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第35話 公金横領したって本当ですか?

4体のゴブリンキングと1体のコボルトキングを打ち倒した。俺は館の兵と残った魔物を掃討し、そうしてヘルベルト騎士爵領攻防戦は終わった。


これによって俺の受けた依頼も達成出来た訳だけど、俺が受けた依頼はゴブリン討伐だけじゃなく、実はもう一つ別に有ったりする。


その前に俺はヘルベルト騎士爵に会い、多分、いや確実に詰められる事となるだろう。どうして冒険者ギルドは何ヶ月も依頼を放置したのか?と。


崩れかけた正門が内から開けられると、俺は騎士爵家の家士に案内されてヘルベルト騎士爵に目通りするため館内に通された。


館内は領内本村の村人達を収容して、どこを見ても老若男女の村人達で溢れていた。饐えた臭いが満ちて、仕方のない事とはいえ衛生環境は良い物とは言えない。怪我人も多く、戦死者の遺体は端に寄せられて白い布がかけられていた。


村人達の俺を見る目つきは複雑な物が窺えた。館が魔物の群れによって落とされる寸前だったところにたった一人で現れ、たった一人で魔物の群れを殲滅した命の恩人。だけど何でもっと早く来てくれなかったの?もっと早く来てくれたならこんな事にはならなかったのに… そんな思いが俺に向けられている。


俺は誰も引き受けない低報酬な依頼を引き受けてきた。それは故郷への訣別と感謝の意味で冒険者ギルドの尻拭いをしている訳だけど、その都度感謝されたり、遅いだ何だと罵声を浴びせられたして来ている。感謝して欲しいなんて思ってはいないけど、罵られるとはぁ何だかなぁとは思う。


ゴブリン討伐も数多くこなしてきている。しかし、ここまで魔物が多く、しかも進化した上位種が複数存在したケースは初めてだ。それを一人でゴブリン討伐の報酬で殲滅させたのだ。だから非難される謂れは無い。まぁ、口に出さないだけこの村の人々のモラルは高いと言えるのかもしれないが。


館内の執務室に通されると、早速ヘルベルト騎士爵が現れる。その疲労の影濃い表情には先程まで見てきた多くの村人達と同様、俺に対する複雑な感情が見て取れた。


「ホルスト、まずは館を魔物の群れから領民を救ってくれた事にまずは礼を言わせてくれ。誠にありがとう」


「いえ、私はギルドからの討伐依頼で来たまでですから」


俺がそう述べると、ヘルベルト騎士爵は下げていた頭を上げ、それまでの恭しさを一変させて猛然と詰めてきた。


「そう、依頼だ。礼とは別にお前には言いたい事がある。ゴブリン討伐の依頼を出してから半年だ。何故ギルドは半年も放置した?ゴブリンは放置すれば時間と共に増える事はわかっていただろうが!」


憤怒の表情で俺に詰めるヘルベルト騎士爵。周りに控える家士達もその影響か俺を責めるように睨んでいる。


「閣下、私は低報酬故に引き受け手の無かった閣下からの討伐依頼を損益覚悟で引き受けたに過ぎません。問題の宿痾は冒険者ギルドにあると承知して下さい」


「低報酬とはどういう事だ?儂は50万ギールンを計上しているのだぞ?それにギルドからの補助金上乗せがあるはずだ」


この世界には危険な野生動物がわんさかと存在する。そしてその他にも魔物と総称される更には危険な謎生物が存在するのだ。既存の動植物に類似した魔物もいれば、知能の高い人型の魔物もいる。何れもヒト族だけでなく、魔族、獣人族、精霊族などこの世界に文化・文明を築いている知的生命体にとって危険この上無い存在だ。


魔物は村々で、街道で人々を襲い流通に多大な被害を齎す。特に繁殖力旺盛なゴブリン、コボルト、トロール、オークなどは予防的に見つけ次第殺し、或いは群れがまだ小さな内に皆殺しにするのが鉄則である。


他の国でもそうだけど、我がジギスムント王国では今まで国や領主が兵力を出して魔物を討伐してきた。しかしそれだけでは次第に手が足りなくなり、最近では小回りが効かなくて融通も効かない騎士団などよりも冒険者に依頼を出す事が多くなっている。


国や裕福な領主は冒険者に利益が上がる報酬を出す事が出来るけど、数多い中小領主や村々は高額な報酬を捻出する事が出来ない。そのためそうした引き受け手の無い少額報酬依頼に上乗せする補助金があるのだ。


それは国、領主、商業ギルドが資金を出して基金を作り、それを冒険者ギルドに信託して魔物討伐依頼毎に信託基金から補助金を報酬に上乗せ。冒険者が魔物討伐依頼を引き受けても利益が出るようにしていた。


なので本来はヘルベルト騎士爵が言った通り、例えヘルベルト騎士爵の報酬額が少なかったとしても冒険者ギルドからの補助金が上乗せされるので引き受け手の冒険者がいないという事は無いはずであったのだ。


「恐れながら申し上げます。ここ3年に渡りヘルベルト騎士爵家から冒険者ギルドへの基金負担金が全く支払われていません」


俺はヘルベルト騎士爵にギルドの副ギルドマスターから預かっていた騎士爵宛ての書状を手渡した。


すると、俺の発言とヘルベルト騎士爵宛ての書状にギョッとなり挙動不審となった家士がいた。騎士爵が書状を読み始めると観念したのか、なんと短剣を抜き自らの頸部に突き立てて自害を図ろうとした。


いやいやいやいや、何しようとしちゃってるの?あなたに死なれちゃ全てが台無しになってしまう。俺はすかさず家士が持つ短剣の刃を掴むと8番目の昭和ライダーの能力「ブレイク」で短剣の刃を粉々にして家士を取り押さえた。


「ムスダン、これはどういう事だ?何故3年に渡り負担金が支払われていない?この書状によれば経理担当のお前が横領しているとあるが、申し開きはあるか?」


ムスダンと呼ばれた初老の家士は観念したのか俺に取り押さえられながら項垂れ、そして口を開いた。


「閣下、申し訳ございません。全て事実でございます」


「何故だ?お前は長年儂を、ヘルベルト騎士爵家を支えてくれていたではないか?」


ムスダンは騎士爵の問いに答えず黙秘を通す。このままでは埒があかないので、俺は種明かしをする事にした。書状にはちゃんとムスダン氏が心ならずも不正に手を染めざるを得なかった理由も書いてあるはずなんだけど、ヘルベルト騎士爵はちゃんと読んでないようだな。


「閣下、ムスダン氏はギルドへの負担金を横領するように脅迫されていたのです。その要求に従わなければ嫁ぎ先の娘さんとお孫さんを殺すぞ、と」

 

そう、これは単に討伐依頼の引き受け手がなかったためゴブリン増えて襲って来ましたレベルの話ではなく、冒険者ギルドラースブルグ支部どころかラース辺境伯家、更には王族も絡んだ国を揺るがす大事件の一端なのであった。






いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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