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第83話 マリーの剣術修行 王都決闘編

近衛騎士団との訓練の時に見る事が出来たのですけど、フランツ様の剣筋は確かに本人が自信の源とするだけあって良い物ではありました。そのため私の剣術を見ては汚いとか卑しい田舎剣術だとか、今まで散々言ってくれていたのです。


ですがそう言われても剣術についてはそれほど腹は立ちませんでした。ムラージ師の剣術はそういう剣術であり、師も常々自らの剣をそう言っていましたから。見せる為の剣では無く、必ず勝たなければならない者の剣であると。まぁ、言わせておけって感じですね。


私がフランツ様に怒りを覚えるのは、その言動端々にホルスト兄さまに対して侮辱を感じさせていたからでした。


そもそもムラージ流剣術を習う事になったのも、ホルスト兄さまがそれが私に必要だと感じ、私がムラージ流剣術を習えるよう決闘を通して周囲に示唆したからです。

注)過大評価です


それをこの男は馬鹿にして否定した。到底許せるものではありませんし、当然この男はその報いを受けなければなりません。


私は目の前で自信満々に立ち合おうとしていいるフランツ(もう"様"なんて付けない)を眺めながらそう思いました。


〜・〜・〜


やはりどこでも決闘とは珍しいものなのでしょうか、噂を聞きつけて練兵場には多くの見物人達が押し寄せて来ていました。中には服装や佇まいからそれなりの身分の方もいるようです。そう言えば近衛騎士団の幹部で私の何が気に入らないのか、いつも私の事を「「剣聖」を授かっただけで調子に乗っている小娘」と公言して憚らない輩もいましたね。


きっとフランツが自分に都合良く喧伝しているのでしょう、見物人達からは罵声こそありませんが私を応援するような声は全く聞こえず、少なからぬ疎外感を感じました。


だけど、それは私とホルスト兄さまとの決闘を立場を逆にして追体験するかのよう。つまりかつての兄さまの立場に今の私がいて、あたかもホルスト兄さまと私が過去と現在で重なり合っているように思えたのです。私はそこに喜びさえ見出していました。


(あの決闘の時、兄さまはこんな光景を見ていたのですね)


そんな風に考えてしまっているのは、我ながら病んでいるように思えてしまいます。それでも私はホルスト兄さまとの一体感に鼓舞されてフランツとの決闘に臨みました。


〜・〜・〜


決闘の審判を務めるのはフランツの上官に当たる騎士だそうです。それに私は同意したつもりは無いのですが、いつの間にか決まっていました。私はそんな事聞いていない、不公平だと抗議しても良かったのですが、逆にそんなもの関係なく叩きのめせば良いのですから止めておきました。


ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべるフランツ。昔からあまり好きな方ではありませんでしたが、ここまで下卑た人ではありませんでした。一体何が彼を変えてしまったのでしょうか?まぁ、そもそも私にとってはどうでもいい事ですけどね。


審判の騎士は30歳くらいでしょうか?茶髪を短く刈り込んだ武骨な感じの男です。彼が決闘に関する双方の条件やルールを説明し、私とフランツがそれに同意すると決闘の始まりを宣言しました。


「双方宜しいか?」


私もフランツもここは黙って頷きます。


「では、構え、始め!」


決闘が始まる前、私はこのフランツという煩い男をどのように懲らしめてやろうかと考えていました。ムラージ流剣術でと思いましたけど、フランツがそれで敗れたならばきっとその結果に難癖着けてくるでしょう。ならばフランツご自慢の綺麗な剣で倒してやろう、そう決めました。


フランツが正面から私の左肩を狙って斬りかかります。私は定石通りに剣で受け流し、その後もフランツの打突を全て受け流し続けました。一撃で決めようという腹でしょうか、フランツの打突は大振りで予備動作も目立ちます。私は最小限の動きに絞っていたのでまだまだ余裕、息も上がりません。ですが、フランツの方は余裕がある風を装っていますが、微かに肩で息をしているのがわかります。


「ど、どうした?避けてないで、かかって来い。剣聖なんて、そんなもんか?」


しかもこんな安っぽい煽りまで口にします。でも、「息上がって途切れ途切れですよ?余計な体力は使わない方がよ」


「黙れ!俺を馬鹿にしているのか!」


いけません。知らず知らずのうちに考えが口に出ていたようです。私がブチ切れたフランツをシラっと見ると更に激昂してしまいました。


「その目!その目だ。あいつと同じだ。あいつもそんな目で俺を見ていた。お前もそうやって俺を見下しているんだろう!」


一体何の事を言っているのかさっぱりわかりません。あいつ?あいつとは誰の事でしょうか。


「あいつとは誰の事ですか?」


「お前の元婚約者だ。あいつは子供の頃から不気味な奴だった。何でも出来て、何でも知っているようで、いつも俺を見下していた。そんなあいつが問題起こして家を追い出されてザマァ見ろだ!俺はお前の事なんか好きでも何でもないがな、あいつの婚約者だったお前を俺が孕ませてやる」


はぁ、最低な男ですね。こんなのが次期当主なんて他人事ながらヴィンター騎士爵家は大丈夫なんでしょうか?


「別にホルスト兄さまはあなたの事なんか何とも思っていませんでしたよ?寧ろ、フランツ兄さまがいるから安心だと言っていました。ですがあなたはホルスト兄さまをそんな風に見ていたのですね。全く残念な人です、あなたは」


「黙れ!黙れ!黙れぇぇ!」


激昂したフランツはご自慢のきれいな剣は何処へやら、ブンブンと雑な打突を繰り返します。私はそれらを捌きながら、何時迄もこの不毛な遣り取りを続けても仕方無いのでそろそろケリをつける事にしました。


フランツの打突を捌きつつ距離を詰め、私はフランツの剣を擦り上げて自らの剣を八相に構えます。そして私の八相からの斬撃を愚かにも剣で受けようとしたフランツの剣身に渾身の一振りを叩き込みました。


(つるぎ)断ち!」


これはムラージ流剣術に私の剣聖の力を合わせて編み出した私のオリジナル技です。剣聖の能力が上乗せされた心技体によって魔力を通して鋭利さと強度が増した剣から斬撃を放ちます。


斬撃は一瞬にしてそれを受けたフランツの剣を真っ二つに断ちました。


「!!」


この決闘に際し、私が近衛騎士団から貸与されたのは訓練用に刃の部分を潰した訓練用の剣。それに対してフランツは自らの剣を使っています。フランツは刃引きされた訓練用の剣によって自分の剣が真っ二つにぶった斬られた事実を受け入れられないのか、分断された剣を見ながら呆けた表情をしています。


私はフランツにトドメを刺すべく奴から距離を取ると、霞の構えから動きが止まったままのフランツの左胸に向けて突きを放つ。


「片手胸突き!」


私の右手片手突きを左胸に受けたフランツは「ゲヴゥ」というイケメン(一応兄さまに似ているから顔はいい)が出してはいけない呻き声を上げて後方へ吹っ飛んで倒れ、そのまま動かなくなってしまいました。


剣聖とはいえ14歳の少女に剣を分断された上、片手突きの一撃で近衛騎士が倒された事実に練兵場の見物人達は黙り込みます。


「審判さん?」


私に勝敗の判定を促された審判役の騎士は、ハッと我に返ったようで意識を失って倒れているフランツに目を向けると


「勝者、マリー・マイルスター!」


と宣言しました。


それによって練兵場に歓声が湧く、という事は無く、見物人達は依然黙ったまま。きっとホルスト兄さまも決闘で私を倒した後もこうだったのでしょう。


その後、私は近衛騎士団の練兵場を後にして学院の女子寮へと帰りました。


〜・〜・〜


フランツはあのヴィンター騎士爵夫婦の息子という事で、近衛騎士団では腕利きで通っていたそうです。そのフランツを一撃で倒した私が近衛騎士団に出入りする事はもう出来ないでしょう。


それに関しては別に未練はありません。フランツにまとわりつかれて迷惑していましたし、騎士団員達の底の浅さにもうんざりさせられていましたから。


ただ、私が修得したムラージ流剣術での修行の成果を確かめられたので、近衛騎士団との訓練も全くの無駄ではなかったと思っています。


女子寮に帰り、エミリーにフランツとの決闘を話すと、「馬鹿兄がごめん」と謝られ、次いで「こんな事になる前に私に言わなきゃダメでしょ!」と怒られてしまいました。


〜・〜・〜


そして遂にホルスト兄さまから手紙が届きました。シキガミの鴉が手紙を届けに来たのです。ルーリエ先輩もびっくりしていました。


親愛なるマリー


マリー、しばらく逢えていないが元気だろうか?剣術修行は頑張っているかい?なかなか逢いに行けず申し訳ない。俺はティレニア海の港湾都市ナヴォーリ市にいたんだ。海がきれいな異国情緒漂う美しい街だったよ。魚介の料理が美味しくて、火山が聳えて温泉があって、本当にいいところだった。そこで海賊を退治する事になって時間がかかってしまった。その功績で上位金級にランクが上がったけどね。そして今は王都に向かっている最中だ。後1ヶ月くらいで到着すると思う。マリーに会えるのが今から楽しみだよ。それでは健康に留意して欲しい。 ホルストより


追伸、そのシキガミの鴉は連絡用にマリーにあげるよ。抱いたり撫でたりしてマリーが魔力を与えばマリーに懐いて命令に従うようになるよ。魔力が切れると消滅するから気を付けてくれ。


〜・〜・〜


あぁ、兄さまが私に逢いに来てくれる。やっと兄さまに逢えるんだ。


私は兄さまからの手紙を胸に抱き、肩に鴉を止まらせたまま一人幸福感に浸りました。


私に手紙が来ているという事は、エミリーにも来ているはずです。私はこの幸福感を分かち合うべく、鴉を方に乗せたまま隣室のドアを叩きました。そして開いたドアからエミリー達の部屋に入るとエミリーに思い切り抱き着いてしまい。ちょっと力を入れ過ぎてしまってソフィに嗜められてしまいました。


ホルスト兄さまが王都に来るまでの一月が待ち遠しいです。


私はシキガミの鴉にホルスト兄さまに因んでホルスと名付けて可愛いがっています。魔力と共に愛情も注いで抱き締めているためか、とても私に懐いて可愛いのです。ルーリエ先輩もホルスを可愛がってくれていて、でも先輩が「ホルス〜」と呼びながらホルスを抱き締めたり頬擦りしたりする姿を見るのは何だか複雑な思いです。

いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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