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幕間③ エミリーの学院生活 上京編

「はあ〜」


私は王都に向かう馬車の中。ずっと変わり映えのない麦畑の風景を見ながらもう何度目かになるだろう溜息を吐いた。


私エミリー・ヴィンターは14歳になり、王立学院に入学するため、ただ今故郷の領地から王都に向かっている最中。


本当に退屈でつまらない。一年前になる元服の儀の時はホルストお兄さまと家臣の娘で幼馴染のマリーとで楽しい道中だったのに。


王都へはお父様と二人の家士が付いて来ている。私の王立学院入学の手続きのためだ。馬車の中では私の隣にお父様が座っているけど、私との会話は殆ど無い。何故なら私とお父様はホルストお兄さまの処遇を巡って絶賛冷戦の真っ最中だから。


〜・〜・〜


お父様は一年前、ホルストお兄さまの貴族籍を剥奪して家から追い出した。しかもご丁寧に領内の村々にお兄さまの悪い噂を流して領内に居づらくして。


一年前、ラースブルグから戻ったその足で、その日のうちにお兄さまは家からも領地からも出て行ってしまった。その事で私はお父様とお母様を随分と責めてしまい(お父様とお母様は何も言い訳をしなかった)、それ以降両親とは必要な事以外は喋らなくなった。貴族家を存続させる事も領地経営も大変なのは十分わかっているつもり。だからお兄さまが言ったように貴族としては両親のようにあるべきなのかもしれない。だけど親として最低だと私は今でも思っている。


それはきっと私がまだ子供だという事なのだろう。私も大人になればお父様の立場も理解出来るようになるのだろうけど、今はまだ無理。私の隣でシュンとしているお父様を見ても「何よ!何の罪もなく追い出されたお兄さまの方が余程辛いのよ!」と思ってしまう。


〜・〜・〜


このジギスムント王国では14歳になる貴族の子弟は王都にある王立学院に入学する事になっている。これは義務では無いけれど、殆どの貴族がこの慣例に従って自分達の子弟を王立学院に入学させていた。


この学院に入学出来なかった貴族の子弟は、余程の理由でも無い限りホルストお兄さまがそうであったように貴族社会からは訳あり人物として爪弾きにされ、最終的に貴族籍も失って実家からも放逐されてしまうのだ。


ホルストお兄さまが入学出来なかった王立学院に妹である私が入学する事に内心忸怩たるものがある。けれども、やはり私には王立学院入学は楽しみであった。これで暫く私も辺境のそのまた辺境から出られるから。しかも寄親の辺境伯の領都ラースブルグを通り越して国の中心たる王都へ行くのだもの。


多分、以前ホルストお兄さまが言っていたように私が実家に帰る事はもう無いだろう。帰省は学院に在学している間は夏の長期休みでどうだろう、帰れるかな?というくらい。卒業するまでにもしかしたら誰かと婚約させられるかもしれないし。また、お兄さまが言ったように私の能力「看破」故に、これも王族など要人の側近に取り立てられるかもしれない。どちらにしてもそうなればもう実家に戻る事は無いというか、出来そうにない。


〜・〜・〜


これから新しい人生が始まるかもと思うと楽しみでワクワクする。だけどその反面不安も。まず田舎出の私が煌びやかな王都で他の貴族の女の子達と上手くやっていけいけるのか。しかも実家の爵位ははたかだか騎士爵で、貴族の中では最底辺。それ故に馬鹿にされたり苛められたりしないか少しだけ不安がある。


王都に私の知り合いは今のところ一人しかいない。実家の家士長ジョルジュさんの長女で、私とホルストお兄さまの幼馴染であるマリーだ。


マリーは去年の元服の儀で「剣聖」の能力を授かっていた。その時「剣聖」の能力のせいか、マリーは少し、というかかなりおかしくなってしまいお兄さまを裏切り、あまつさえ邪魔だと言って斬り殺そうとして一騒動起こしていた。だけどお兄さまの骨折り(勇者ボコ)でマリーも私と一緒に王立学院で学べる事になったのだ。


そんなマリーは剣聖の修行のため私よりも早く王都へ出発していた。彼女は入学までの間、王都にあるアプロス教団の聖アプロス騎士団か近衛騎士団で剣術の修行を受けなければならなかったからだった。これもホルストお兄さまが勇者と決闘し、勝利者の要求として勇者パーティに認めさせた結果だ。


〜・〜・〜


マリーはきっと王立学院に入学してからも学院の学業と剣術修行で忙しくなるだろう。


彼女の学費や生活費はアプロス教団と寄親であるラース辺境伯様から出ていて、王都での学業や暮らしについては問題無さそう。学業に剣術修行にと大変だろうけど、きっとマリーはやり遂げる。マリーは能力に負けず自分の力で剣聖の実力を養うとホルストお兄さまと約束したのだから。


そういう訳でマリーは忙しくなりそうだけど、幼馴染が側にいるというだけで心強いものがある。それに暫くしたらホルストお兄さまも王都にやって来るのだ。お兄さまは私とマリーに会いに来ると約束をしているし手紙も書いてくれる事にもなっている。


思えば不安な事も有るけれど、きっと大丈夫。私とホルストお兄さまは例え距離が離れていても兄妹として繋がっているのだから。


馬車はまだ単調な風景の中を王都ジルギットブルグに向かう途中だ。旅慣れた家士の説明によれば明後日には到着するという事。


そんな中、私は王都でのお兄さまとの再会を思い思わず顔がニヤけてしまっていたようだった。隣のお父様はそんな私の様子に怪訝そうな表情をしている。でもそんなことは気にしない、気にしない。私は来るべきお兄さまとの再会までに王都での日々を充実したものにして、綺麗で都振りに洗練された私の姿をお兄さまに見せて驚かせてやるんだから。


あっ、そういえば王都には上の双子の兄達も騎士団にいたんだっけ?すっかり忘れてた。


いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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