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第27話 とある夕餉の風景

ラース辺境伯領における最後の村での事。俺は村長に宿泊の挨拶に行き、俺達は村のゲストハウスに泊まる。


このゲストハウスは街道を行き来するラース辺境伯家や寄子貴族がヴィンター騎士爵領に赴く際宿泊するための施設だ。旅人や商人、冒険者などは村内の宿屋に泊まったり、村営のキャラバンサライで野宿する事となる。


俺達ヴィンター騎士爵家の者は年間の施設使用料を村に払っているので宿泊に関しては基本無料であり、薪水と飼葉の提供もある。


俺達一行はエミリーとマリー、護衛の俺に御者の家士ワルター。


食事の準備を俺がしている間に村から薪と飼葉が届けられる。ワルターには馬の世話に専念して貰う。


俺は竈門に火を入れて大鍋に湯を沸かすと、領都で買った腸詰と燻製肉をぶつ切りにして入れる。更に村で買い求めた蕪と芋を入れて塩と大蒜、生姜で味を整えてスープが出来上がる。


黒パンには炙ったチーズを乗せ、乾燥果物を練り込んで焼いた菓子パンも付けて夕食メニューの出来上がり。


「お兄さまって料理が出来るのね。知らなかった」


エミリーが感心したような声を上げた。


「まぁ、冒険者だからな。それに前世でも好きで料理していたし」


「…ねぇ、前世のお兄さまは何だったの?」


ちょっと遠慮がちにエミリーが尋ねた。


「学生だったよ。歴史を研究していたんだ。俺が生きていた国は豊かな国でね、学生は勉学の他に色んな活動をしていたな」


「兄さまはどんな活動をしていたんです

か?」


マリーも会話に加わり、3人で夕食をテーブルに並べる。


「俺はね、芝居のような活動をしていたんだ」


「お芝居ですか?」


「そう。剣術とか格闘術とか派手なアクションを取り入れた正義の騎士や勇者が悪者をやっつける芝居でね。子供達には大人気だったよ。そうして得たお金を貧しく病気になった子供達の治療費にしたり。そんな活動をしていた」


「ホルスト兄さまは神殿の聖者みたいですね」


こちらの世界も御多分に洩れず宗教界は腐敗している者が多い。そうした宗教界にあって宗派に捉われず、貧者に施しを行う活動をする者達を世間では聖者と呼んでいる。


「お兄さまがいた世界ってどんな世界だったの?」


遂にこの質問が来たか。当たり障りの無い程度に話しておこう。


「俺がいた世界はね、魔法が発達していない、科学が発達した世界だったよ」


「「科学?」」


「何というかな、現象を解明してそこから得られた事実を技術に応用した文明って感じかな。一言じゃ言えないけど、例えば馬がなくても機械で走る車があった。風や漕ぎ手が無くても進む鉄の大船や空飛ぶ乗り物もあったし、空を超えて星まで行く事も出来た。大きな街一つを消し去る兵器なんてのもあった」


まぁ、言い出したらキリが無いのだけど、エミリーもマリーもほぇ〜と呆けた表情になっている。


「ホルストお兄さまはそうした世界からこの世界に生まれ変わって、たった一人で… それなのにお父様もお母様もお兄さまを厄介者みたいに扱って、しかも追い出すとか、酷すぎる」


エミリーは突然両親への憤りを露わにした。


「エミリー、それは仕方ないんだよ。貴族は家を残さなくてはならないんだ。家臣や領民への責任もある。親である事よりも貴族である事が求められるんだ。それに俺は魔法も使えれば「能力」もある。冒険者として十分やっていけるよ。そもそも前世の自由な社会を知ってるだけに封建的な貴族社会で生きるとか、ぞっとしないよ」


俺はそう言って態と大袈裟に肩を竦めてみせたけど、エミリーもマリーも笑わなかった。


「でもお兄さまは家臣や領民達の事までそうやって心を砕いてますけど、その家臣や領民達がお兄さまの事を役立たずだの厄介者だの根拠無く噂して蔑んでいるんですよ」


「知ってるよ。父さんの指示でジョルジュさんが広めてるんだろ?」


「父がごめんなさい、ホルスト兄さま」


下を向いて聞いていたマリーが途端に叫ぶように謝る。


「だから余計に俺の居場所はここには無いのさ。俺は俺の力でこの世界に自分の居場所を作るよ。多分、そのために俺には力があるのだろうからな」


スープも煮えて味見も済ませた。皿も並べて終わったから話を打ち切ってワルターを呼びに行かないとな。


「お兄さま、お願いがあります」


「何だ?」


「はい。私とマリーは来年から王都の王立学院に入学します。お兄さまは冒険者として王都を目指すのでしょう?」


「まぁ、そうだね。取り敢えず王都を活動の拠点にしようかと思ってる」


「だったら王立学院に私とマリーに会いに来て欲しいの」


エミリーの横でマリーもうんうんと力強く頷いている。


「でもな、俺はこれから平民になるんだ。小なりとは言え貴族の娘と勇者パーティのメンバーとは身分が違うんだよ。そう簡単に会いには行けないんじゃないか?」


「貴族と言ってもたかだか騎士爵の娘でしょ!」

「私なんか騎士爵のそのまた家来の娘です。それにまだ勇者パーティには入っていませんから!」


会いに行くのを渋った俺に二人は猛然と食ってかかった。


「お兄さま!」

「兄さま!」


「わかったよ。どうにかして会いに行くから」


この答えで二人にはどうにか納得して貰った。


〜・〜・〜


馬屋で馬に飼葉を与え、ブラッシングしていた家士のワルターを呼び、4人のささやかな晩餐を始める。


家士のワルターは19歳の若い男だけに旺盛な食欲があり、俺が作った具沢山スープを「俺の母ちゃんのより美味いっすよ!」と3杯もおかわりをした。


いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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