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第90話 ナヴォーリの少女(ひと)、再び

アイーシャとパーティーを組むと、アイーシャは俺と夜以外は常に行動を共にするようになった。朝、金鶏亭に俺を迎えに来て朝食を一緒に食べ、その後、一緒にギルド本部へ赴いて依頼を見たり、情報を収集したりといった感じだ。


アイーシャは俺と行動を共にするといっても、決して出しゃばったり、何かを押し付けたり、強要したりといった事は全く無い。むしろ王都事情や王都における冒険者事情にも通じて詳しく、そもそもが冒険者ギルドの上級職員でもあるため、俺にとってはあたかも有能なマネージャーが付いているかのようで、とても助かっている。


"これは仕事面でアイーシャに依存してしまいそうだな"


"何言ってんのよ。あっちはホルストに依存させようとしてやってるに決まってるでしょ!"


まぁ、メルに指摘されるまでもなくわかっていたさ、そんな事。


"あの子、狐獣人だけあって、やっぱり賢いわね。着々とホルストを逃げられないように囲い込んでいるわ"


メルはそう言うけど、既に俺とアイーシャはパーティーを組んで動き出してしまっている以上、大した理由もなく今更パーティーを解散することはできない。


"自分で言うのもなんだけど、それでもアイーシャからはかなり俺への好意を感じるからなぁ。彼女なりに俺に良かれと一生懸命やってくれてるんだろうさ"


そんな事考えると、何だか自分がすごい嫌なスケコマシ野郎に思えてきて嫌だな。


"モテる男は辛いわね。まぁ様子を見ましょう"


メルは俺に嫌味を言いつつもアイーシャを受け入れている。


"言っておくけど、私はアイーシャが嫌いとかじゃなくて、ホルストを手中に収めて行く手際の良さに驚いているだけだからね?"


「ホルスト様?」


「ひゃい?」


急にアイーシャから呼びかけられて変な声を出してしまった。


「メリダリス様との"お話"、終わりましたか?」


「…」


アイーシャとパーティーを組むことになった後、俺はアイーシャにメルの正体を明かすと共に、メルも金鶏亭の部屋でアイーシャに眷属として自らの本来の姿を現した。


その際にメルからアイーシャには何やら色々と女同士の話しがあったようで、俺は2人から部屋を追い出されてしまったのだ。


その後、メルから"戻って来ていいよ"の念話が来たので部屋に戻ると、2人は和気あいあいと打ち解けておしゃべりに興じていた。そしてアイーシャは部屋に戻ったことに気づくと喜びに瞳を潤ませて


「ホルスト様の事、メルダリス様から伺いました。私を恋人の一人にして下さるのですか?」


なんか、俺の意向をすっ飛ばしてそうした事になっているようだった。まぁ、アイーシャの気持ちはわかるし、俺もアイーシャの事は好きだ。ちょっと工作員だから信用出来ない部分もあるけど、美人で可愛くて有能だしな。メルが許すのなら俺に否は無い。


そして、そういう事はちゃんと本人に言葉にして伝えるのが礼儀というもの。


「アイーシャが好きだよ。俺の恋人になってくれ」


「はい。幾久しくよろしくお願いします、ホルスト様」


と言うや、アイーシャは俺に抱き付く。そして上目遣いに見つめるアイーシャに俺はキスをして彼女を恋人として受け入れたのであった。


〜・〜・〜


そうした俺達が今何処へ向かっているのかと言うと、王都の官庁街にあるナヴォーリ市の高等弁務官事務所。そこには市長の娘であるメリッサがいるというのだ。


「それは、まぁ俺を追いかけて来たって事、だよな」


ナヴォーリを離れる際、俺はメリッサに会う事が出来なかった。海賊紛争で俺はナヴォーリ市の名誉市民とか名誉海軍大尉だとか肩書を沢山貰ったので、無理を言って公邸に押し掛けて面会を求めればあるいは会えたかもしれない。だけど、部屋に籠ってしまった女の子にそんな事出来る訳ないしな。だから手紙とカメオのネックレスをメリッサに贈って俺はナポリを離れたのだった。


「しかし、メリッサはどんな名目で王都に来る事が出来たのだろうか?王立学院ではないだろうし。何か別の学校かな?」


官庁街をアイーシャと連れ立って歩きながら俺はそんな疑問を口にした。おそらくアイーシャはメリッサの事情も詳しく知っているはずだからだ。


王都には王侯貴族や富裕な平民の子弟が入学する王立学院の他にも多くの学校や私塾が存在する。国立だと魔術学院や法科学院、軍の士官学校など。半官半民の商業学院や建築技術学校、各ギルドが経営する学校も有れば各教団が経営する神学校もある。また、個人が開く私塾も多く有り、王都は学術都市の側面もあったりするのだ。


しかし、不思議と総合大学は無く、また、自然科学を学び研究する学校も無い。これ以上は余談が長くなり過ぎてしまうので止めておくけど、これには何か意図的な物を感じてしまう…


話はズレてしまったけど、メリッサはこうした学校のどれかに国内留学生として王都に来たのかと俺は思ったのだ。


「いいえ、メリッサちゃんはナヴォーリ市の公務として王都に来ているのです」


アイーシャは俺の予想を否定して市の公務だと言う。


「それは何と、高等弁務官」


「こ、高等弁務官⁉︎」


「補佐」


「高等弁務官の補佐なのか?」


「いいえ、見習心得だそうです」


高等弁務官補佐見習心得。何だろう、その「係長代理補佐」的な響きの役職は。殆ど平社員だよな。


「要はナヴォーリ市としてはホルスト様との繋がりを維持したいのでしょう。そのため市長の娘でホルスト様にほの字なメリッサちゃんに名目的な役職を与えて王都に送り出したのだと思われます」


「連絡・調整担当、みたいな?」


「…はい。もう、ホルスト様は意地悪です!」


アイーシャはそう言うと、俺の腕に抱きついてちょっと拗ねた体で腕をぶんぶんと振った。


年上の美人に甘えられるのも凄く良いのだけど、アイーシャよ、ここが官庁街という事を忘れないで欲しい。さっきから周りからの視線がとても痛いのだよ。


〜・〜・〜


俺達は程なくナヴォーリ市高等弁務官事務所に到着した。しかし、事務所に入る事無く、あっさりとメリッサとの再会を果たす事が出来た。


「ホルスト!」


そう、既に事務所の前でメリッサが俺達を待ち構えていたのだ。


メリッサは俺を見つけるやダッシュで駆け寄ると、文字通りジャンプして俺の胸の中に飛び込んで来た。


「メリッサ!」


俺は抱き止めた勢いを殺すためメリッサを抱き止めたままクルクルと二回転。多分、側から見たらメリッサを俺が態々二回転して抱き締め、そして見つめ合うバカップルに見えただろう。


いや、残念ながら違うんだ。そうしないとメリッサのジャンプ抱き着きの勢いでそのまま二人して倒れて転んでしまうからなんだ。だから弁務官事務所の皆もなんだコイツみたいな目で見るのは止めるんだ。


「会いたかった。会いたかったよ、ホルスト」


そう言って背骨よ折れよとばかりに力一杯俺を抱き締めるメリッサ。ぐぬぬ、ちと苦しいのだが。


「ご、ごめんな。ちゃっ、ちゃんと、挨拶も、出来なくて、」


どうにか絞り出した言葉にメリッサは(かぶり)(かぶ)る。


「ううん、私が逃げちゃったのが悪いの。ごめんなさい」


この再会の段取りの良さは、きっとアイーシャが前もってメリッサに今日ある事を知らせていたに違いない。ふと、アイーシャに目をやれば、メリッサに抱き着かれる寸前にベビースリングから脱出したメルを抱き上げたアイーシャが苦しげな俺を見て可笑しそうに笑っていた。

いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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