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第54話 助けに来たよ

ホルストホッパーは間も無く倉庫街の反対側に放置された馬車を発見すると、思念波で俺にその映像を送って来た。


ホッパーからの映像では馬車のドアは開かれたままで、中にはメリッサはいない。馭者はというと、近くの路上にうつ伏せで倒れていた(死んでるなあれは)。倒れている馭者の下には血溜まりが出来ていて、おそらく心臓をブスリと刺されてからの失血死だろう。


では海賊に擬したガルメーラ王国海軍工作部隊は拉致したメリッサの身柄をどこに監禁するだろうか?どこか市内に確保したアジトか?しかし、それでは敵対勢力に踏み込まれる可能性がある。海軍という事を勘案すれば、拉致した重要人物を監禁するならやはり船の中だろう。船内なら敵も手が出せず、人質奪還を謀られても船で自由に移動出来、そのまま根拠地に帰ってしまえばいいのだ。


俺はホッパーを更に2機打ち上げて3機のホッパーでメリッサの捜索を強化、港から海上へと向かわせた。


暫くすると1機のホッパーが海上を移動する小型船を発見した。別の2機もそちらに向かわせ、3機で追跡する。


小型船は10m程の大きさで、帆はたたんであり櫂で走航してかなり早い。更に詳細を知るため上空からホッパーに強力ライトで船体を照射させると、その船は16名の漕ぎ手により高速漕行する小早船みたいな快速船だ。


いきなり上空から照射されて船の連中も動揺しているのがわかる。そして甲板に頭に頭陀袋のような袋を被され、身体をロープで縛られて転がされている女性を確認。


"メル、メリッサを見つけた。海賊に拐われて沖合の海賊船に連れられている最中だ"


"助けに行くんでしょ?私はどうしてたらいい?"


"大事なメルを海に落としたら大変だ。ちょっとの間だから先に宿に戻って待っていてくれないか?"


"わかったわ。気を付けてね"


俺は倉庫街の暗がりから月光で明るい波止場に出ると、メルを抱き上げてお互いに軽く頬擦りし、彼女を堤防の上に降ろした。


まぁ、仮にもメルは神族なのだから少しの間一人にしても大丈夫だろう。俺はメルにこの埋め合わせは必ずするぞと内心誓いつつ、重力低減装置で上空へと飛び上がり、メリッサを拉致して連れ去ろうとしている快速船へと向かった。


〜・〜・〜


月光で照らされた海上を飛行する事数分。煌々と3機のホッパーに照らし出された海賊船を発見。残念ながらメリッサは既に快速船から海賊船に移し替えられてしまっていた。


俺は拉致犯は片棒担ぎでも許すまじとホッパーの1機を海賊船から離れつつあった快速船に突っ込ませて自爆させた。


ドッガーン!


爆発音を辺り中に響かせ、派手な水柱を上げて快速船は轟沈。もしかしたらナヴォーリで雇った船の可能性もあったけど知った事では無い。元日本人の俺としては女の子を拉致して船で連れ去ろうという連中はどうしても許せないのだ。


俺はそのまま2機のホッパーが照らし出す海賊船の甲板に降り立つ。狭い船内や船上での戦いに剣の類は不向きだ。飛び道具もメリッサという人質がいる以上流れ弾や跳弾の危険があり、こちらも使わない方がが良い。なのでここは10番目の昭和ライダーの武器、電磁ナイフと十字手裏剣の出番となる。


海賊どもはメリッサの拉致には成功したけど、俺はそれ以上の成功は許さない。


正体不明の飛翔体に付き纏われて眩しいほどに照らし出された海賊どもは、目の前で派手に快速船を轟沈されて混乱しているようだ。


と、そんな場面に、


「俺、参上!」


突然現れた俺に騒然とする海賊ども、いや、海賊を騙るガルメーラ王国海軍の海兵ども。


「貴様は何者だ!」


海賊の頭立った者なのだろう。銀髪を短く刈り込んだ偉丈夫がカットラスを片手に誰何する。泥棒で、いや、


「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ。聞け、悪党ども!俺は正義の冒険者ホルスト。天に代わりて不義を討たん!」


と、言い終わるタイミングで背後から矢が飛来。


何者だ?と問われたから名乗ってやったのに、こいつらときたら背後から矢を射掛けやがった。瞬時に俺は多くのヒーローが持つ能力であるバリヤーを自分の周囲に展開して矢を防ぎ、お返しとばかりに弩を持つ海兵に十字手裏剣をぶち込んで絶命させた。


銀髪の偉丈夫は部下に短く「()れ!」と命じると、周囲の海兵どもが一斉に切りかかって来た。


俺は甲板上を短く加速しながら電磁ナイフで海兵どもを切り刻み、忽ち5人を戦闘不能にした。甲板上には倒れて呻く海兵どもと、切り落とされたそいつらの腕や脚が転がった。


「どうした?お友達が苦しんでいるぞ?助けなくていいのか?」


俺の軽い煽りに銀髪の偉丈夫は吐き捨てるように怒鳴った。


「卑怯者め!」


いや、海賊装って女の子を拐い、人質にして侵略を仕掛けるお前達に言われる筋合いは無いな。


「弱い犬ほどよく吠える、ってね」


銀髪の偉丈夫は黙って俺を睨むので、俺は更に煽るように足元に転がる海兵を奴等の方へ蹴り飛ばしてやった。


「「「!!」」」


途端に周囲から凄まじい殺気を向けられるけど、別にどうって事は無い。


海兵どもは俺の足元の周囲に瀕死の仲間が倒れているので動くに動けない。その隙に俺は十字手裏剣を投げて一人、また一人と斃してゆく。


「どうした、海賊さん?早く助けに来ないとこいつら死んじまうぞ?」


そう言いながら、また一人に手裏剣命中。


この十字手裏剣の殺傷力は凄まじい。手裏剣は俺が投げつけると高速回転しながら飛び、命中するとズバンッという音と共に身体を貫通し、体幹は分断されるか大穴が開く。


「何が望みだ?」


銀髪の偉丈夫が苦々しい表情で尋ねる。


「お前達が拐った娘を返せ!」


奴は少し考え込むと「娘を連れて来い」と命じた。


そして船室から後手に縄で縛られて猿轡を噛まされされたメリッサが海兵によって連れて来られた。


メリッサは煌々としたホッパーの照明に顔を顰める。それからゆっくり目を開き、俺を認めると身を捩りながら「うぅぅう、うーうー」と呻いた。


「メリッサ、助けに来たよ。もう大丈夫だからな」


俺の呼びかけに何度も頷くメリッサ。


「では取引きといこう。その娘を黙って返せば、俺はこのままこの船から去ってやる。嫌だと言うならお前達を皆殺しにする」


「わかった。少女を返そう」


あれ?案外素直に応じたな、と思っていると、やっぱり反対する者が出た。


「何を言うかゼルマー船長、お前にそのような権限は無い。この作戦の長は私だぞ。市長の娘の身柄は本作戦の要だ。ここでどんな犠牲を払おうと返す訳にはいかん!」


そいつは長身ではあるけど線が細く、黒髪のおかっぱ頭に口髭を生やした若い男だ。


「この男の力を見ただろう?どういうカラクリか空を飛んで来て早船も爆発させて沈めた。矢も剣も通じない。皆殺しにするというのも単なる脅しではないだろう」


ゼルマーと呼ばれた銀髪偉丈夫は冷静におかっぱ口髭に反論した。事象に囚われず事実を受け入れて対処する、なかなか有能な艦長だな。


しかし、おかっぱ口髭は別の意味で事象に囚われないようで、縛られているメリッサに短剣を突き付け、


「おい、貴様。この娘が大事なら降伏しろ。さもないと殺すぞ!」


と俺に要求した。


殺してしまったら人質の意味が無いんじゃないでしょうか?俺にそんな脅しには通じない。


「その娘を殺したらガルメーラ王国の王女を一人残らず殺す。出来ないとは思わない事だ」


俺は右手で指をパチンと鳴らし、1機のホッパーを海賊船の左舷上空で爆発させる。


ドガァァン!


爆発音が響き、爆風が襲いかかり船が揺れる。


「ぐぬぬ」


悔しげに呻くおかっぱ口髭。その間にゼルマー艦長は部下に目配せすると、僅かに頷いた部下達がおかっぱ口髭を取り囲んで刃を突き付けた。


「ゼルマー、憶えておけよ、この裏切り者めが!」


おかっぱ口髭はこの事態に観念したのかメリッサに突き付けていた短剣を下ろすと、すかさず海兵どもによって拘束されて船内に連行されて行った。


海兵によって縛られていた縄を解かれたメリッサは、そのまま甲板上をよろけながら駆け、俺は胸に飛び込んで来たメリッサを抱き止めた。


「ホルスト!」


「メリッサ、遅くなってごめんな」


メリッサは泣きながら俺の胸の中で何度もイヤイヤをするように首を振る。


「怖かった、怖かったよ!」


「もう大丈夫たから。一緒にナヴォーリに帰ろう」


メリッサをこんな目に合わせた連中をこのまま船ごと沈めて魚の餌にしてやりたいところだ。しかし、悪党相手であっても約束は約束。次に会った時は容赦しない事にして、俺は周囲を牽制しながらメリッサをお姫様抱っこすると、そのまま重力低減装置で上空に飛び上がり、一路ナヴォーリへと進路を取った。






いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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