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第69話 凱旋、からの膝枕

海上封鎖をしていたジギスムンド艦隊を全滅させたナヴォーリ艦隊は、市民達の歓呼の声に迎えられて凱旋した。


2回の海戦で2つの艦隊に打ち勝った我等が誇り、ナヴォーリ艦隊。籠城中の市民達、街を守る衛兵達と冒険者達の士気はツェルパン伯爵の騎士団何するものぞ!と爆上がりだ。


この機を捉えて市長はクーデターを準備していた反市長派と彼等が雇っていた傭兵団を一斉検挙してクーデターを未然に防いだ。


更にナヴォーリ海軍は海兵隊満載の分艦隊をシレジア川を遡らせてツェルパン伯爵領へ上陸させ河岸の街を占領した。


この事態を受けてナヴォーリ市を包囲するツェルパン伯爵は市長に会談の申し入れをするも、市長は拒否。何度目かの申し入れを渋々といった体で受けた市長は、ツェルパン伯爵に対して脅しつつ宥めつつの硬軟合わせた交渉でナヴォーリ市に極めて有利な条件でツェルパン伯爵との講和に応じた。


なんでも、ツェルパン伯爵はナヴォーリ市が海賊団に襲われているとの報告を受け、自領に隣接する"誼"でナヴォーリ市を"支援"するため騎士団を派遣したんだとか。しかし、急な事態でナヴォーリ市側に連絡が間に合わなかったため"止むを得ず"無通告で市領内に進入し、"海賊団"に海上封鎖されて緊急事態にあったナヴォーリ市が閉門していたため、これまた"止むを得ず"市の城壁周囲に駐屯した、という事になったのだそうだ。


ツェルパン伯爵は連絡の不備と騎士団の無通告領内進入について陳謝した。また、それに伴って破壊されたインフラ設備や市民の個人財産、誤って死傷せしめた市民への賠償を確約した。という事だけど、ツェルパン伯爵はもっと公表されない様々なナヴォーリ市に有利な条件を市長から突き付けらて飲まざるを得ず。ツェルパン伯爵の顔を立てて誤解から生じた事態であるとしつつも、実際はツェルパン伯爵の全面降伏で終わった。


〜・〜・〜


俺はというと、帰港したマーレドラゴン号からお役御免となったため船を降り、


「ホルスト!無事で良かった」


メリッサからの抱擁による出迎えを受けた。


「ナヴォーリのために戦ってくれて有難う」


「君のいる街だからな」


俺は抱き着いているメリッサの肩を左腕で抱くと、右手で髪を撫でた。


と、周囲からの剣呑な視線を感じた。


「んっんん。ホルスト様、公衆の面前ですよ?」


「ズルい、じゃなく、2人とも離れなさい!」


アイーシャとゾフィから抗議されて俺とメリッサは離れると、複雑そうな表情で俺を見る市長と目が合った。まぁ、父親としてはまだ歳若い娘が目の前で男と抱き合う場面なんて見たくはないよな。


それでも気を取り直したのか、市長は俺の前に進み出た。


「ホルスト殿、あなたには感謝してもしきれない恩が出来てしまった。あなたのお陰でナヴォーリは救われた。誠に有難う」


そう言って深々と頭を下げた市長に、俺は頭を上げるよう頼む。


「私もこの街が好きなんですよ。それに自治都市としてのナヴォーリがこの国には必要です。だからそのためにも戦いました。後は政治の分野ですから、宜しく頼みます」


「それは任せてくれ。それと、自治都市としてのナヴォーリがこの国には必要とは、どういう意味かな?」


そこに食い付くか。う〜ん、言ってもいいものか悩むけど、言ってしまう。


「ご存知の通り、この国も隣国も王を頂点とする封建制です。そうした制度下では人々は政治を自らの事とは考えません。ですからいつか王や貴族による統治が崩れる時、市民自らが考えて国作りをするナヴォーリ市のような街が必要だと私は思います」


「なるほど。よくわかったよ」


そう言って差し出された右手を俺も握り返す。


市民達の「ナヴォーリ、ラウーレ(万歳)!」が響く中、市長は市民達に、軍人達に俺と握手したまま大きく手を振った。


"流石に遣り手の政治家は違うわね。ピンチを見事にチャンスに変え、最後に美味しい所を全部持って行ったわ"


メルの呆れたような、感心したような念話が伝わった。


"まぁいいじゃん。これでナヴォーリは向こう30年は大丈夫さ。自治都市はこの世界の未来に必ず必要だ"


剣と魔法、そして神々が支配し、封建領主が治めるこの世界にあって民主主義が根付いた自治都市は実に貴重だ。21世紀の日本で生まれ育った俺はそう思う。


いつかこの世界が現状に行き詰まった時、きっと何かしらナヴォーリ市が良い影響を与えるかもしれない。


〜・〜・〜


さて、自治都市ナヴォーリを巡って争われた今回の紛争が後世どのように名付けられ、どのように記録されて評価されるのか。それは今ではまだわからないけど、この紛争に於ける俺の役割は終わった。俺などはおそらく良くて「多くの冒険者が従軍し、中には敵に大打撃を与えた者もいた」とかそんな記録に留まるだろう。


街を守るのは街の者達であり、他所者に任せきりになってはいけない。だから俺はこの街の歴史においては、街を守るのに力を合わせた名も無き(いち)冒険者。それだけでいい。


という訳で、晴れてお役御免となった俺は本来の目的に戻るんだ。


ナヴォーリ市の戦時体制は解除され、冒険者達も動員を解除された。俺、アイーシャ、ゾフィからなる義勇隊も動員解除により解散となった。俺は隙を見て忍者ライダーの認識阻害能力を使ってメルと共に海軍基地内から抜け出ると、再び港の繁華街に戻り魚藍亭に宿を取った。


部屋に入って脱いだ上着を適当に椅子に掛け、ブーツも脱いでそのままベッドに倒れ込む。そしてふぅ〜と息を吐いて全身の力を抜くと、手先足先から溜まった疲れが放電されるように抜け出る。


「久々にベッドで横になるな。いくら魔力量が多くても、「アクションヒーロー」があろうとも疲れるものは疲れるんだ」


メルはベビースリングから出て、本来の美少女な神の眷属姿に戻り、ベッドの縁に腰を掛けた。


「お疲れ様、ホルスト」


メルはそう言って俺を労い、俺の髪を優しく撫でてくれる。


「なあ、メル」


「なぁに?」


「膝枕してくれないか?」


「えぇ⁉︎ ひ、膝枕?」


「う〜ん、ダメじゃないけど」


「けど?」


「まぁ、いいわ。いらっしゃい、ホルスト」


「やったー!」


何でも言ってみるものだ。メルはベッドの縁から深く座り直して両脚を伸ばす。俺は躊躇する事無くメルの太腿に頭を乗せる。


メルの太腿は柔らかく、とても良い匂いだ。俺の顔を覗き込んだメルと目が合うと、忽ち頬を真っ赤ににしてメルは目を逸らす。


「ど、どう?」


「うん。とってもいいよ。愛してるよ、メル」


「なっ!ば、馬鹿!」


照れちゃって、愛い奴よのぉ。



ナヴォーリに来て擦ったもんだあったけど、美少女、美女とも知り合えた。そしてメル嫁計画もまた一歩進んだようだから、良しとするかな。

いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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