表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/144

第63話 マンティコア、現る!

遂にマーレドラゴ号はガルメーラ艦隊の旗艦に追いつき接舷を開始する。それを阻止せんとするガルメーラの旗艦からは次々と矢が射掛けられるものの、マーレドラゴ号の海兵達は楯で防御して接舷移乗に備えていた。


更にガルメーラの旗艦には魔術師も乗っているようで、マーレドラゴ号に向けて盛んに火球が放たれる。それに対してこちらの魔術師が水魔法で直ちに消火に当たり被害は最小に抑えられていた。


また、ガルメーラの旗艦には大弓も搭載されていた。大弓はサイクロンによる被害が及ばなかったようで、あれを撃ち込まれたら海兵の盾など容易に貫通してしまうだろう。


「ゾフィ、大弓の射手と魔術師を狙えるか?」


「やってみる!」


弓聖の矢に狙われたらひとたまりもない。徐々にガルメーラ側の抵抗は少なくなっていく。



ガァン!


マーレドラゴ号が接舷のためガルメーラ艦隊の旗艦に体当たりを敢行。その衝撃で船体は大きく揺れる。


マーレドラゴ号の甲板上では海兵達が接舷した敵艦を固定するための鉤爪を投げようと立ち上がるもガルメーラ兵により弩で狙撃されて倒れる。その鉤爪を別の海兵がすかさず拾うと、そのまま素早く投擲。宙を飛ぶ鉤爪は敵艦の甲板上に落下し、マーレドラゴ号の海兵達が全力で鉤爪のロープを引くと鉤爪はガッチリと敵艦の船縁に食い込んだ。


それを皮切りに、マーレドラゴ号の海兵達は次々に鉤爪を投擲しては敵艦の船縁に食い込ませ、両艦の固定が完了。マーレドラゴ号の弓兵と魔術師が海兵達の斬り込みを援護し、敵艦の甲板上で斬り込んだマーレドラゴ号の海兵達と敵旗艦の海兵達による白兵戦が始まった。


この戦争は飽くまでナヴォーリ市と海賊団(ガルメーラ艦隊)との戦争だ。ナヴォーリ市民からなる将兵が海賊を擬した悪辣なるガルメーラ艦隊から故郷と同胞を守らんとする、謂わば郷土防衛戦争である。


そのため戦いの主役はナヴォーリの将兵と招集された冒険者達でなくてはならない。いくら腕が立とうが、能力があろうとも部外者が必要以上に出しゃばってはいけない。


俺は敵艦に乗り込むマーレドラゴ号の海兵達を見届けると、アイーシャと共に敵艦に乗り込んだ。因みにメルはゾフィとお留守番。


甲板上では各所で敵味方入り混じった激烈な白兵戦が繰り広げられている。


「そう言えばモロアッチ提督は敵艦に降伏勧告しなかったな」


「…おそらく、ナヴォーリ市長はこの戦争を飽くまで海賊相手という事にしようとしていると思われます」


「相手がガルメーラ海軍だと下手すればガルメーラとジギスムンドの全面戦争になるからか?」


「はい。飽くまで敵は海賊。しかし、証拠と証人は確保しておいて両国に貸しを作っておこうという腹積りだと思います」


戦時捕虜なら、しかもそれがそれなりの地位にある者ならば捕虜であろうとも貴人として遇さなければならず、相手国にも捕虜にした旨を通告しなければならない。しかも捕虜の身内などが捕虜の身代金を払えば引き渡さなければならない。しかし、それが海賊ならばその限りでは無い。利用価値が無くなれば人知れず始末してまえば良い。


全く政治家って奴は必要なら何でも政局に利用する。まぁ、ナヴォーリ市民としては強かな市長は頼り甲斐があって良いのかもしれないが。


「そこら辺は俺達部外者が口出しする事じゃないな」


アイーシャとそんな会話を交わしている間にガルメーラ艦隊の旗艦は斬り込んだナヴォーリ海軍の海兵隊により制圧されつつあった。俺はこれでこの戦闘も終わりだなと思いつつ、それでいて何となくまだ何かが起きるような気がしていた。


「ホルスト様、どうかなさいましたか?」


アイーシャが怪訝な表情で俺に尋ねた。どうも俺ってすぐ顔に出るみたいだな。


「いや、なんかやけに呆気なくないか?」


「と、仰いますと?」


「ガルメーラはナヴォーリ市内に工作員を浸透させたり、市長の娘を誘拐して人質にしようとしたりと随分手段を選ばない卑劣な手を使っているじゃないか。その割に最後は艦隊決戦で綺麗に勝敗を決めようなんて嘘臭いと思ってね」


「清濁合わせて飲むという事もあるかと」


そうだよな、と言おうとしたところでやけに船室の方が騒がしい事に気付いた。


艦橋のハッチから次々と船内に進入したナヴォーリの海兵達が逃げ出して来て、皆口々に何かを叫んでいる。


俺とアイーシャは顔を見合わして頷くと、互いに身を寄せて背中合わせに得物を構えた。


「魔物だ!魔物かいるぞ!」


「中隊長がやられた」


「退避しろ、退避だ!」


艦上に海兵達の怒号が響き、禍々しい魔力の波動が感じられる。かなり強力で凶悪な魔物だろう。


「やっぱり何かを隠してたようだな」


「ホルスト様、どうなさいますか?」


ナヴォーリ海軍の海兵隊はいずれも勇猛果敢、屈強な兵士達だ。とは言え、対人戦闘のプロであっても魔物には魔物との戦い方があるのだ。


「水兵さん達に魔物はキツいだろう。魔物には冒険者の出番だ」


「そうですわね。私も冒険者の端くれ、ホルスト様と共に戦います」


「それは心強いな」


すると、艦橋下の資材搬出用ハッチが内側から破壊され、甲板上に魔物が姿を現した。


グルルルルル、と肉食獣独特の恐ろしげな唸り響かせるその魔物。ライオンの体躯に気色悪く醜い老人の顔。背中には2対の蝙蝠のような翼を生やし、蠍の尻尾を威嚇するように立てたその姿は、


「マンティコア!」


アイーシャが言った通り、そいつは冒険者ギルドでも脅威度第2級に指定されている強力で凶暴な魔物、マンティコアだ。


マンティコアはその気色悪く醜い老人顔の耳まで裂けた口から長い牙を剥き出して俺達を威嚇する。そしてその大きな体躯からは想像し難い素早さで手近にいたナヴォーリの海兵に踊りかかる。


「ぐあぁぁ!」


ガップリと首筋にかぶりつかれたその哀れな海兵は、忽ち白目を剥いて全身を痙攣させると、次いで口から泡を吹いて全身をダラリと弛緩させた。マンティコアの体液は強力な神経毒が含まれており、唾液も例外では無い。


その哀れな海兵は噛みつかれた事により、失血による死を迎える前に唾液の神経毒により絶命したのだ。


ガルメーラ艦隊の旗艦では白兵戦が行われていたためゾフィもマーレドラゴ号の弓兵は同士討ちを恐れてマンティコアを狙撃出来ないでいる。ガルメーラの旗艦の弓兵も魔術師も殆どが討ち取られてしまっていた。


甲板上はマンティコアの出現で敵味方共にパニック状態。と、そこへ1人の戦士が長槍を構えてマンティコアと対峙した。


「全員、海に飛び込め!マンティコアに食われるぞ!」


その戦士はなかなか機転が効く御仁のようだ。甲板上で右往左往するよりいっそ海に飛び込んだ方が生き残る確率は高くなろう。そして、その戦士はその時間を稼ぐためにマンティコアに立ち向かっている。


良くみてみると、その戦士には見覚えがあった。拉致されたメリッサを救出に向かった時にガルメーラ船にいた銀髪の偉丈夫だな。


銀髪の偉丈夫が長槍でマンティコアを牽制している間にマーレドラゴ号からは味方へ撤収の合図が出された。ナヴォーリの海兵達はそこで態勢を立て直し、マーレドラゴ号へ比較的秩序だった撤収を開始。ガルメーラ旗艦の将兵は装備や武器を捨てて海へと飛び込んだ。


マーレドラゴ号は誰の命令か、両艦を固定していた鉤爪を解き、ガルメーラの旗艦から離舷し始めた。


「おいおい、まだ俺達こっちにいるんだけどなぁ」


マンティコアを牽制して撤収する海兵達の殿を守ってた俺とアイーシャを残してマーレドラゴ号はガルメーラの旗艦から離れて行こうとしている。まぁ、いざとなれば俺はアイーシャを抱いて飛べばいいから気にはしない。


しかし、マンティコアは自らの獲物が少なくなったこの状況が不満らしく、聞くに耐えない絶叫を放つ。この絶叫には聞いた者に恐慌を起こさせる魔力が込められているようで、俺には効かないけど、アイーシャは少し顔を辛そうに顰めている。銀髪偉丈夫は顔を顰めつつもマンティコアから視線を逸らさないでいた。


マンティコアは獲物がいなくなったなら多い方へ行きますとばかりに背中の翼を広げて始める。


「まずい。あいつ飛ぼうとしてるぞ。あんなのにナヴォーリへ行かれたら大惨事だ。アイーシャ、ここであいつを仕留めるぞ」


「はい。ホルスト様」


俺はアイーシャとそれぞれの武器を構えてマンティコアの前に出てると、銀髪偉丈夫に共闘を申し入れた。


「そこの銀髪さん、あいつを倒すのに手を貸してくれない?」


銀髪偉丈夫はマンティコアから視線を逸らさず槍を構えながら「わかった」とのみ返答。


と、そこへ艦橋からあのおかっぱ口髭が現れた。


「行けマンティコア!そのまま飛んでナヴォーリを滅ぼしてしまえ!はーっはっはっは」


こいつの仕業か。気持ち悪い奴め!


どうやらガルメーラ王国では捕らえた魔物を封印する技術を開発したようだな。しかし、魔物を操るまでには至っていないと。連中、船倉に封印したマンティコアを忍ばせ、いざという場合にこうして解き放つつもりだったのだろう。操れないまでも、敵に向けて放てばパニックを起こせるし、街や籠城する城内に放り込めば大惨事だ。


マーレドラゴ号はガルメーラの旗艦から離れつつあった。俺達3人でマンティコアを足止めしてマーレドラゴ号からゾフィに狙撃して貰おうと思っていたけど、どうやらもう無理のようだな。


「銀髪さん、俺は「正義の冒険者ホルストだろ?」


そう言えば前に自己紹介してたっけ。


「俺はガルメーラ海軍海兵隊大佐、男爵ゼルマー・ケッセルリンクだ。憶えておけ」


なっ、こいつ、「憶えておけ」は俺の好きな10番目の平成ライダーの口上で、俺がいつも使っているのに!


まぁ、銀髪さんは知らないだろうけどさ。


こうして俺とアイーシャ、そして銀髪さん改めゼルマー・ケッセルリンク男爵の3人は、ここにマンティコアを仕留めるべく共闘を開始したのだった。



いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ