第68話 水中戦だ!
「な、何よ。結構いい体してんじゃない。流石は私が見込んだだけはあるわね」
「ホルストさまっ!(はぁ〜、引き締まってなんて綺麗な体、キュッとした可愛いお尻。もう絶対恋人にして貰うわ)」
俺は今、マーレドラゴ号の甲板の上でエルフと狐獣人、2人の美女達からの何やら欲望を含む熱視線を受けている。今の俺の格好はぶっちゃけ褌一丁だ。
実はこの世界、男性用下着は数多ある中でこのジギスムンド王国南部地方では褌が主流だったりする。俺の実家がある地域は内陸ではあるけど、シレジア川の水運によって文化的には南部地方の影響が強く、男の下着も褌なのだ。
勿論、褌と呼ばれている訳ではなく、この世界ではフグリークルムと呼ばれている。最初にフグリークルムと聞いた時は、「え?ふぐりを包む?」と驚いたものだ。
俺は正にフグリークルム一丁の姿だ。何もマーレドラゴ号の甲板で日光浴をしようとかではない。これからジギスムンド艦隊による海上封鎖を崩すための作戦、その第一段階を実施するためだ。
〜・〜・〜
当初、昨日の会議は意見を求められた俺が作戦を提案した事により、海上封鎖に対する対策会議から反撃のための作戦会議へと様相が変わった。まぁ、そのように誘導したわけだけど。
そして、何だかんだで決まったジギスムンド艦隊撃滅作戦(仮)とは、こうだ!
まず、俺が自分の「能力」を使って水中からジギスムンド艦隊の艦船に破壊工作を仕掛け、主力となっている大型ガレー船を4〜5隻沈める。
これで混乱が生じたジギスムンド艦隊に東側からナヴォーリ艦隊の分艦隊(トーゴ基地の分艦隊)が襲いかかり、西側へ逃走するよう誘導。
誘導されある程度集結したジギスムンド艦隊に待ち構えていたナヴォーリ艦隊の主力が突撃してこれを撃滅し、海上封鎖を解くというもの。
籠城戦で海軍が出来る事といえば、こんなところだろう。この作戦が上手く行けばナヴォーリ市の海上封鎖が解けるばかりか、ジギスムンド王国の艦隊主力が消滅となり、既にガルメーラ艦隊が壊滅した現状ではナヴォーリ艦隊を掣肘出来る海上戦力はこの海域から消滅する事を意味する。
これによってナヴォーリ市は陸から包囲されようが海路から資金のある限り食糧・物資を調達が出来る。
その後は政治家の出番だ。敵の非を唱えて徹底抗戦するもよし、相手の顔をある程度立てつつ有利な条件で講和するのも良しだ。
〜・〜・〜
「じゃあ、ちょっと行ってくるな」
"ホルスト、気をつけて。しっかりね"
「ホルスト様、無事なお帰りをお待ちしています」
「気をつけて行きなさいよ、ホルスト」
俺が海に飛び込む前にメル、アイーシャ、ゾフィに声をかけると、3人からそれぞれ返答を貰う。
そこで俺はメル達のみならず、モロアッチ提督をはじめとする艦隊幹部達から見送られ、フグリークルム一丁姿でマーレドラゴン号の甲板から海面に飛び込んだ。
〜・〜・〜
この季節(9月中旬)、ティレニス海の水温はまだ高めで、体感で25℃くらいだろうか?昼の陽光が降り注ぐ海面下でも水中も明るく、高い透明度もあって随分と遠くまで見渡せる。
俺はマーレドラゴ号が遊弋する沖合いから海中をナヴォーリ市目指して進む。
息継ぎしないのかって?大丈夫。水中戦は得意なんだ。なんと言っても俺は5番目の昭和ライダーの能力が使えるからね。
5番目の昭和ライダー、その実態は「深海開発用の改造人間」だ。
「アクションヒーロー」を授かった時、実家の更に奥、ジギスムンド王国と魔族領との緩衝地帯となっている広大な樹海にある湖。そこで俺はこの水中戦能力を試している。水中でも無呼吸で何時間でも潜っていられたし、方向感覚も視界もクリア、高速移動も可能だった。
そうした訳で、海中を高速で進む事暫し。しかし、流石に海中から海上の様子はわからない。こればかりは潜望鏡も無いので、実際に浮上して海中から顔を出して確認しなければならないのだ。
群青色の世界から浮上し、海面に近付くにつれ明るくなってゆく。そして、海面から顔を出すと、太陽の光の眩しさに思わず顔を顰めた。
辺りを見渡すと、早速北側の海上に大型のガレー軍艦を発見した。俺は一度海中深く潜航すると、再び海面目指して高速浮上し、海面から飛び上がってそのガレー軍艦の甲板上へ降り立った。
そのジギスムンド海軍のガレー軍艦の甲板では、いきなり俺がフグリークルム一丁姿で現れたので騒然とし始めた。残念ながら俺にはジギスムンド王国海軍の装備なんかの知識は無いので、見た目からその船と船員達がジギスムンド海軍の者かどうかすぐに断定する事は出来ない。
なので、わからない時は知っている人に尋ねるのが手っ取り早い。
「何者だ、貴様は?」
って、その前にこっちが誰何されてしまった。
「どろぼ「誰だと訊いているのだ!」
むぅ、折角の怪盗三世ネタがせっかちな水兵に遮られてしまった。
俺は冗談が通じなさそうなその水兵共に頭を掻きながら訊き返す。
「この船はジギスムンド海軍の船で間違い無いかい?」
「そうだ。名誉あるジギスムンド王国海軍の旗艦ディオデルマーレ号だ!」
うむ、こうも偉そうに言い切るなら間違い無さそうだな。いきなり旗艦に当たるとはツイている。
「そいつはご丁寧に、どうも」
俺はそう言って抜き手でその水兵の胸を突き通してぶん投げ、海面に飛び込んで艦底に触れる。そして8番目のライダーの能力であるブレイクを発動。俺の両手から発した超振動波が艦底の分子結合を崩すと、杉材で作られた艦底を粉砕。それによって開いた大穴から艦内に大量の海水が侵入し始めた。
海面から顔を出してジギスムンド艦隊の旗艦を見ると、既に艦全体の吃水線を越えて艦体が沈み込んでいた。艦内はかなり浸水しているようで、もう間も無く沈没するだろう。
〜・〜・〜
こんな調子で俺は次々とジギスムンド艦隊の主力大型ガレー軍艦を海中からブレイクで、攻撃して沈め、それ以外も沈めないまでも艦底に穴を開けて浸水させ、或いは舵を破壊するなどして損害を与えた。
そうして頃は良しと、俺は海面からナヴォーリ艦隊への合図として火魔法で上げた火球を上空で爆発させる。
ジギスムンド艦隊は、いきなり原因不明で自艦隊の艦艇が次々と沈没する異常事態にパニックに陥っていた。周囲に敵影は無く、原因がわからないだけに退避しようにも旗艦が真っ先に沈没して指揮系統が混乱。またどこが安全なのかもわからず、次は自艦ではないかと恐慌状態となった。そして海上封鎖を解いて自艦隊の根拠地へ逃走を開始した。
しかし、そのルート上にはナヴォーリ艦隊の主力が待ち構えている。
舳先を揃えて突撃したナヴォーリ艦隊の衝角によってジギスムンド艦隊は艦腹に大穴を開けられ沈没、或いは衝突の衝撃で横転。猟犬の如く縦横無尽に戦闘海域を駆け巡るナヴォーリ艦隊によってジギスムンド艦隊はやがて全滅した。
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マーレドラゴ号に戻ると、ゾフィとアイーシャが待ってましたとばかりに俺の世話を焼く。アイーシャが水魔法で真水を出しては身体を洗ってくれ、ゾフィが布で身体を拭いてくれた。
ただ2人がまだ濡れている俺のフグリークルムを取り替えましょうと脱がそうとしたり、早く服が着たいのに持って来てくれなかったりと、それ世話焼いてないよね?と言いたくなる場面が幾度かあったりもした。
そんなこんなで自らの役割を終えた俺は、二人の美女の妨害に遭いながらもどうにか服を着て。一大海戦絵巻を特等席から眺め、スケッチなんかもしてしまっていた。
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それでは次話もお楽しみに!




