拙いメリッサのキスが何だか意地らしく思えてしまった。
こうなると本妻に3人の恋人達がいる俺の部屋は、キャッキャウフフの女子会の場と化した。そして男子故にその女子会を傍観する立場となった俺は何故か彼女達にお茶を注いだり、フロントに茶菓子を買いに走らされたりと給仕、というかパシリ役を押し付けられたのであった。
☆ 女子会での会話
アイーシャ「こうして皆さんホルスト様の本妻や恋人になったのですから、みんなで一緒に暮らすというのはどうですか?」
メル・メリ・ゾフィ「「「賛成!」」」
ゾフィ「だったら私達パーティの館はどう?無駄に部屋は多いから大丈夫よ?」
ホルスト(それだと軒を貸して母屋を取られるみたいでクリスが嫌がるんじゃないか?俺も気を使うから嫌だな)
メリッサ「私はホルストと一緒なら何処でも、下町だってスラム街だって構わないわ」
ホルスト(いや、俺が構うよ!)
メル「流石にそういう場所は危険でしょ」
ホルスト(そうそう)
アイーシャ「実はゾフィの館にも官庁街にも程近い住宅街に良い物件を見つけてあります」
メル・メリ・ゾフィ「「「へぇ〜、流石アイーシャ」」」
ホルスト(いや、手回し良すぎだろ)
アイーシャ「家主ともツテがありますから、格安価格で譲ってくれると思います」
ゾフィ「それって何処なの?」
アイーシャ「貴族街の一角なんですけどね」
メル・メリ・ゾフィ「「「貴族街⁉︎」」」
ホルスト(おいおい、勘弁してくれ。貴族が嫌だから平民になったんだぜ?)
メル「もしかして、それって訳ありじゃないの?」
メリッサ「えっ、事故物件?」
アイーシャ「はい。でも私達の手に掛かれば問題無く解決出来ると思います。どうでしょうか?ホルスト様」
ホルスト(急に俺に振ってきたな。アイーシャがここで話すって事はほぼその館を手にする段取りが出来ているって事だろうな)
ゾフィ「あっ、もしかしてあの館?」
アイーシャ「多分それで合ってます」
ゾフィ「あそこかぁ、大丈夫かな」
ホルスト「で、その館にどんな問題があるんだ?お化けでも出るのか?」
アイーシャ「良くおわかりで。そこはお化けというか、リッチが取り憑いていて、買い手も借り手も全く出ないんです」
〜・〜・〜
こうして俺は貴族街の一角にあるという通称「リッチ屋敷」に取り憑く正体不明のリッチを退治する事になってしまったのだった。
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それでは次話もお楽しみに!




