第25話 時には誰かを許す事を
勇者パーティは要件が済むと、彼等も多忙なのだろう、啄木亭から引き上げて行った。別れ際、俺は聖女ミシェルにマリーの件の念押しを忘れない。
「マリーさんの事はこのミシェル・メルマルクが責任をもって当たらせていただきます。ご安心を」
勇者パーティが引き上げた食堂は昼時となり、その後あっという間に昼食を求める客で席は埋まった。
〜・〜・〜
明日は再びエミリーとマリーを実家まで護衛して領地へと戻る。そして、父に依頼完了を報告すればそれで俺と実家との縁は切れ、俺とマリーの縁も切れるだろう。
昼食後、自室のベッドで横になりそんな事を考えていると、メルは美少女バージョンとなってベッドの縁に腰掛け、俺の顔を覗き込んだ。メルのプラチナ色の髪が俺の顔に僅かに触れる。
「ホルスト、さっき勇者に強さは優しさだって言ったじゃない?」
「言ったね」
「ホルストは「アクションヒーロー」があって強いし、「能力」が無くても魔法も使えて格闘術や剣術にってかなり強いわよね?」
「まぁ、そうだね」
「じゃあ、ホルストはその強さの分だけ優しいって事よね?」
「…何が言いたい?」
メルは俺を覗き込んでいた格好から座り直すと、前を向いて続けた。
「大した事じゃないよ。強くて優しいなら許すって事も強さであり優しさじゃないのかなって」
「マリーを許せって事か?」
「誰だって失敗はするものでしょ?ましてあの子はまだ13歳になったばかりなんだし。「能力」の影響で一時的におかしくなっちゃっただけなんだから」
メルは横になったままの俺の髪を撫でながらそう言った。うぅ、それ反則だろぅ。
まぁ、誰だって失敗はする。マリーの人生は始まったばかりだ。ましてや、マリーは剣聖として数奇な人生を運命づけられている。始まりのここで俺が潰していい訳じゃない。
「わかったよ、マリーを許すよ」
メルは俺の言葉を聞くと嬉しそうに微笑む。本人は否定するけど、それはリアル女神の微笑みだ。
「はい、良くできました」と言ってメルは身を屈めると、俺の額にキスをした。メルのキスは柔らかく、暖かく、優しさに満ちていた。
「こ、これは親愛のキスだからね。勘違いしちゃダメだから」
そう恥ずかしがるメルもとても可愛い。
「いや、無理無理。もう勘違いしちゃったし。俺からもメルに熱いキッスを、」
俺がそう言って身を起こしてメルに抱き着く振りをすると
「だから勘違いしないでって、もう!すぐ調子に乗るんだから、このスケベニンゲン!」
と、メルは怒って再び白猫の姿になると、ベッドの下に隠れてしまった。
「でもなぁ、」
俺は誰にともなく、独り言のように呟く。
「俺、これで前世からも含めて4人もの女の子に裏切られたんだなぁって」
前世では高校生の時から大学3年にかけて3人の女の子と付き合った。そして彼女達は皆、俺と付き合いながら二股していたり、浮気していたりしていたのだ。実際に浮気した彼女に浮気した理由を尋ねてもみた。俺は見た目がいいし、学業も運動も出来る自慢の彼氏だという。だったら何で浮気を?と思ったけど、俺は彼氏として見せびらかすには良くても一緒にいて面白くはないのだそうだ。
「つまりはトロフィー彼氏って奴で、彼女達は俺を恋人として周りに自慢して自尊心を満たし、別の男でその他を満たしていたんだ」
メルからは何も反応は無い。別に同情して欲しい訳じゃないからいいのだけど。
「いいように利用されていたと思うよ。マリーも俺を田舎から抜け出すために利用していたんだろうな」
「…」
メルはベッドの下から顔だけ出すと、俺を見上げた。
「女って怖いな。人の本心なんて知るもんじゃない」
本当にそう思う。俺はもう恋愛とか出来ないかもしれないけど、この世界で一人生き行くのならその方がいいのかもしれない。好きな女を疑いながら生きるのも辛いものだろう。
それっきり黙り俺はベッドで仰向けになると、メルがベッドによじ登り、俺の胸の上に乗って来た。そしてじっと俺の顔を見たかと思うと、そのまま俺の顔に頬擦りをした。慰めてくれているのかもしれないけど、今はメルのそうした優しさがとても嬉しかった。
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それでは次話もお楽しみに!




