第39話 ランクアップ、そして冒険の旅へ
俺の知らないところで自分がそんな陰謀劇に巻き込まれていたとは。やはり権力とは恐ろしいものだ。ウォルター男爵に連座して死んだ者達も、まさか自分達がそんな事のために死ななければならなかったなんて、死んでも死にきれないよな、きっと。
「ヘルベルト騎士領の事は本当に想定外だったのよ。まさかあんなに魔物が増えて、しかもゴブリンキングまでいたなんてね。あれでヘルベルト騎士爵の館が落ちて魔物に証人の家士が殺されていたら、ウォルター男爵は身代わりに全部押し付けて逃げおおせていたでしょうね。だからホルスト君には感謝してもしきれないわ」
当代の辺境伯閣下は政敵であり獅子身中の虫でる弟を消すことが出来、更に身内の不穏分子も一掃出来た。そしてその結果は第1王子派の大勝利で終わったと言っていいだろう。
冒険者ギルドラースブルグ支部内もウォルター男爵派の粛清が行われ、ギルドマスター以下の要職をラース辺境伯の子飼いで占められる事となり、エドワード・ラムズフェルド氏がギルドマスターに就任している。
「私も支部の会計主任に昇任したのよ。本当にあなたのお陰よホルスト君。そして君を推した私の慧眼を誇りたいわ」
「「…」」
アンジェリカ姉さんドヤ顔に俺とラムズフェルド氏は無言を貫き互いに顔を見合わせた。何だかこの人に親近感が湧いたよ。
〜・〜・〜
これらの結果から、何と俺は冒険者のランクを上位銅級から銀級を飛び越えて下位金級にランクアップする事となったのだ。
「これはいくら何でも異例にすぎませんか?」
「確かに。だがそれだけの事を君が成し遂げたという事だよ。辺境伯様からも君のランクを上げるよう指示が出ているしね。それに君が救った村々からも支部に感謝状が届いているし、ヘルベルト騎士爵からは君への感状も出ている。あのヘルベルト戦斧団の団長からだ。とても無視できる代物じゃない」
それに異例のランク上げをする事で、支部におけるラース辺境伯家をバックとするラムズフェルド新体制をギルドの内外に喧伝出来ると共にギルマスとしてのラムズフェルド氏の強い権力と立場を知らしめす事が出来る。そして俺のバックにラース辺境伯家の影をチラつかせる事で俺の実力に目を付けた他の貴族家からの囲い込みを防ぐ事も出来る、と。ラムズフェルド氏の言葉の裏にはこうした事も含まれている。
「王都の冒険者ギルド本部や他のギルド支部から問題視されませんか?」
俺は尚も問題点を確認する。
「それも問題は無い。もし横槍が入ったらゴブリンキング4体にコボルトキング1体を一人で始末出来る冒険者が他にいるのかと言ってやるさ」
ラムズフェルド氏はそう言って苦笑と共に肩を竦めてみせた。
「それでどうだろうか?ランクアップの件は受けてくれるかい?」
「勿論お受けします。だけど私は辺境伯領を出る予定ですがいいのですか?」
「それは構わない。何も君を囲い込もうという訳じゃ無いから好きにしてくれ」
こうして俺は実家を追い出されてから約4ヶ月にして下位金級の冒険者となり、しかもかなり高額な報酬も得るに至ったのだった。
因みにジギスムント王国も含めた幾つもの国々では金級以上の冒険者は貴族に準じた扱いを受けられる。まぁ、ある意味俺は実家と対等かそれ以上の存在となったとも言えようか。
(実家と関わる気は無いからそれについては特に思うところは無いけどな)
〜・〜・〜
翌日、俺とメルは王都ジルギットブルグに向けてラースブルグを後にした。
"ねえホルストどうやって王都に行くの?"
メルがベビースリングから顔を出して念話で尋ねた
"そうだな、遠回りになるけど南回りでナボォーリに寄ったりしたいんだよね"
ナボォーリはジギスムント王国の南、ティレニス海に面した王国唯一の自治都市にして国際貿易港だ。
この世界に転生してから15年。内陸の山奥で生まれ育った俺はもう海が見たくて見たくて堪らなかったのだ。それと魚介の料理が。
"魚や海老に蟹に貝をいっぱい食べるのね?いいと思う"
"だろ?"
あと烏賊と蛸と、出来れば雲丹なんかもね。
しかもナボォーリのすぐ近くには火山であるババール山があって、何と温泉もあるんだぜ?
海に、魚介に、温泉!最高じゃないか!
ああ、ナボォーリが楽しみでしょうがない。
ナボォーリへの期待に胸膨らむ俺と、多分それほどではないメル。そんな俺達はラースブルグから王都ジルギットブルグへ向かうところ、俺の極めて個人的な理由で大きく迂回し、南海の港街ナボォーリへ向っている。
エミリーとマリーの顰めっ面が一瞬頭をよぎったけど、俺はこの世界で漸く手に入れた自由を堪能すべく、まだ見ぬ海と火山と港街に思いを馳せたのだった。
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それでは次話もお楽しみに!




