第34話 喰らえ、ドラゴンブレス!
俺が放った斬撃で配下を全滅させられたゴブリンキング(Aとする)は、一瞬呆然とした表情を浮かべたけど、次いで事態を理解したのか、怒り狂った雄叫びを上げた。
まぁ、気持ちはわかる。ゴブリンキングAは館の正門破壊突破という重要なパートを上長より任され、正に目的達成を目前にしていた。それによる上長から更なる信頼を得て、これから上昇する集団内での地位と強化される自分の権力。それらが突然現れた闖入者に一瞬にしてびっくり返されて無にされたのだから。奴の立場ならば怒り狂って当然だろう。なんか目尻に涙っぽい光が見えたような…
ゴブリンキングAは何やら吠えながら俺に向かって来たかと思うと、持っていた棍棒を横薙ぐ。俺は軽く飛び上がってこれを避けると、そのまま空中から右後ろ回し蹴りをゴブリンキングAに放った。
そして俺の蹴りがゴブリンキングAの顔面にヒットすると、奴の頭部は首からもぎ取られるように千切る。そしてゴブリンキングAの頚部断面から心臓が送り出す大量の青い血液が噴水のように噴出すると、そのまま丸太のようにバタンと地面に倒れた。
俺はゴブリンキングAの生首にセイバーをブッ刺すと、正門の上から俺とゴブリンキングAの戦闘を固唾を飲んで見ていた騎士爵館の兵達に向けて高々と掲げて見せた。
正門の門扉は破られる寸前だった。しかし、騎士爵館の兵達は掲げられたゴブリンキングAの生首を見て絶望的な状況が寸前で回避された事を悟り、歓声でもって応じた。
ウオオオオ〜!!
「誰だか知らないがゴブリンキングを倒したぞ!」
「あれは誰なんだ?」
「誰だっていい。助かったんだ!」
すると、正門の上から俺に誰何の声がかけられた。
「どなたか知らぬがご助力かたじけない。して、貴公は何者なるや?」
それは使い込まれた革鎧を着込んだ髭で顔の下半分が覆われた壮年の武者だった。頭に被った二本角の独特の兜と相まって、その姿はさながらバイキングのようだ。
俺はこの人を知っている。それは誰あろう、ヘルベルト騎士爵その人だ。
「閣下、ホルストです。冒険者ギルドからのゴブリン討伐依頼を受けて参りました」
「何とホルストか!ギルドの討伐依頼だと?遅い、遅すぎるぞ!奴等一体今まで何していやがったんだ!」
「閣下、ギルドの件は後程伺います。その前に私が館を囲む魔物を殲滅します」
ヘルベルト騎士爵は正門の上から何やら大声で言っていたようだけどそこは無視して、まだ残り4体いるゴブリンキングとコボルトキングを倒しに動く。
〜・〜・〜
ゴブリンキングAを倒した後、他のゴブリンキングが魔物を率いて俺を殺さんと襲いかかって来た。数多の魔物といちいちやりあっていたら時間と労力がかかってしょうがない。そうしてゴブリンキングは魔物を俺に仕掛ける事により俺の疲労や魔力切れを狙っているのだろう。
俺は左手にセイバーを持ち直し、ラジャータをセイバーから竜頭に変形させる。これは3番目の平成ライダーが使う装備だ。
「ラジャータ、ドラゴンヘッドアーム!」
左手に持っていたセイバーソードは竜の頭を持つドラゴンヘッドアームに変形し、俺の左腕と一体化した。そしてドラゴンヘッドアームに魔力を込めると竜は口を開き、そのまま俺を殺さんと殺到する魔物の群れに向けて火焔を放射した。
「喰らえ、ドラゴンブレス!」
ドラゴンフヘッドアームから放たれた炎の奔流は数百体に及ぶ魔物共を一瞬にして燃やして尽くした。炎が引いた後には魔物の骨すら残らず、焦土が余熱を孕んでゆらゆらと蜃気楼を作り出している。
ここでじっとしてはいられない。これで魔物が怖気付いて逃げられたりしたら面倒くさい事となる。逃げた先でまた増えられたりするので、ここでまとめて屠るのがベストなのだ。
俺は高く飛び上がると手近にいたコボルトキングに一号ライダーのキックを見舞ってやった。コボルトキングの体幹部は上空からの重力と質量と魔力が相まった必殺のキックを受けて四散。
続けて加速してゴブリンキングBの胴を右手の手刀で斬り払って分断する。これは9番目の昭和ライダーの能力だ。
「ギャー!!」
胴体を分断されたゴブリンキングBは絶叫し、それでもすぐに絶命しない。俺は右足に魔力を込めてゴブリンキングBの頚部を踏み抜いた。
これで残りのゴブリンキングは2体だ。
ゴブリンキングCはゴブリンキングBが倒された様を見て何と逃走を図った。上位種になろうが魔物に敵前逃亡を躊躇する倫理も軍法も関係ない。形勢が不利だと悟れば即逃亡、それはある意味正しい判断と言えよう。
勿論、俺はゴブリンキングCの逃亡を見逃す筈もなく、ドラゴンヘッドアームから先程よりも熱量を下げた炎弾をその背部に向けて放出。炎弾が背部に命中したゴブリンキングCの身体は爆散した。
最後に残ったゴブリンキングD。これがヘルベルト騎士爵領を襲った魔物の群れの統率者だろう。他のゴブリンキングよりも更には一回り体が大きい。
ゴブリンキングDはゴブリンキングCのように逃げるという選択はせず、黙ったまま俺と対峙する。こいつは統率者だけに肝が据わっているようだ。雄叫びを上げる事もなく身構えた。
こいつも消し炭にしてやってもよかったのだけど、魔物ながらもゴブリンキングDは群れの統率者としての矜持があるのだろう、一騎討ちで雌雄を決っしようという姿勢に俺も一戦士として応じようと思った。
ゴブリンキングDは何も得物は持たず無手。俺は左腕のドラゴンヘッドアームを解除してラジャータを収納し、ゴブリンキングDに合わせて無手となる。だけど、相手は3m近く、俺は180cm弱という身長差がある。流石にゴブリンキングDとまともに殴り合う事はしない。
俺はゴブリンキングDを仕止めるべく、9番目の昭和ライダーの能力を解放する。9番目の昭和ライダーはライダーにして拳士。
ゴブリンキングDは先手必勝とばかりに駆け出すと、俺に向かって猛烈な打突の連打を繰り出した。これは単なる力技ではなく、スピードと体重が乗った一発一発が実に重く破壊力に満ちたパンチの連打で、一発でもヒットしたら噂に聞くアプロス教団の魔装僧兵もタダでは済まないだろう。
あ、因みに魔装僧兵っていうのは強靭さと身体強化の魔法が付与された鎧を着込んだアプロス教団の僧兵で、やたら打たれ強いらしい。
俺はゴブリンキングDが打ち出す連打を全て躱し、捌くと奴の内懐に入り込んで鳩尾に右アッパーをくれてやった。
「ゴフッ」
俺のパンチはただのパンチではない。これはゴブリンキングDを屠るべく解放した9番目の昭和ライダーの拳だ。その破壊力は確実にゴブリンキングDの分厚い腹筋を貫いて内臓に致命的なダメージを与えている。
俺の右アッパーを喰らったゴブリンキングDは前のめりになり、そのまま倒れるかと思いきや、吐血しながらも両足を踏ん張って上体を起こし再び身構えた。う〜ん、ここまでされるとこいつをこのまま殺すのは実に惜しい。テイムしてカプセルに収容できたらどれだけ役に立ってくれるだろうか。
だけど、そんな術は無いのでそこは諦め、俺はジャンプして高く飛び上がると空中で身体を回転させ、錐揉み状に高速に回転しながらゴブリンキングDに急降下のキックを放った。
身構えたゴブリンキングDは、内臓のダメージ故に身動きが取れず、俺の高速回転錐揉みキックを受けて爆砕した。
この戦いを見た館の兵達からは雄叫びの大歓声が送られる。最大の脅威が消失したチャンスに正門からヘルベルト騎士爵のどら声が響く。
「今だ、もの共、残敵を掃討しろ!」
ヘルベルト騎士爵の命令により館からは槍や剣を持った家士が村人達が繰り出し、今までの恨みとばかりに次々と魔物を討ち取っていった。
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それでは次話もお楽しみに!




