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第85話 白昼夢?

シャーロッテンブルグを朝方に出発した乗合馬車で、私はこれまでの旅の疲れもあってかいつの間にかホルストの肩にもたれて眠ってしまっていた。


ホルストも少し私に寄りかかって舟を漕いでいて、なんか恋人っぽいなぁって、それだけの事なのに幸せを感じる自分がいた。私ってつくづくホルストが好きなのだと彼の肩に頬擦りしてクンクンと匂いまで嗅いでしまった。


(はぁ、いい匂い。この匂い、好き)


こんな事しちゃって、我ながら変態?とか思っておかしくなってしまう。


と、その時、誰かからの視線を感じた。それは決して敵意や悪意が含まれたものではなく、ジーっと私の事を観察するような視線。


馬車の中では乗客達は皆居眠りしていて、私に視線を向けている者はホルストも含めて誰一人いないはずなのに。


その視線の元を辿ると、何とホルストの懐から顔を出している白猫(メルちゃんだっけ?)と目があった。


この白猫は実に不思議な存在だ。猫にしては綺麗すぎる。純白の毛並みに美しく吸い込まれそうな緑色の瞳が相まって猫なのに神々しい。そしてホルストとは明らかに高度な意思の疎通が出来ている。


ホルストはこの白猫を使い魔だって言うけど、どうにもそれ以上の存在と思えてしまうのだ。以前、アイーシャとお喋りしていた時に、ふざけて彼女が実はホルストが白猫の使い魔なんじゃないか言ったりしたけど、強ち間違っていないような気がしないでもなかった。


"こっちこっち"


突然何者かからの念話が送られて来て、思わず誰からなのかと見回してしまう。


"だからこっちだって"


私を下から覗き込む白猫と目が合う。白猫はホルストの懐から飛び出すと馬車の床上に降り立った。すると白猫の全身が白く眩しく輝きだし、その眩しさが消えると私の目の前には白猫ではなく、驚くべき事に白銀の美少女が立っていたのだ。


その光をまとった神々しいまでの美しさに私は思わず絶句。言葉が出なかったけど、心を落ち着かせてどうにか声を絞り出す事が出来た。


「ど、どなたですか、あなたは?」


するとその美少女は少し偉そうな態度で私を見ると、鈴の音のような声を発した。


「この姿では始めましてかしら?私はメルダリス、愛と癒しの女神ナルディア様の眷属よ」


「え?ナルディア様のご眷属、ですか?」


確かに神々しいその姿はご眷属或いは神使と言われても納得してしまう。


「そうよ、そしてホルストの監視役にして妻よ!」


「ええっ、つ、つ、妻ぁ⁉︎」


どういう事なの?ホルストは神使様と結婚してるって事なの?一体何がどうなって、どうしちゃっているの?


メルダリスと名乗った神使様の美少女が発した言葉に私の頭の中にいくつもの疑問がぐるぐると渦巻いてもう訳がわからない。


「落ち着きなさい。それをこれから説明するから」


メルダリス様?の言葉に私も少し冷静さを取り戻す。それに神使様が名乗った以上は自分も名乗らなければならない。


「私は、「ゾフィーでしょ、私はホルストとずっと一緒にいるんだから当然知っているわ」」


あ、そうですか。


「あの、そのメルダリス様が、その、ホルストのつ、妻って…」


監視役と言う言葉も勿論だけど、やっぱり最重要なのは「ホルストの妻」ってところ。


「そうね、時間も限られるから手短に話すわね。詳しい理由は言えないけど、あなたもホルストの凄まじい「能力」については当然知ってるわね?」


「全ては知りませんけど、その一端は」


「ホルストの「能力」は「アクションヒーロー」っていうの。それは自分や誰かを、又は何かを守るため、もしくは正義のためにしか振るう事が出来ないの。だけど、強すぎる彼の能力は神々の警戒するところとなってね、ホルストが神々に反逆しないよう私がナルディア様のご命令でホルストの監視をする事となったのよ」


神々が警戒する、いや恐れるほどのその「能力」。ホルストって本当に凄いのね。だけど、そもそも人々に能力を授けるのは神々。その神々が神々を恐れさせる「能力」を人々に授ける。何か矛盾してるんじゃないかな?


私はそんな疑問を抱きつつもメルダリス様に話の続きを促す。


「白猫の姿になって、ですか?」


「そうよ、だってこの姿じゃ大変な事になっちゃうでしょ?」


まぁ、確かにその神々しくも美しい姿で巷を歩けば忽ち大騒ぎになってホルストの監視どころじゃ無くなってしまうに違いない。


「それで、ホルストの妻って…」


「うん。監視役でずっと一緒にいたらホルストの事が段々好きになっちゃって。だって、ホルストってかっこいいし、強いし、優しいし、頭良いし。わかるでしょ?」


「わかるでしょ?」と上目遣いで恥じらうメルダリス様は反則的な可愛らしさ。


「そりゃあ、もう!」


私は激しく同意。


「それにホルスったらね、私にだけ弱みを見せて甘えるのよ?もう本当に可愛くて。それと事ある毎に私に嫁になれ嫁になれって言うのよ?だからナルディア様のお許しが出たからホルストからのプロポーズを受けて結婚したの」


あ〜、なんですか?のろけですか?自慢ですか?


「まぁ、その事はいいわ。キリがなくなるしね。それよりもゾフィ、あなたもホルストの事、好きでしょ?」


「はい、私もホルストのことが大好きです」


「そう。ホルストもあなたに好意を抱いているわ」


えっ!ほ、本当に?ホルストも私の事が好き、なの?やっぱり?でもホルストはメルダリス様と結婚していて、それでも私の事も好きで、それってどういう事になるの?私はホルストの恋人?愛人?側室?


「今夜はこの旅の最後の夜なんでしょ?ホルストは言っていたわ「自分のために命がけで戦ってくれた(ひと)には報いなければならない」って。あなたはどうだったの?」


あの海賊紛争で私が命懸けで戦ったのか、それは良くわからない。私は弓聖だから剣や槍を振るって戦った訳じゃないから。でも、私はあの時、ホルストの命令を実行すべく私の持てる全ての力を尽くし、全身全霊をもってホルストの期待に応えるべく戦った。それは自信を持って断言出来る。


「戦いました。ホルストのために」


「うん、私も見ていたから知ってる。だったら、ホルストは必ずあなたの思いに応えてくれるはずよ」


え?ホルストが、私がホルストに告白したら私を恋人にしてくれるの?


私は長命であるエルフのアドバンテージを生かして長い時間をかけて彼の心を奪おうと思っていた。だけど、それが数時間後にはこの思いは、願いは叶ってしまうの?そんな、夢みたい!


「で、でも、メルダリス様はホルストの、その、妻なんですよね?あの、私がホルストの恋人になってもいいんですか?」


「うん、それは気にしないで。本当はホルストを独り占めしたいけど、モテるからね、ホルストは。だから女絡みでホルストが利用されたり、囲い込まれたりしないようにホルストが信頼出来る女性で彼の周りを固めて欲しいのよ」


なるほど。確かにホルストにハニートラップを仕掛けて利用しようとしたり、はたまた自分の娘と婚約させて自陣営に引き込もうと考える貴族なんかいそう。それだけホルストという冒険者は権力者にとっては魅力的だ。


神使様にもそういった思惑があるという訳ね。ではお互いの利害が一致したという事で、


「わかりました。今夜、頑張って私、ホルストに告白します」


「うん。自信を持って。健闘を祈るわ」


メルダリス様はそう言ってウィンクしてくれた。


〜・〜・〜


ガタン、と馬車が強く揺れ、私ははっと目を覚ました。気がつけばホルストの肩に寄り掛かって眠っていたのだ。


(あれ、さっきもホルストの端にもたれて眠っていたような)


そうだ、私、メルダリス様と話して、今夜ホルストに告白するんだ。


ふと見回すと馬車の乗客達はみんな眠っていた。乗合馬車の中はメルダリス様と話をする前と全く同じ状態。ホルストも眠っている。


あれは夢だったのかな?


するとホルストの懐から白猫姿のメルダリス様がひょいと顔を出す。思わずそのエメラルドグリーンの瞳と目が会うと


"夢じゃないから"


そんな念話が送られて来たのだった。


いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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