第19話 聖女をブチ切れさせちゃった
「これから魔王と戦おうって奴が口で言い負かされたくらいで泣いてどうする?しかも、それが言い過ぎって。図星だからだろ?言い過ぎじゃなくて」
聖女は俺への視線を更に厳しいものにすると、猛然と抗議する。
「だからといってそれをあなたに言われる謂れはありません。これは私達パーティの問題です。他人は口を出さないで下さい!」
「いや、俺はお前らのせいで婚約者を失い、その婚約者は勇者に唆されて俺を殺しにかかってきた。俺はもう立派なお前らの被害者だ。それに勇者パーティの出来不出来は全世界の人々に影響を与える。お前らの間抜けはお前らだけの問題じゃない」
俺を睨んだまま言葉に詰まる聖女。しかし、俺は追及を緩めない。
「大体、お前のその姿勢こそがこのパーティの大問題だ」
黙ったままでいた聖女だったが、今の言葉には我を忘れたように取り乱して再び食ってかかる。
「私の何が問題だって言うんですか?私はこのパーティのために何でも一人で一生懸命頑張っているのに!」
「だから、それだよ。私がみんなのために何でもやっちゃうというそれだ」
聖女は抱き締めていた弓聖エルフ女を放り出すと(酷っ!)、身を乗り出すように迫る。
「だってしょうがないじゃないですか!勇者パーティなんて言っても誰も何もやらないんですよ?勇者は世間知らずの俺様我儘お坊ちゃんだし、弓聖は我関せずで何もしないし、盾聖は何もしないくせに後から偉そうな事を無神経に言ってくるし!サポーターが付く訳じゃないし、私がこのパーティを仕切らなくて他に誰がやるっていうんですか?」
うん、随分とこの聖女さんパーティメンバーに不満が溜まっていたようだ。
「じゃあ、その事についてパーティメンバーや教団の担当者なんかと話し合ったのか?」
「え?いえ。何となく流れ、で?」
いや、それじゃダメだろう…
「誰もやらないのら私がやる、その志は立派だ。だけどそれが他のメンバーが更に何もやらなくなる原因になっているんじゃないか?」
「…そう、かも、しれません」
聖女は俺に向けていた視線を落として俯くとそう小声で呟いた。この責任感と他者への思いやり。この勇者パーティの中では聖女が最も信用出来そうだ。マリーを任せるのはこの娘しかいないな。
「お前はメンバーと信頼出来る教団の幹部も交えて一度話し合え。このままじゃいずれお前自身が壊れてしまうぞ?」
「…」
俯いたまま黙ってしまったけど、何かチラチラこっちを見てるな。まぁ、気付かないフリするけど。
そして、こいつだ。
「おい、人攫いのダメ勇者」
「…」
今までの遣り取りを聞いていたのか、下手な事は言わないようだ。
「お前、本当に勇者なのか?」
「な!当たり前だろう!僕は「勇者」の能力を授かったんだから」
「それはお前が「勇者」の能力を授かったという事であって、お前が勇者になった訳じゃない」
「? どういう事だ?」
やっぱりこいつは何もわかっちゃいない。ここは俺がこいつに勇者(=ヒーロー)とは何か、どんな存在か、何をすべきかを教育してやらなければなるまい。
「お前に問う。勇者とはいかなる存在だ?」
「勇者とは、それは魔王を倒す者だ」
「何のために?」
「え、何のって、魔王の脅威から人々を守るためだ」
「魔王の脅威から人々を守る、それはいい。だけど、お前はそのために何をしたのか?」
「何って、こうして魔王を倒すためにパーティメンバーを集めているじゃないか!」
何故か胸を張っている。本気でそう思っているのか。はぁ… いや、逆に考えよう。その方が教育し甲斐があるというものだ。
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それでは次話もお楽しみに!




