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第60話 抜錨、船出だ、錨を上げろ

ナヴォーリ海軍の艦隊が出航する前に最終的な作戦会議が行われた。一応、俺も義勇隊(自分含めて3人だけど)の隊長にしてナヴォーリ海軍臨時特務大尉という肩書きもあるため参加を求められたけど、その作戦内容は以下の通り。


ナヴォーリ海軍

戦力:旗艦マーレドラゴ号以下ガレー軍艦21隻、海兵隊900人

目的:海賊団の排除、海上通商路の確保


友軍:ジギスムント海軍

戦力:ガレー軍艦30隻、海兵隊500人


敵対勢力:海賊に擬したガルメーラ海軍

戦力:ガレー軍艦大凡30隻、海兵隊は不明

目的:ナヴォーリ艦隊の撃滅、海上通商路の独占


作戦

・ナヴォーリを出港したナヴォーリ艦隊はシレジア川の河口沖でジギスムント艦隊と合流(指揮権はナヴォーリ側)。


・ナヴォーリジギスムント連合艦隊は外海の沖合にある海賊団(ガルメーラ艦隊)の根拠地になっているオーラン群島を目指し、海賊団を発見し次第艦隊決戦を挑み、これを撃滅。


・そのままオーラン群島の海賊を掃討。


随分と単純で、粗削りなご都合主義な内容だけど、実際はこんなものだろう。無線なんか無く、通信手段が限られるこの世界では複雑な軍事作戦は望むべくも無い。つまり、作戦というよりも目的達成のための活動方針といったところだ。


〜・〜・〜


元々ガルメーラ王国側は既に討伐されて存在しない海賊に自国艦隊を擬装させてナヴォーリに通商破壊戦をしかけて挑発。それにより港からナヴォーリ艦隊を引き摺り出してこれを殲滅するという戦略であった。


かつての海賊同様、ガルメーラ艦隊も外海沖合にあるオーラン群島を根拠地としている。


オーラン群島はどうにか人が住めそうな御蔵島くらいの島が一つに、岩ばかりで人の居住に適さない島が3つからなる。人が住まない海鳥と海棲哺乳類の楽園だ。


しかし、本来ならオーラン群島は艦隊の集結地には適さない。主島には波風避けの広くて深い湾は存在せず、水の補給も充分には出来ない。そこに30隻からなるガレー軍艦の艦隊が集結しているというのが常識では考えられない。


そこで俺は考える。そもそもこの情報をナヴォーリ側に齎したのは誰なのか?そして、一応味方であるジギスムント艦隊もこんな眉唾物の情報を元に立案された作戦によくも乗ったものだと。


しかし、これに関して、ここだけの話として艦隊の作戦参謀に教えて貰った情報だけど、この海賊討伐戦には当初ナヴォーリ海軍単独で行う予定であったそうな。その情報をどこでどうやって知り得たのかは知らないけど、ジギスムント海軍が自らナヴォーリ市へ協力を申し出たというのだ。


ジギスムント海軍が協力してくれるのならば、敵より数的に優位になるのだから乗らない手は無い。しかも作戦指揮権もナヴォーリ側で良いという破格な申し出だ。本来なら一国の正規海軍が自国の一自治都市の海軍に従うなどあり得ないにもかかわらず。


しかし、ジギスムント王国はナヴォーリ市の完全併呑を諦めていないという。そんなジギスムント王国側にとり、ナヴォーリ市最大の戦力である海軍の艦隊が市から離れ、しかも海賊団との戦いで容易に戻れないという状況はナヴォーリを攻略するには好都合と言えよう。


ガルメーラによる海賊に擬した通商破壊にジギスムントからの好条件な協力の申し出。どうにかしてナヴォーリ市から艦隊を引き離そうという意志を感じるな。


もし、この状況が偶然ではなく、何者かにより意図して作り出されたものだとしたら?


ナヴォーリ艦隊は、オーラン群島で予想外の戦力と戦う事になるだろう。なぜならガルメーラとジギスムントの両者にとりナヴォーリ艦隊は目的達成を妨げる障害でしかなく、ナヴォーリ艦隊の排除という点で両者の利害と思惑は一致するからだ。ジギスムント艦隊は意図的に合流に遅れるか若しくは合流しない、最悪、ナヴォーリ艦隊はガルメーラ艦隊とジギスムント艦隊から挟撃される恐れがある。


ナヴォーリ艦隊が潰えたならば制海権はガルメーラあるいはジギスムント艦隊に握られて食糧物資の補給は出来なくなる。市はジギスムント側の陸上戦力に包囲され、ナヴォーリ市の城壁が堅固であろうといずれは降伏せざるを得ない。そしてナヴォーリ市はジギスムント王国に併呑されるのだ。


これは初歩的な推理ではあるけれど、ジギスムント王国とガルメーラ王国は裏で手を結んでいる可能性が高いと俺は思っている。


〜・〜・〜


ナヴォーリ艦隊は抜錨し、既に港を出港して沖合に向かって漕行中。俺達の乗る旗艦マーレドラゴ号はナヴォーリ海軍でも最大のガレー軍艦だ。漕ぎ手が50人いて、帆走も可能である。硬く鋭い衝角を舳に備え、船体も他のガレー軍艦と違って上下二重構造となっていてより多くの海兵を乗せる事が出来る。


そうした船だから、狭くはあるけど女性には個室が割り当てられている。


俺は忍者の能力を持つ平成ライダー(20番目の平成ライダーに登場)の認識阻害能力を使ってゾフィとアイーシャの部屋を訪れる。どうも女性の部屋にこっそり訪れるようで気が咎めるのだけど、他に会話を聞かれない場所が船内には無いのでしょうがない。


ドアをノックする。


「ホルストだ。少し話がしたいのだけど、今いいだろうか?」


「ちょっ、ちょっとお待ちください?」


アイーシャの少し焦った声がしたと思ったら、中からドタバタした音が聞こえだし、それから少しして「どうぞ」と入室を許可された。


本来、女性用個室は士官用だという。室内は壁に張り付く様なベッドが両側にあり、ゾフィとアイーシャがそれぞれ縁に腰掛けていた。


二人は何故か息を切らしている。


「二人とも、どうかしたの?」


「いえ、何でもありませんよ?」


「女の子には色々あるんだよ!馬鹿ホルスト!」


ゾフィに怒られてしまった。


あまり長居は出来ないので、早速本題に取り掛かり、俺が先程考えた内容を伝えてどう思うか訊いてみた。するとアイーシャは少し表情を曇らせて口を開く。


「ホルスト様の思った通りです。ジギスムント艦隊は合流しません」


ゾフィもそれを聞いてうんうんと頷いた。


「二人とも知っていたという事か?」


二人は気まずそうに黙って頷く。


やはりそうだったか。信用出来ない連中だ。だけど、どこかの組織の紐付きとはその組織の利益を第一とするのだから、そういうものだろう。しかし今回の場合、この二人はナヴォーリ艦隊が全滅する事を知りながら俺をこの負け戦に引き摺り込んだのだ。


「許して下さい、とは言いません。ですが、せめて私の話を聞いて頂けませんか?」


アイーシャのは上目遣いで訴える。しかし、そこにはギルドで見せたようなあざとさは窺えない。


「騙す様な形になって本当にごめんなさい。でもお願い、ホルスト。アイーシャの話を聞いてあげて」


あの高飛車なエルフの弓聖のゾフィが懇願するとはね。


「まぁ、聞くだけ聞こうか」


どうも長い話になりそうだ。俺は狭くて座る場所も無いので立ったままドアに背を預けた。


「有難う御座います、ホルスト様。先程ホルスト様が仰ったようにガルメーラとジギスムントはナヴォーリ問題に関して裏で手を結んでいます。ジギスムント王国はナヴォーリの併呑を諦めていませんが、それは喫緊の課題ではありません。では何故、今になってガルメーラ王国を引き入れてまでこのような挙に出たのかわかりますか?」


わかりますか?と訊かれても、そんな事は俺が知る由もない。さぁ?と首を傾げるとアイーシャは続きを話し出す。


「それはジギスムント王国が内乱に発展しそうな情勢にあるからなのです」


「内乱に?」


「それです。内乱です。」


アイーシャが言うには、現在、ジギスムント王国の王位継承権は第一王子が保持している。それに対して第二王子派は異議を唱え、それぞれの派閥が互いに対立する事態となっている。


それでも国王からの王命により王位継承権が第一王子に決まっているのだから、この事実を国王以外の者が変える事は出来ず、情勢は第一王子派が圧倒的に優勢であった。


ところが、ある時期から第二王子が王位継承権を得るため戦いも辞さずの勢いで巻き返しを図り、既にジギスムント王国の各地で代理戦争が勃発していると言う。


「ホルスト様もラース辺境伯領で経験してらっしゃるのではないですか?」


確かにラース辺境伯領でも分家の弟が第二王子派に唆されていろいろしでかしていたな。


「このナヴォーリ市でもそれが起こっているのです。現市長は中立を表明しておりますが、ナヴォーリの自治を売ってでもこの街の支配を欲する者達がこの街の有力者の中にはいるのです。第二王子派は彼等と接種し、自分達への指示の見返りに彼等に永久執政官の地位を保証しました」


永久執政官とか、そんな口約束をそいつは信じるのか?その売国奴はそんな口約束なんか反故にされて殺されるのがオチだろうに。


「ですから、この戦いはナヴォーリが負けるように最初から仕組まれているのです。この戦いに負けたらナヴォーリの最大戦力である艦隊が失われ、ナヴォーリは第二王子派がクーデターを内部から起こして開城し、自治都市としてのナヴォーリ市は終わりです」


アイーシャの説明は聞いていて説得力があったけど、俺は一つの疑問を抱いた。


「これを現市長は知っているのか?」


俺と会った市長はそんな事をおくびにも出さなかった。それとも全てを知って尚、海賊団との戦いに臨んだのか?


「無論、市長は存じてます。ですから海賊に擬したガルメーラ海軍の挑発にも乗らずに自重していました。しかし、ここに来て今までの前提を覆す最強の要因が出現したのです」


アイーシャとゾフィは期待の籠った目を俺に向ける。


「つまり、俺って事か?」


「そうです。ホルスト様の存在がこの戦いにおけるナヴォーリ勝利の最大要因なのです」



いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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