第47話 海賊の襲撃①
現れた海賊船は禍々しい髑髏が描かれた帆を上げ、船体は黒く塗装され、などという事は無かった。見た目は2隻とも至って普通の、グランデプロフィット号と同じような中型貨客船。
では見張りの水夫が何故それを海賊船と判断したかといえば、おそらく船の動きからだろう。そして、海賊船をよく見てみると舷側には鉄板が張られ、更には幾つもの矢盾も配置されている。
2隻の海賊船のうち1隻はグランデプロフィット号の前に出て進路を遮り、もう1隻がグランデプロフィット号の右舷に接舷せんと下流方向から接近しつつあった。
「海賊だ!戦闘準備、かかれ!」
ガルタス船長は永く海で過ごした者特有のどら声で叫ぶと戦闘の指揮にかかり、船員達は小楯とカットラスのような短剣を、漕ぎ手などの水夫達は棍棒を持って甲板に出て海賊を迎撃すべく陣形を組み始める。
彼等の動きは訓練されているようで、無駄な動きが無く頼もしく感じられた。しかし、2隻の海賊船相手では多勢に無勢。接舷されて戦闘が始まったら時間と共にすり潰されてしまうのは必定だろう。
海賊の接近と聞いてメリッサは緊張の面持ちとなりながらも怯えるアイリーンと侍女を守るように腰に差していた短剣に手をかけた。
メリッサは父親であるナボォーリ市長から道中アイリーンを守るよう指示を受けているのかもしれないが、このシチュエーションで狼狽える事もない。なかなか肝が据わった女の子だ。
「アイリーン様、大丈夫です。私達と護衛の衛兵でお守りします」
メリッサはアイリーンを安心させるように言葉をかけるけど、アイリーンも怯えながらも冷静に状況を分析しているようであった。
「でも、この人数で何が出来るの?海賊の方が多いし、川に飛び込んで逃げる訳にもいかないわ」
メリッサは懸命にアイリーンに言葉を繋げる。
「仮にこの船が海賊に制圧されてもアイリーン様は聖職者ですから人質にされて、ナルディア教団が身代金を払えば解放されます」
それはナボォーリ市長の娘さんであるメリッサも同じだろう。しかし、海賊が解放するまでに彼女達に何をするのか知れないし、海賊に攫われた女性を世間がどのように見るかは推して知るべしといった感じだ。
そして、侍女さんも含めた他の乗船客達は奴隷に売られる未来が待っている。特に若い女性達は海賊達に散々お楽しみにされ、その際に殺される者もいよう。
いずれにしろ、このままではこのグランデプロフィット号の乗員乗客には碌な未来は無い。
"ホルスト、海賊よ!"
どこに行っていたのか、メルが大慌てで駆けて来て、ぴょんと跳ねて俺の胸に飛び込んで来た。
では、メルも戻って来た事でもあるし、正義の冒険者は海賊退治をしようか。
「メリッサ」
「な、何?」
急に名前を呼ばれたメリッサが噛みながらも返事をして振り返る。俺はそのままメルをメリッサにグイッと押しつけて抱かせた。
「え⁈」
メリッサは急に託されたメルをその腕に抱きなら困惑の表情を浮かべた。
「ちょっくら海賊退治して来るから、俺が戻るまでメルを頼むよ。危ないから巫女さんと侍女さんを連れて船室に隠れていてくれ」
「ホルスト、あなたがどれだけ強いか知らないけど、あれだけの海賊相手にいくら何でも無茶よ」
「大丈夫だよ。ちゃんとメリッサがナボォーリへ戻れるようにするから」
そう言っている間にも海賊船は弓を射掛けつつグランデプロフィット号の右舷に接舷しようとしていた。俺達の近くにも海賊の流れ矢が床に壁に刺さる。
ガンッ
遂に海賊船は体当たりするようにグランデプロフィット号に接舷、その衝撃で船体は大きく揺れた。
「「「キャア!」」」
「今のうちに、早く!」
俺はハッチを開けてメリッサ達に船室に入るよう促した。
「ホルスト、また会えるよね?」
「ああ。勿論だ」
"メル、この娘達をよろしくな"
"わかった。ホルストも無理しないでね"
俺はメルと念話を交わし、船室に入った行くメリッサ達を見送りハッチを閉じると、船の中央で戦闘を指揮する船長の元へ駆けつけた。
「船長、加勢に来た。これでも金級冒険者だ」
「おう、兄ちゃんか。そいつは助かる」
これは海賊から船と乗員乗客、自らを守る戦い。「アクションヒーロー」能力全解除だ。
「海賊が来るぞ、行くぜ野郎ども!」
おおぅ!
接舷した海賊船からは次々に鉤付きの網や綱が舷側に投げかけられ、遂には海賊船から海賊共がグランデプロフィット号に乗り込んで来た。
海賊共の武装はカットラスのような刃渡りの短い片手剣に小楯。服装はまちまちで、落水する事を想定してか、鎖帷子や鎧の類は身に付けていない。
また、武装に関しては船員と海賊は同じようなものであるけど、武装した船員は海賊よりも少なく、棍棒を持つ漕ぎ手などの水夫が主力となる船員勢がどうしても兵力、武装とも不利だ。
「狼煙は上げてある。応援が来るまで持ち堪えればいい」
海賊共と、これを迎え撃つ船員勢の戦闘が始まった。戦闘は戦いに慣れた海賊共に勢いがある。水夫達は至る所に釘が打ち込まれた棍棒を持ち、それは殺傷力は高い物ではある。しかし、水夫達の数は多くても戦闘に関しては素人であり、戦いは早くも船員勢が押され始めている。
俺は船長に加勢を申し出てはみたものの、船には船室やマストなど船体の中央構造物があり、船首と右舷では船員勢が戦っているので割って入る訳にも出来ない。正直手持ち無沙汰であった。そこで俺は遊兵として直接接舷している海賊船に乗り込んでみる事にした。
〜・〜・〜
俺は母から貰った両手剣を片手にジャンプして海賊へ。
「な、なんだ、お前は!」
まさか獲物である客船から逆に乗り込まれるとは思っていなかったのだろう。上空から海賊船の甲板に降り立った俺に、船に残っていた海賊の上役が驚きながら誰何した。
「泥棒です」
「…ふざけやがって、やっちまえ!」
折角の俺の怪盗三世ギャグをスルーした海賊の上役がそう命じると、船内に残っていた海賊共がカットラスを構えて俺を取り囲み、一斉に襲いかかって来た。
そいつらに構わず、俺は加速して俺をやっちまえと命じた海賊の上役に距離を詰めるとスパッと剣を一振り、上役の首を刎ねた。うん、斬れ味バツグンだ。折角母から餞別に貰った剣だから、たまには使わないとね。
頭部を失った上役の身体は、その首元の断面から噴水の様に鮮血を吹き上げる。
「か、かしら!」
どうも、俺が首を刎ねた海賊の上役はこの船の船長だったようだ。あっという間に船長が首を刎ねられて鮮血を吹き上げている光景を、戦闘中だというのに海賊共は呆然と見ていた。しかし、それが一頻り出血を終えて丸太のように倒れると、俄かに我に帰ったようだった。俺は我に帰った奴らが再び動き出す前に両手剣を収納すると、ラジャータを14番目の平成ライダーの武器であるソードガンに変形させ、俺を囲む海賊共に向け魔力弾を連射した。
「ぐわっ」
「ギャア」
「ガフッ」
それぞれがそれぞれの悲鳴を上げてバタバタと海賊共は甲板上に倒れてゆく。俺は更に炎を纏った魔力弾を海賊船の帆や船体の至る所に連射して火災を発生させた。
甲板を撃ち抜いた魔力弾は船内でも火災を発生させ、船内にいた海賊共がハッチを開けて次々と甲板に逃げ出して来る。俺はそいつらにも漏れ無くソードガンの連射を見舞ってやり、一人残らず射殺。
海賊船の火災は火の回りが意外と早く、放置しておけば接舷しているグランデプロフィット号にも延焼しそうだった。俺は焔に包まれる海賊船から戻ると、接舷した海賊船をグランデプロフィット号に固定する鉤綱や鉤網をソードガンの刃で斬り払い、1号ライダーの脚力で燃える海賊船を蹴り離した。
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それでは次話もお楽しみに!




