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第57話 厄介事の予感

海賊に擬したガルメーラ王国海軍の船から奴等に拉致されたメリッサを救出した。


メリッサをお姫様抱っこして海賊船から重力低減装置で飛び上がった俺は、多少の遊覧飛行をサービスしつつ、彼女を家族の元に送り届けるべく市長公邸のバルコニーへと降り立った。


上空から見下ろした市長公邸は煌々と明かりが灯され、人々の動きも慌ただしく、市長の娘であるメリッサが何者かに拉致された事は知られているようだった。そんな状況下に当のメリッサをお姫様抱っこして空から降り立ったものだから、当然俺は不審者として包囲される訳で。


「囲まれちゃったな」


「大丈夫。私がちゃんと説明するから」


という訳で、今度は俺がメリッサに助けられる事となった。


〜・〜・〜


「お嬢様を離せ!無駄な抵抗はせず投降しろ!」


公邸を警備する衛兵隊に包囲されて剣を向けられる中、俺はメリッサを降ろした。と、そこへ現れるメリッサの家族。


「メリッサ!」


「た、ただいま?」


メリッサは駆け寄って来た母親(多分)に抱き締められ、俺はというと衛兵隊に包囲されたまま市長の鋭い視線を向けられている。


「誰だね?君は」


そう誰何されるも、「君」扱いなのは不審がられつつも拉致犯とは思われていないという事だろう、か?


そして誰かと問われたならば、堂々と名乗らねばなるまい。


「僕の名はホルスト。ナヴォーリは狙われている!」


……


何故ここでシーンとなるかな、公邸の衆よ!まぁ、だれもレイズナーなんか知らないから仕方ないか。


「えっ?ちょっと、どうしたのホルスト?お父様、こちらは冒険者のホルスト様で、私を昨日海賊から助けてくれた方です。そして今も海賊に拐われた私を海賊船まで乗り込んで、こうして救い出してくれました」


「…そうか」


メリッサが俺を紹介してくれたので、一応俺への疑いは解けたようで、市長は衛兵隊による包囲を解いて下がらせた。俺はそのまま昨日の出来事も含めて今回のメリッサ拉致事件についての詳細を話すため別室へ、という運びとなった。


〜・〜・〜


別室というのは市長の執務室。応接室じゃないのな。まぁいいけど。


執務室に通されて市長の秘書に椅子(ソファ)を勧めらる。遠慮なく深々と腰をかけると、すかさず使用人の若い女性(美人・メイド?)がお茶を入れてくれた。こちらも遠慮なく頂いていると、漸く市長一行のお出ましとなった。当然、俺も席を立つ。


ナヴォーリの市長は40代の前半といったところだろうか。栗色の髪をオールバックにした目元涼しいなかなかのイケオジ。背もスラッと高く、もしナヴォーリの女性にも選挙権があったならばかなりの女性票が見込めるはずだ。


「先程は娘の恩人に対して失礼した。私がナヴォーリ市長のラルク・コトセットだ。ホルスト君には娘が二度も助けられ、我が市の船も海賊から守って頂き、誠に有難う。感謝している」


市長はそう言って右手を差し出すので、俺もその手を握る。


「冒険者のホルストです。お嬢様に危害が加えられる前に救出出来て幸いでした」


互いの挨拶が終わり、下手な腹の探り合いが始まる前に俺は昨日今日とで起きた事、知り得た情報を話す。まあ、あまり長居したくないし、俺に前振りはねぇ、って事で。


「そういう訳で、ナヴォーリ周辺海域で活動している海賊はガルメーラ王国の海軍であり、市長の娘さんを拐って人質にしてナヴォーリ海軍を潰そうとしていたようです」


「その情報は確かなのか?」


情報の裏を取らないで信じるのは危険な事だ。メリッサの兄よ、安易に信じないその対応は評価しよう。だけど、俺への反感丸出しで言うのはどうかと思うぞ?タメ口とかな!


「俺を襲って来た賊を捉えて吐かせた。今も倉庫街に身動き出来ないようにして転がしてあるから、そいつらを回収して確認すればいい。昨日の海賊も痛めつけて吐かせれば同じ事が聞けるだろう」


早速市長は秘書に目配せし、俺が言った事の裏取りに行かせた。


「昨日、お嬢様の乗った船が狙われたのは偶然じゃないでしょう。どこかから情報がガルメーラ側に漏れていて、市の執政部や行政にガルメーラ側の内通者がいる可能性があります。差し出がましいようですが、そうした連中の炙り出しと摘発をお勧めします」


「それも早速手を打とう。」


まあ、おそらく売国奴の内偵は進めているんだろうけどね。


「ところで、娘からホルスト君はその若さで「能力」持ちの金級冒険者だと聞いている。大したものだ」


お、なんか話題を変えて来たぞ?


「いえ、大した事ありません」


俺はいえいえまあまあと謙遜しつつ、市長が振ってくる話題には乗らず、使い魔を回収しなければならないと言って市長公邸を辞した。面倒事を押し付けられそうな雰囲気だったからね。


〜・〜・〜


市長公邸から外に出ると、公邸の敷地内や周囲は数を増した衛兵によってガッチリ厳重な警備下に置かれていた。そこを通って敷地の外に出るまでに一々衛兵から誰何され、なんだかんだで魚藍亭に帰り着いた頃には東の空が白み始めていた。当然、宿は閉まっているから夜が明けるまで宿の前膝を抱えるハメに。


眠るつもりは無かったけど、空を飛んだり戦闘したりで結構魔力を使ったからか、いつの間にかうつらうつらと舟を漕いでいたようだった。


ペシペシという感じの猫パンチを頬に受けて目が醒める。


"ホルスト、起きて。こんな所で寝ないでよ"


目を開くと白猫姿のメルが心配そうに俺を見上げていた。うぅ、その表情も可愛いな。


「ごめん、メル。なかなか帰らせてくれなくてさ。遅くなって宿が閉まってて入れなかったんだ」


"あの娘はどうしたの?助けられたんでしょ?"


「あぁ、それはバッチリだ。ちゃんと家まで送ったからな」


"じゃあ、部屋で休んだら?お疲れ様、ホルスト"


あぁ、この気遣い、そして優しさ。本当にメルは俺のヨメ!


俺はメルを抱き上げると、漸く開いた宿に入り、スープのいい匂いを嗅ぐと空腹である事を思い出した。そういうば晩飯を食い損ねたんだったな。


早速食堂に陣取ると、女将さんに朝食を頼んでひたすらに食べた。メルに昨夜の顛末を話したかったけど、今は食べる事が最優先。流石の俺も食べながらの念話は無理だからな。メルも食べる事に集中していたし。


食事を終えてお茶を喫しながらメルに昨夜の顛末を話し、その後は宿の裏庭で井戸を借りて水を浴びてサッパリして一眠り。


目が醒めると昼になっていた。そのまま宿の食堂で食べてもよかったのだけど、折角だから色々な店の味を楽しみたいので、俺はメルを連れて宿近くのタベルナ的な大衆食堂で昼食を摂った。その店はトマトで煮込んだ酸味のあるイカの煮込みが名物との事だったので迷う事無くそれを注文。猫にイカを食べさせてはいけないのでメルには黒鯛の香草焼き。そしてムール貝のワイン蒸しとパンに空豆のスープを付けた。


猫とメシを食う俺を他の客達は胡乱げに見ていたけど、冒険者がテイムした動物や魔物を使い魔にしているのは良くある事だからか、店員も含めて何か言ってくるような奴はいなかった。まぁ、店員にはちょっと多めの心付けを握らせたからでもあるのだけど。


注文した料理はどれも美味しかった。その勢いで一杯だけ白ワインなんかも飲んじゃったりして。そして気分良く店を出たら、


「ホルスト様!良かった、見つかって」


と、不意に声をかけられたのだ。


この街で俺の名を知っている女性は4人だけ。メリッサに巫女のアイリーンに魚藍亭の女将さん、そして冒険者ギルドナヴォーリ支部の副ギルドマスターであるアイーシャさんだ。更に言えば俺を様付けで呼ぶのはアイーシャさんだけ。


俺は厄介事の予感に彼女の声に気付かなかった体で足早に立ち去ろうとしたのだけど、すかさず前に回り込まれてしまった。何気に彼女、凄くないか?


「昼酒で気分良いところ、大変心苦しいのですが、ナヴォーリの人々は今、ホルスト様のお力を必要としています。ギルドまでお越し願えませんでしょうか?」


"ほ〜ら、やっぱり女狐に捕まったわ"


アイーシャさんの上目遣いの懇願とメルの嫌味の間で、せめてもの抵抗として俺は盛大に溜息を吐いてやった。















いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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