表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/144

第28話 父よ!

ヴィンター騎士爵家の馬車は往路と同じくラース辺境伯領から2日かかって故郷の騎士爵領に帰り着いた。


俺はその足で父の執務室へ赴き、エミリーとマリーの護衛任務達成、領都であったエミリーとマリーが元服の儀でそれぞれ「看破」と「剣聖」の能力を授かった件、勇者によるマリー連れ去りを実力で阻止した件、俺の貴族籍離脱手続きが済んだ件について報告した。


父は報告が進むにつれ、特に勇者の下り辺りから苦虫を噛み潰したような表情になったけど、マリーの連れ去りを阻止した事とマリーを勇者と聖女の権限での王立学院入学を確約させた事については感謝された。


そして、俺とマリーの婚約解消についても報告する。


「それはお前には残念だが、仕方のない事だな」


「まぁ、そうだね。住む世界が違っちゃうからね」



そうして一連の報告が済み、俺は父にこれから出立する事を告げた。


「じゃあ父さん、俺、もう行くよ。今まで有難う御座いました」


「待て。行くって、どこへ行くんだ?」


俺が今まで育てて貰った感謝と別れの挨拶をすると、父は不可解そうに尋ねた。


「俺はもう貴族でもなければ、この家の者でもないから。厄介者は出て行くさ。あちこち寄り道しながら王都に行って冒険者をするよ」


「ラースブルグから戻ったばかりじゃないか。もうじき日も暮れ、山には魔獣だって出る。せめて明日にしたらどうだ?」


父は俺を引き留めにかかった。


「今まで俺を追い出す算段をつけてたじゃないか。今になってそういう中途半端な引き留めはやめてくれよ。早いか遅いかの違いしかない。決心が鈍るから行くよ。じゃあ父さん、いつまでも元気で」


俺は今度こそ父に別れの挨拶を述べた。そして踵を返し執務室を出ようとしたけど、父は執務机から立ち上がると、俺の前に立ち塞がった。


「ホルスト、お前には悪いことしたと思っている。2年前の元服の儀での事も辺境伯様は何らお前には非が無いと仰っていた。だが、俺は他の寄子貴族との軋轢を恐れ、お前の貴族としての道を犠牲にした」


それは俺もわかっていた事であり、仕方のない事だと納得もしている。俺はこの家にとっては後継のスペアのスペアなのだ。スペアならまだしも、俺の存在により自家に不利益を被るならば切り捨ても止むを得ない。それが封建制下の貴族というものだ。


「そして、貴族社会に見切りをつけて早く自立しようとしていたお前を、結局2年も飼い殺しにした。これもヴィンター家に籍を残したままのお前がそのまま音信不通になる事を俺が恐れたからだった。それでいてお前がここに居つかないよう家臣や領民達に悪い噂を広めた。俺はお前の父である事よりもヴィンター家の当主である事を優先し、お前には辛い思いをさせてしまった。本当に済まなかった」


父はそう言うと深々と俺に頭を下げた。俺が憶えている限り、父が誰かに頭を下げて謝るなんて今まで無かった事だ。


「父さん、貴族家の当主が息子に頭なんか下げちゃだめだよ。元服の儀であんな事が無かったとしても、結局俺はこの家を出なくっちゃならなかったんだから。本当に早いか遅いかの違いなんだよ。それじゃあ、もう行くからさ」


父は黙ってそのまま俺を抱きしめた。そして俺の背中をばんばんと叩き、


「立派になったな。お前なら大丈夫だ。しっかりな」


と言って俺を送りだした。


〜・〜・〜


執務室を出た俺は廊下で待っていたメルを抱き上げる。


"ねぇ、あんな別れ方で良かったの?"


メルが心配そうに尋ねてきた。


"いいんだよ。ここはそういう世界だろ?"


"…"


メルはまだ何か言いたげだったけど、館の外門の前に剣を持つ人影があったため念話を中断した。


「ホルスト、あなた、このまま出て行く気?」


それが誰かと言えば、俺の母親、アメリア・ヴィンターだった。


それが単に俺を見送りに来たのではない事は、その左手に持つ母愛用の両手剣を見れば一目瞭然だ。


「母さん、見送りにしちゃ物騒だね」


「可愛い我が子の旅立ちを見送らない母親はいないわ。ちゃんと餞別も用意してるから受け取りなさい」


その餞別とやらが路銀などではないのも丸分かりだ。何でって?そりゃあ、あの母だからね。


「ちゃんとあなたが冒険者としてやって行けるか、母親の私が直々に試してあげる」


いや、これほど迷惑な餞別は無いだろう。しかし言い出したら聞かない母だ。しかも、かつては金級冒険者にして「剣士」の能力持ち。剣技だけなら俺も敵わないかもしれない。


"メル、俺ここで死ぬかも"


"えぇ!だってホルストのお母さんでしょ?"


"そういう母親なんだよ"


メルと念話を交わしている間にも、母は鞘から剣を抜き放ち中段に構えると、問答無用とばかりに横薙ぎに斬り付けてきた。


俺は咄嗟にバックステップで斬撃を避けると、間を置かず突きの打突が迫る。


俺はすかさず右に半身を切る。そして左下段払いで突きの打突を捌き、そのまま母の顔面目掛けて左裏拳を見舞うも母が後方へ退いたため空振りに終わった。


「ホルスト、本気で来なさい!」


母の斬撃には一切の迷いが無く、甘く見ていたら俺は切り裂かれ、突き刺されて死んでいただろう。


剣技は明らかに母の方が上。このままではいずれ俺の方が手詰まりになるのは必定。となれば仕方がない。「アクションヒーロー」を使うか。


"メル、ちょっと離れていてくれるか?"


"わかったわ。しっかりね"


背中にしがみついていたメルが降りると、俺はすぐに「アクションヒーロー」の能力で武器を召喚する。


「ラジャータ!」


忽ち目の前の虚空に現れる銀色に輝く棍。俺はラジャータを掴むと、更にラジャータを大振りな剣に変形させる。


「ラジャータ、ブレイド!」


これは5番目の平成ライダーの能力だ。


俺がラジャータブレイドを八相に構えると、母は待ってましたとばかりに声を上げる。


「遂に出したわね。それがあなたの能力「アクションヒーロー」?」


「その一端だけど、うおぅ!」


母は俺に全てを言わせず、下段から剣を振りかぶると、鋭い気合いと共に俺に斬りかかった。


心技体の一致したその渾身の斬撃はオーガすら一刀の元に真っ二つにし得るほどの凄まじさ。だけど俺もそれ以前に加速して母の内懐に入り、ブレイドを母の左脇腹に当てていた。


いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ