第77話 非関白宣言
昨夜、遂にメルと結ばれた。
喧嘩して俺が謝って仲直り、からのプロポーズ。まぁ、昨夜のメルったら、もう可愛くて最高の夜だった。
女神ナルディア様も何かしら思惑があって俺とメルの結婚を許したのだろう。だけど、それはそれだ。今はただメルと結ばれた喜びと幸せを噛みしめたい。
朝になって目が覚めると、メルは俺の腕の中にすっぽりと収まっていて可愛いらしい寝息を立てていた。寝顔もとても美しくて可愛い。やがて目を覚ましたメルは俺と目が合うと、恥ずかしそうに、それでいて満ち足りた笑顔で「おはよう」と言った。
図らずもこの旅が俺とメルの新婚旅行ともなったけど、この旅には同行者がいる。なのでシーツに包まるメルにムラムラして「もう一戦!」とは出来ず、それは諦めざるを得なかった。朝食の席に俺が姿を現さなかったらゾフィも怪しむだろうし、この部屋まで俺を呼びに来たりするかもしれないからな。
さて、メルと朝の熱い口付けを交わしてから互いに身支度を整えると、メルが話があると言う。そして俺はメルに手を引かれて寝室隣りの応接室に移ると、ソファーに隣り合って腰を下ろした。
「どうしたんだ、改まって話って」
「うん。大切な事だから早めに話して、お互いに理解しておいた方が良いと思って」
何だろう?ドキドキするな。まだ何かメルが抱えている使命なり役割なりがあるのだろうか?何があろうと愛する嫁のためだ。俺はメルのためなら何だって受け止め覚悟でいるぞ。
「あのね、私はホルストのお、お嫁さん、になったでしょ?」
「そうだよ。愛して「それでね」」
恥じらいながら「お、お嫁さん」と口にするメルが可愛いすぎて、今朝から何度目になるだろうかという「愛してるよ」を言おうとするも、メルに妨げられてしまった。話を進めたかったんだね、ごめん。
「それで、私はホルストが他の女の子を好きになっても構わないからね?」
「え⁉︎」
何と、新婚2日目にして妻から浮気許可が出たでござる。
「何で?どうして?そんな気は全然「聞いて、ホルスト」はい」
うん。何気に俺、もうメルの尻に敷かれてないか?それはそれで興奮するものがあるけど。それはこの際どうでも良い。
「ホルストはさ、この愛と癒しの女神ナルディア様の眷属である私が好きになっちゃう程にいい男でしょ?」
でしょ?と言われても!自分の口から「だね」とは言えない訳です。俺がう〜んと首を傾げてしまうと、
「そうなの!」
と、凄まれて念押しされて、思わず「はい」と応えてしまう。
「だからホルストにはこれからも色んな女の人が言い寄って来ると思う。私はあなたのお嫁さんと言うか、妻になった訳でしょう?」
上目遣いに尋ねるメルに力強く頷く俺。
「でも神族である私はずっと本来の姿でいる訳にはいかないから、」
「いて貰って一向に構わないんだけど!」
メルは「ううん」と頭を振る。
「やっぱりダメ。衣服でどんなに紛らわしてもやっぱり目立つし、分かる人には私が神族だってわかってしまうもの。だから2人切りの時は兎も角、人前では今まで通り私は白猫の姿でいなければならないの」
え〜、ダメなのか。確かにこのメルが巷で姿を現したら一騒動だし、変な奴ホイホイになってしまうだろうな。
「そうなると、ホルストは一見妻も恋人もいないフリーな、それでいて魅力のある上位金級冒険者な訳なの。それがどういう事かわかる?」
「う、うん。まぁ、」
金級冒険者ともなれば貴族社会でも男爵相当な待遇となる。その待遇は名誉職ではあるけれど、言うなれば俺という冒険者はそれなりに名誉も地位もあり、金級冒険者としての収入もある。更には他者よりも隔絶した実力がある独身者という事となる。となれば娘を当てがって取り込もうとする貴族やハニートラップを仕掛けて囲い込もうとする勢力も出るだろう。って言うか、確実に出る。
「だからホルストが正妻たる私を一番愛して大事にして大切にするなら、他の女の子を恋人とか愛人にしても私は構わないから」
確かに現在も隣部屋にはゾフィがいるし、つい先日までアイーシャやメリッサがいて、俺に好意を示してくれていた。なるべく女性に接しないようにしていたとしても、この先全く女性と関わりを持たないなんて事は不可能だ。だからといって俺がそうした女性から好かれるのか、といえば必ずしもそんな事は無いと思うのだけど。
しかし、本人の意思は関係なく命令により俺に突撃(主に性的な)を仕掛ける女性が出る確率は高いのだ。
そうした場合、仮に俺に妻でなくとも恋人や愛人(しかも出身身分の高い)がいるとなれば、懸念しているような事態は防ぐ事が出来るだろう。少しは。
「ホルストは言ってたじゃない。「自分のために命懸けで戦ってくれた女には報いらなければならない」って。例えばあのエルフ女も女狐もあなたのために命懸けで戦ったのでしょう?そうした彼女達にホルストが何も報いないではあなたの正妻として私が夫の不義理が許せないもの」
これは俺の事を愛してくれている女性(仮)を盾として女性から身を守ろうという最低な考えとも言える。しかし、そこは俺とメルで恋人・愛人となった女性を守れば良い。
とは言え、これは飽くまで俺の恋人・愛人になりたいですって女性がいれば、の話だ。ゾフィは俺に好意を示してくれているけど、では俺の恋人になりたいのか?そうであるのかもしれないし、そうではないのかもしれない。
「メルの思いはわかったよ。先の事はわからないけど、そうした女が出来たらそうするよ」
「うん、そうしてね。でも飽くまで私が一番だからね?」
「当たり前だよ」
メルは俺の返答に満足したようで、その後で白猫の姿になると、応接テーブルからピョンと跳ねて俺の腕の中に飛び込んだ。
「じゃあ、また今夜、な?」
"もう。でも今夜、ね"
俺は白猫のメルにキスしようとすると、猫パンチで遮られ、"もう、朝食に行くから準備しなさい"と嗜められてしまった。
何というべきか、男というのは女が妻になった途端逆らえなくなるのだろうか?なんとなく以前よりメルに頭が上がらなくなったような?
もしかしてだけど、ナルディア様が俺とメルの結婚を許したのは、いや寧ろ奨励したのはこうなる事を予測してメルを通じて間接的に俺を影響下に置こうとしたのではないだろうか?
俺はそんな事を考えながら、はいはいと返事をして中断していた身支度に取り掛かった。
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それでは次話もお楽しみに!




