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第66話 ナヴォーリ市、ただ今籠城中!

オーラル群島沖海戦で海賊団(ガルメーラ艦隊)に勝利してから2日後、ナヴォーリ艦隊はナヴォーリ港の海軍基地、ではなく、ナヴォーリ市から東へ約10km離れたナヴォーリ市領内にある海軍基地(トーゴ基地)に集結していた。


と言っても、沿岸警備のための小さな基地なので21隻からなるナヴォーリ艦隊は入港など出来ず、艦隊は基地の沖合いに錨を下ろして停泊。今はモロアッチ提督を始めとする艦隊司令部、各艦の艦長など艦隊幹部が基地に上陸し、基地内の食堂を借りて対策会議中、という訳だ。


〜・〜・〜


ガルメーラ艦隊を撃破し、凱旋したナヴォーリ艦隊を待っていたのは、味方であるはずのジギスムンド艦隊によって海上封鎖され、隣接領主達により包囲され籠城戦真っ最中のナヴォーリ市であった。


30隻からなるジギスムンド艦隊。海と共に生きてきたナヴォーリ市、その艦隊と比べるとジギスムンド艦隊の航海術、操船術、艦隊戦術等は劣っていると言われている。というか、海洋国家でもない国の海軍としてはジギスムンド海軍の方が寧ろ標準であり、海軍戦力に特化したようなナヴォーリ海軍の方が特殊だろう。


そんな数だけ多いジギスムンド艦隊の海上封鎖であっても、それを突破して強行入港するのは困難らしい。突破は出来ても狭い港内では艦隊は身動き出来ず、陸と海からタコ殴りにされて全滅するのがオチだそうだ。


モロアッチ提督はそうした状況を鑑みて戦略的撤退を決断し、艦隊はナヴォーリ市領内で根拠地となり得るトーゴ基地へ移動した、とそんな次第だった。


このトーゴ基地の基地司令が食堂でここ2日間のナヴォーリ市を取り巻く戦況を説明する。


「艦隊が出港して間も無く、市の西側に隣接するツェルペン伯爵領から騎士団がナヴォーリ市領内に通告無しで進入して来ました。幸い、領境の警備隊からの伝令が市へ緊急事態として情報を知らせる事が出来たため市街地内への侵入は阻止出来ました。その後、沖合いにジギスムンド艦隊が現れて市は海上封鎖されるに至ります」


現在、ナヴォーリ市は市領内に侵入してツェルペン伯爵家の領軍と市の城壁を挟んで睨み合っている状態らしい。


「恐らく、ツェルペン伯爵は艦隊出港の隙を突いて電撃的に騎士団を市街地内に突入させてそのままナヴォーリ市を占領しようとしたのでしょう」


まぁ聞く限り失敗したようだがな。


俺達義勇隊の3人は会議のオブザーバーとして末席を与えられている。アイーシャは俺の右隣で俺が知らないであろう事を小声で補足してくれ、ゾフィは左側の席で舟を漕いでいた。


「そのツェルペン伯爵については良く知らないけど、一伯爵領で2個騎士団を運用って多くないか?その伯爵ってそんなに金あるの?」


「おそらく他家からの応援でしょう」


なるほど。ツェルペン伯爵は第2王子派で、ナヴォーリ市攻略作戦の陸上戦力を担当していて、他家からも戦力を借りて事前準備も万端。艦隊も出港してさぁ突撃!ってところでナヴォーリ市の情報伝達力を甘く見てたのか、あっさり火事場泥棒的な侵攻はバレて城門を締められてしまった。漸く辿り着いたナヴォーリ市は既に籠城を始め、たかだか2個騎士団では城塞都市を落とす事は出来ない。


現在、ツェルペン伯爵以外の第2王子派貴族が傭兵や山賊に擬装させた小規模な戦力を逐次投入しているけど、戦況は変わらずってところだな。


「初動の失敗が作戦全体に与える影響の大きさを知るための後世の良い先例になりそうだな」


俺はそうひとりごちると、すっかり冷めた香茶に口を付けて一気に飲み干した。


「ホルスト様、戦況は今後どう動くと思いますか?」


アイーシャが俺の眼をじっと見つめて尋ねた。


「まぁ2個騎士団は機動戦力としてならそれなりに大した戦力だけど、城攻めには無意味な戦力だ。それに歩兵が幾ら増えたって工兵も連れて無く、攻城兵器も無いんじゃ小領主の山砦だって落とすのは難しい。それに対してナヴォーリ市は陸海と包囲されても食糧、物資の備蓄はあり、内部の裏切りを排除すれば落城する事は無い。詰んでいるはツェルペン伯爵の方じゃないかな」


「ですが、国王陛下に救援を求めなければ、現状の打開は難しいのでは?」


「そうしたら今度はナヴォーリには国王、即ち第1王子派の軛がかけられてしまう。ナヴォーリがこれからも自治都市ナヴォーリで有り続けるにはこの事態をナヴォーリ単独で解決しなければならない。と、俺は思うよ。まぁ、立場が変われば自ずと意見は変わって来るだろうけどね?」


「ね?」の部分でアイーシャに視線を送る。さて、どういう反応をするかな?何せアイーシャは王家の特務機関工作員。彼女の雇い主は国王であり第1王子で、ナヴォーリに軛をかける事もアイーシャの任務の一つであっても俺は驚かない。


すると、アイーシャはキッと俺を睨みつける。


「ホルスト様、今の私はホルスト様の部下です」


珍しく少し怒ったような口調のアイーシャ。自分を信頼しろという事か。しかしそれは難しい。まぁそれはアイーシャに限った事ではないけど。


「そうだったな。済まなかった」


「いえ、私こそ申し訳ありませんでした」


俯いたアイーシャの狐耳がヘコッとなっている。という事は彼女の言葉に嘘は無いって事かな。ヒトと違い獣人族がスパイ活動に不向きなのは思わず感情が耳や尻尾に現れてしまうからだ。


「ふえ?」


思わずアイーシャの頭をポンポンしてしまう俺だった。


「ねぇ、何か決まった?」


うつらうつら舟を漕いでいたゾフィが眠そうな声をあげる。なんか、タイミング測ってた感があるけど。


「全く暢気なものだな。まだ何も決まってないよ」


「だって、私が聞こうが聞かなかろうが、決まらないものは決まらないでしょ!」


まぁそうなんだけどね、と俺は膝の上で丸くなっているメルの背中を撫でて呟いた。


"ねぇ、ホルストはどうするの?"


メルが膝の上から俺み見上げて念話で尋ねる。


"現状に双方決め手が無いからな。会議も煮詰まったようだし、そろそろ誰かが俺に意見を求めてくるさ。そうしたら考えてる事を提案してみるよ"


"ふ〜ん、どんな事考えてるの?"


"それはその時のお楽しみにって事で"


" むぅ、ケチホルスト!"


すると案の定、モロアッチ提督が俺に意見を求めた。


「ホルスト殿、何かいい考えがあれば遠慮なく何でも言ってみて頂けないか?」


では、折角なので遠慮なく申し上げましょうかね。

いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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