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第38話 それぞれの一ヶ月後

メルに謝り倒して許して貰って仲直り。しかし、あんな魔物だらけな状態の所に猫を放ったらとんでもない事になるじゃん、と思ったけど口には出さなかった。口は災いの元、沈黙は金とも言うしね。


ラースブルグに戻ると早速冒険者ギルドに向かった。ヘルベルト騎士爵領では復興のための手伝いをしたため、何だかんだであの依頼から1ヶ月近くが経過していた。当然その間にいろいろと事態は動いているはずなんだけど、どうなんだろうか?


「おかえり、ホルスト君。流石は私が見込んだだけはあるわね!」


俺が冒険者ギルドに顔を出すと、誰かしら窓口の職員から知らされたのかアンジェリカ姉さんが奥から飛んできて俺をギルドマスターの執務室へと連れて行った。そういえば、アンジェリカ姉さんは窓口担当ではなくなっていて、心なしか着ている服も身に付けているアクセサリーも高そうな物を着けているような…


ギルマスの執務室に通されて綺麗な猫獣人の女子職員が入れてくれた紅茶を一人で喫していると、やがて新たにギルマスに就任したラムズフェルド氏がアンジェリカ姉さんを伴ってやって来た。ラムズフェルド新ギルドマスターは仕立ての良い貴族服に似たギルドの制服に身を包み、胸にはギルマスである事を示すブローチがキラリと光り、既に押しの強い新進気鋭のギルマス然としていた。


俺が長椅子から立ち上がると、アンジェリカ姉さんがその男性を俺に紹介する。


「ホルスト君、こちらが新たに冒険者ギルドラースブルグ支部のギルドマスターに就任されたエドワード・ラムズフェルド様よ」


ラムズフェルド家とはラース辺境伯家の分家の一つで、爵位は子爵だったかな?因みにこのエドワード氏は現ラムズフェルド子爵の弟さんで、ラース辺境伯の側近の一人。


「ホルスト君、この度の君の活躍が無かったら少々危なかった。辺境伯閣下もお喜びだったよ」


新ギルドマスターはそう言ってにこやかな笑顔と共に俺に右手を差し出した。俺にそれを拒む理由は無く、俺達はがっしりと握手を交わした。


〜・〜・〜


ここで新ギルドマスターは俺にこれまでの顛末を説明し、改めて多数あった焦付き案件の達成とヘルベルト騎士爵領での一件について謝意を示した。それと共に俺はこの数年の間にラース辺境伯領で起きていた御家騒動について説明を受けた。


「そもそもはラース辺境伯家の御家騒動と王家における後継者争いとが絡んだ結果起こされた騒動だったんだよ」


エドワード氏によれば以下(箇条書き)の通り。


・ラース辺境伯家は東の隣国であるローメリア帝国への備える要衝として独自の軍備と統帥権を有し、且つ領内での徴兵権、徴税権、立法権、通貨発行権を有する公爵位に相当する大貴族である。


・そのラース辺境伯家には幾つかの分家があり、当代の弟がその一つウォルター男爵家を継いでいた。


・当代の辺境伯と弟のウォルター男爵とは互いに仲が悪く、男爵は自らが辺境伯位を継承出来なかった事に強烈な不満と恨みを抱いていた(らしい)。


・当代は第1王子を王位継承者として支持していた。そこへウォルター男爵が第2王子派から辺境伯位を見返りに支持を求められた。


・そのためウォルター男爵は第2王子派として第2王子派支援のためと自らが兄である当代に対抗するため、冒険者ギルドラースブルグ支部を抱き込んでギルドの委託金や寄子貴族からのギルドへの積み立て金横領を始めた。


・その結果としてゴブリンなどの魔物討伐への補助金が大幅にカットされて討伐依頼が焦付き、辺境伯領内のみならず寄子貴族領内でも各地で魔物が増え、その被害が出始めていた。


・これらの事実は暗部により当代へ報告され、更に秘密裏に調査が入り、第2王子派とウォルター男爵の関与が次第に明らかにされるも、証人が殺害されるなど決め手となる証拠が不足していた。


・ヘルベルト騎士爵家の会計担当をしていた家士の嫁いだ娘とその家族がウォルター男爵の手の者に誘拐され、その家士は脅迫されて公金横領に加担させられていた(後に辺境伯家の暗部により救出される)。


・そうした時に「能力」持ちの俺が焦付き依頼を次々と達成させ、それによってウォルター男爵のお家乗っ取りと公金横領、脅迫、殺人など謀反の証拠確保が進んだ(どうしてだかの説明は無し)。


・一方、冒険者ギルドラースブルグ支部でも当代から副ギルドマスターとして送り込まれたエドワード・ラムズフェルド氏はギルド内でギルドマスターの公金横領の証拠を集めていたが、ギルドマスターの妨害によって充分ではなかった。


・証人となる寄子貴族家の会計担当者などが次々と殺害される中、ヘルベルト騎士爵家の会計担当家士は領地がど田舎故にウォルター男爵も手出しが出来ず、ラムズフェルド氏の補佐として一緒にギルドへ送り込まれたアンジェリカ姉さんが俺を使ってヘルベルト騎士爵家会計担当家士の身柄は確保が提案されて実行される。


「長くなったが、そうした次第だ。ホルスト君の活躍で最終的な証拠と証人が揃った。それによってウォルター男爵は捕らえられて即決裁判で連座した連中共々既に処刑されたよ」


前世で読んだとあるスペースオペラで主人公である黒髪の提督が「私にとって政治権力とは下水処理場のようなもの」というセリフがあった。そのこころは「無ければ困るが自分から近づきたいとは思わない」。


この世界で政治闘争に負けるという事は死を意味する。しかも本人だけじゃ無く周りも巻き込んでの死だ。前世の故国の隣の大陸には族滅なんて言葉もあったしな。日本にだって江戸時代までは連座制なんてものもあった。まぁ、日本の場合は死罪は名誉を保ちつつも最小限、しかも後に本人も遺族も名誉回復の機会があっただけ他に比べてマシではあったと思うけど。


処刑されたウォルター男爵とやらがどんな人物だったのかは知らない。ギルドマスターを抱き込んで公金を横領した手際は良かったのでそこそこ有能ではあったかもしれない。しかし、少なくとも自らの死を賭してまで兄から全てを奪おうという気概のある人物ではなかっただろう。第2王子派とやらに上手い事唆された、というところではなかったろうか?


恐らく、第2王子派はウォルター男爵の支持なんて本気で必要としていなかっただろう。彼等にとって、ただウォルター男爵がラース辺境伯家を引っ掻き回して中央の政治から当主の目を逸らす事が出来ればそれで良く、更にあわよくばラース辺境伯の力を幾らか削げればそれで良かった。


誰が考えた計画か。そんな物に易々と引っかかって失敗し、周りを巻き込んで処刑されるとか、何ともね。やっぱり俺も自分からは近づきたくは無いかな。






いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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