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第76話 喧嘩からのプロポーズ

全く、ホルストの奴!信じられない。私の事を好きだとか、ヨ、ヨメだとか言っておいて、この宿に着いた途端に私の事ほっぽり出してお風呂に行っちゃうなんて。しかも、なんでエルフ女と一緒にお風呂入ってるのよ!


そりゃあ、浴衣は着ていて裸じゃないし、混浴だから泊まり客なら誰が入ってもいい訳だけど。でも、エルフ女が後から入って来たと言っても一緒に入った事実は変わらないし!


そうした訳で、私とホルストは現在絶賛喧嘩中!って言うか、私が一人で切れてホルストに言うだけ言って部屋を飛び出したのだけど。


ホルストがババール山の温泉に行ったら一緒に入ろうって言ったから、私だって、その、誘われたら一緒に入ってもよかったし、少しは楽しみにしていたのに。


〜・〜・〜


私もホルストと出会って、もう2年。最初はナルディア様の命令で監視役として彼と一緒にいるだけだった。だけど、ホルストは何と言ってもカッコいいし、勇者なんか目じゃないくらい強いし、上品で優しくて誠実。そんな一見恐い物知らずな彼だけど、私にだけは本音を語り、時には弱さを見せて甘えるの。


だから、ホルストがこの世界で本音を語って弱さを見せて甘えるのは私だけ。私はいつしかそんな優越感を抱くようになっていた。


私に甘えるホルストが可愛く思え、落ち込んでいる時は抱き締めて励ましたり、膝枕で慰めたり、時には額にキスをしたりして。ホルストはすぐに調子に乗って、そんなホルストがまた可愛くて。気が付けば好きになってた。


それに、ホルストが「メルは俺のヨメ」とか言い出すと、私の主神ナルディア様も「メルをお嫁さんに欲しいというなら、本人同士が良ければ私は構いませんよ?」ってホルストに言うし。


そんなナルディア様の言葉に焦ったし驚いたけど、正直言って嬉しかったな。例えその言葉をナルディア様は何らかの思惑があって言ったのであっても。ナルディア様に認められて、私とホルストが結ばれる事への障害が無くなったのだから。


だから、それ程までにホルストが私を求めるのならば、私はホルストの(もの)になってもいいし、ホルストを私の(もの)にしたい、そう思うようになっていた。


それなのに、ホルストの奴!私を求めるどころか、さっさとお風呂に行ってエルフ女と!


私は逃げ出した先、宿の屋根の上で白猫の姿から眷属の姿に戻ると、瓦の上に腰を下ろして膝を抱えた。


この宿からはナヴォーリ湾とナヴォーリの街が眼下に一望出来る。夜空の月は半月になっているけど、今夜は雲も少なくて月明かりが静かな海面に反射して、夜中と言えども仄かに明るい。


はぁ。何やってるんだろう、私。ナルディア様の眷属ともあろう私がヒトの男にこんなに心が乱されるなんて。ホルストに愛情だけじゃなく執着心、嫉妬心を抱くなんて。私、神族なのに、これじゃあまるでヒトの女みたいじゃない!


馬鹿、女ったらし、浮気者、私の事が好きだって言ったくせに、嘘吐きetc。ホルストに酷い事言っちゃった。


でも、今日の出来事は私にホルストの存在の大きさと、ホルストをこんなにも好きになっている自分の気持ちに気付かせてくれたとも言えた。


ホルストはナルディア様の命令でずっと一緒にいなければいけないのに、この気持ちに気付いた私はこの後どんな顔でホルストと会えばいいんだろ。


と、不意に人の気配を感じた。神族である私に気配を気付かせず、こんなに接近出来るヒト族は私の知る限り一人だけ。


「こんな所にいたのか。探しちゃったよ」


やっぱりホルストだ。本当にどんな顔して会えばいいの?と思いつつ、きっとホルストは私を探して追いかけて来ると思ってた。


「ごめんな、メル」


私が「何しに来たの?」と言おうとしたらホルストが先に謝った。


「何にごめんなの?」


こんな状態だけど、私とホルストの心は繋がっている。だからホルストが何に対して謝ったのか十分わかっている。それなのに態々こんな事を訊くなんて、我ながら意地が悪いと思う。でも、ホルストが悪いんだからね。


「勿論、メルに俺がした事だよ。本当、ごめん。俺が無神経過ぎた」


ホルストは私の傍に座ると、再び謝罪の言葉を口にした。私は膝を抱えたままだから、ホルストがどんな表情でそう言ったのかはわからない。だけど、その口調と声音、雰囲気から真摯に謝ってくれている事はわかる。


まぁ、もう許してあげようかな。前世の記憶を持ったまま異世界に転生し、前世とは全く違う環境の中で理不尽な目に遭いながらも懸命に生きてきた人だ。前世の文化に似た物があれば心惹かれる気持ちはわかるしね。


「もう、あれは無いよ。いくらなんでも」


「ごめんな」


ホルストが私の肩を抱く。更に密着する私達。ホルストのいい匂い鼻孔をくすぐり、温もりが伝わって来た。


私は堪らなくなって黙ったまま彼の肩に体を預けると、ホルストは私の髪に頬擦りする。彼が私に甘える仕草の一つだ。


「メル。愛してるよ、メル」


不意に囁かれた愛の告白。勿論、彼からの告白はこれが初めてじゃないけど、この告白はいつもの軽いものじゃない。彼の私への想いと愛情が強く込められていた。私の全身はカッと熱くなり、私の中のホルストへの想いが遂に溢れ出す。


「私も、私もホルストが好き!愛してる、ホルスト!」


「メル…」


「ホルスト…」


見上げる私とホルストは互いを見つめ合う。そして、私がそっと目を閉じると私の唇にホルストの唇が重なり、私達は初めての口付けを交わした。


始めはそっと触れ合うだけだった互いの唇。次第により強く深く貪るようなキスとなる。遂にはホルストの舌が私の唇を割ると、迎えた私の舌を絡めて捕らえ、私達は舌を絡め合う激しいキスを交わし合った。


どれくらいそうしていたものか、キスに夢中になってしまっていたからわからない。


ホルストとのキス。唇も舌も何もかもホルストから与えられるモノが気持ち良く、心が満たされる。


やがて私達の唇が離れると、まるで名残を惜しむかのように混ざり合った2人の唾液が糸を引く。そしてホルストが私の手を取って立たせると、月光を浴びた私達はもう離れないとばかりに抱き合った。


「メル、いや、メルダリス。心から君を愛している。君と生涯を共に送りたい。俺の嫁になってくれ」


いつものちょっとふざけた感じじゃない、真剣なプロポーズが遂に来た。ナルディア様の許可もあるし、躊躇う事無くホルストからのプロポーズを受け入れる。


「はい。私、メルダリスはホルストと生涯を共にする伴侶となります」


こうして私は愛しいホルストの腕の中で、彼の嫁になった。


その後、部屋に戻った私達がベッドでした事の詳しくは内緒。まぁ、夫婦の営みなんだけど、私はもうホルストから離れられないようにされちゃったかな?


〜・〜・〜


私とホルストは別れようにも別れられない運命共同体。私は神族だから寿命なんて無いような者だけど、実はホルストも「アクションヒーロー」の能力でそうみたい。だから、私とホルストはこれから夫婦として長い長い時間を過ごす事になるだろう。


それと、これはもう私も認めざるを得ないのだけど、ホルストは女性からもてる。それは我が主神たる愛と癒しの女神ナルディア様も手を出そうとしたくらい。


彼と出会ってからだって既に何人もの女の子に言い寄られている。剣聖を授かった元婚約者もいれば、エルフ女に女狐。市長の娘もいたし、勇者パーティの聖女も怪しい。


本当は私だけのホルストにしたいのだけど、そうした訳でそうも言っていられない。ホルストは「自分のために命懸けで戦ってくれた(ひと)には必ず報いらなければならない」と私に言った事があった。


ホルストと夫婦になったからには、私もそうした女の子達を受け入れなければならないと思ってる。まぁ、どんな女の子だって神族で"正妻"の私には敵わない訳だし、そこは正妻の余裕でもって受け入れようかな。


だからエルフ女や女狐がホルストの恋人か愛人になっても(まぁなるでしょう)、私は私でドンと構えていよう。


〜・〜・〜


私とホルストのこれから。きっとホルストの事だから正義のために戦い、数奇で波瀾万丈な事になるのでしょう。だけど私とホルストが力を合わせれば大丈夫!


私はホルストの可愛い寝顔に心を込めたキスをすると、彼はニヘラと笑みを浮かべる。そんな事に幸せを感じ、私は再びホルストの腕の中に潜り込んで眠りに付いた。













いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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