第56話 狙われたメリッサ②
手足を縛られ、猿轡も噛まされ、頭から袋も被せられた。抱えられて運ばれて乱暴に床の上に寝かされた。このまま何処に連れて行かれるのだろう。
と、物凄い爆発音がして、すぐに衝撃波で船が揺れる。何も見えないけど、ドタバタと慌しい足音、飛び交う怒号に慌てふためく周りの様子。この船に何かが起きているのだ。
(もしかしたらホルストが?)
それまで恐怖と絶望感で占められていた私の心の中に希望の光が灯る。
少しして私は被せられていた袋が取られ、足を縛っていた縄も解かれて船室から連れ出された。微かに香る潮の匂いにやっぱりここが船の上という事がわかる。
私は誰かに抱えられたまま船室から出させ、目隠しを取られると眩しい光に目を眇めた。そして光に目を慣らすようにゆっくり目を開くと、甲板の上にはホルストの姿が!
「うぅぅう、うーうー(ホルスト、助けて)」
猿轡を噛まされたままだったけど、私はホルストの名を叫び、助けを求めた。
「メリッサ、助けに来たぞ。もう大丈夫だからな」
ホルストの呼びかけに私は何度も頷く。
ホルストは賊に私の解放を要求。でも賊は私の首筋に短剣を突き付けて逆にホルストに降伏しろと迫った。それに対してホルストは私を殺したらガルメーラ王国の王女を皆殺しにすると宣言する。
(えっ、ホルストにとって私ってガルメーラ王国の全ての王女に等しいって事?)
拉致されて人質にされ、殺すと脅されている状況だけど、ホルストが助けに来てくれたからそんな妄想する余裕も出来たりして。
更に甲板上をよく見てみれば、手足を失って倒れている者や、もう息絶えている者があちこちに見られた。きっと私を助けに来たホルストと賊との間で壮絶な戦闘があったのだろう。
そして私に短剣を突き付けている男は、焦っているのかハァハァと荒い息をして、とても息が臭い(助けて、ホルスト!)。
〜・〜・〜
結局、私に短剣を突き付けている男(おかっぱ頭の口髭口臭)は、この船の船長なのか銀髪の偉丈夫の命令で海賊達によって拘束されて何処かへ連れて行かれた。私は縛られていた縄と猿轡を解かれると、足元がよろけながらも甲板を駆け、迎えに来たホルストの胸に飛び込んだ。
「ホルスト、恐かった。恐かったよ!」
ホルストは私をギュッと抱きしめると、恐い思いをさせて悪かったと謝った。そんな事は無い!ホルストはこんな所まで私を助けに来てくれた!
こうして、私はホルストが助けてくれたので海賊の手から解放された。でも、私達が海賊に囲まれて沖合の海賊船にいる事実には変わりは無い。ホルストと一緒だから恐くは無いけど、ここからどうやってナヴォーリへ戻るのだろう?って言うか、そもそもホルストはどうやってここまで来たの?
するとホルストは
「ナヴォーリに帰ろう」
と言うと、私を両腕で抱き上げ(お姫様抱っこ⁉︎)た。
「スカイジャンプ!」
そしてホルストが何か短い呪文のような言葉を唱えると、私達はふわりと浮き上がり、そのまま夜空へと飛び立ったのだ。
「ええっ⁉︎」
見下ろすと、みるみるうちに小さくなっていく海賊船。それと反対に大きくなっていく月に星たち。
信じられない。私、ホルストにお姫様抱っこされて空を飛んでいるんだ…
「寒くない?」
不意にホルストが尋ねる。
「うん、大丈夫。でも、空飛んでるよ」
「あぁ、俺、「能力」持ちだからさ。これも俺の能力の一つなんだ」
「凄い、凄いね!」
ホルストが更に高度を上げると、私達の目の前には銀色に輝く鏡のような満月が、
「ねぇ、ホルスト?」
「うん?」
「あのね、助けくれてありがとう」
「うん、どういたしまして」
彼の変な返しは変わらない。思わず笑いが溢れた。
「ふふっ」
「はははは」
〜・〜・〜
突然の悪夢から一転してホルストとの夢のような星間飛行へ。
でも夢はいつかは醒めてしまうもの。暗い海原の向こうにナヴォーリ灯台と街の明かりが見えて来た。
(もうちょっと、もうちょっとだけこうしていたい)
私の思いがホルストに通じたのか、彼はすぐには地上に降りず、街の上空を一周すると、私の誘導でナヴォーリの市長公邸へ降り立った。
公邸では行方がわからなくなった私が男の人に抱えられて空から降りて来たもんだから、みんなビックリ!
ホルストが私を降ろしてくれると、家族が駆け寄って来た。
「た、ただいま?」
こんな時に何て言っていいのかわからなくて、思わずこんな事言っちゃったのだけど、それをきっかけに母に抱きしめられる。
父と3人の兄達はホルストを囲んで食ってかかっている。これから全部話さなければならないけど、みんな信じてくれるかな?
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それでは次話もお楽しみに!




