第15話 剣聖
エミリーとマリーの元服の儀が行われるのは明後日。今日はちょっとした準備があるだけで、基本フリーだ。
「お兄さま、今日、勇者様が大通りから辺境伯様のお城に入られるんだって。私達見に行くから着いてきて?」
「えぇっ、何で俺まで?」
折角ゆっくり出来る貴重な時間を勇者見物で潰したくないのだけど。
「だってお兄さまは私とマリーの護衛でしょ?だったら着いて来て守ってくれなきゃ」
うっ、正論だ。俺は二人の引率者であると同時に冒険者として二人を護衛しなければならないのだった。
「ちっ、わかったよ」
「舌打ちしない!」
〜・〜・〜
城壁の門からラースブルグを貫く表通り、その沿道は勇者一行を一眼見ようと集まった人々で埋め尽くされ、ごった返していた。
俺は肩にメルを乗せ、エミリーとマリーの手を引いて人ごみを掻き分けて最前列に割り込んだ。この世界は遠慮していてはダメなのだ。
城門の方から歓声が聞こえて来ると、やがて勇者一行が姿を現した。
先頭ほ一行を先導する辺境伯家の騎士。少し間があって白馬に跨る勇者と思しき若い男が続く。
その男、歳の頃は20歳に満たないくらいの若者で、髪は短く揃えた金髪。青い瞳のイケメンで、なんか笑顔で周りに手なんか降っていやがる。腰に差しているのは聖剣って奴だろうか。
勇者の後に続くのは彫りの深い厳つい顔でやたらガタイの良い男だ。鈍色の鎧を着込んで大楯を持っているのて盾持ちだろう。こいつは少々老けて見えるけど、おそらく勇者とそう年齢は変わらないだろう。因みに笑顔は無い。
3番手は緑色の服を着て着たエルフの少女。肩には弓、腰には矢筒、キリッとした眼差しの美少女だ。生真面目そうに見えるけど、洒落は通じなそうだ。あまりお近付きになりたいタイプじゃない。
勇者、盾持ち、弓、と来て4人目は神殿の巫女姿をした美少女だ。ふっくらとした頬に切れ長で優しげな眼差し。栗色の長い髪を三つ編みにしてサイドテールにして垂らしている。更に頭には緑色の宝石をあしらった銀のサークレットが輝いている。
俺とメルは念話で話す事が出来る。
"なぁメル、4人目の女の子は何役なんだ?"
"あの娘は所謂聖女ね"
"聖女だけは能力じゃなくて、回復魔法が使える少女が医と健康を司るメティス神から加護を授けられて、メティス神の教団が聖女と認定するのよ"
聖女はメティス神の巫女としてメティス神の力を幾らか使えるという。
見た感じ、あの一行の中じゃ一番話が通じそうだ。まぁ、話す事なんて無いだろうけど。
ふと、守るべき二人を見ると、エミリーは「勇者様、素敵」と周りの町娘達と同じようにキャーキャー騒いでいる。マリーはというとエミリーのように騒がず、ただじっと勇者を、通り過ぎた後もずっと見詰め続けていた。
〜・〜・〜
明くる日、俺達3人はエドワウ叔父の引率により辺境伯の居城を訪れた。元服の儀の当事者二人は他の寄子子弟と同じく居城内の神殿へと赴く。
集まった子弟達は神官による儀式を受けると、神官に促されて順々と聖水を満たした水盤を除く。そして「能力」を授かった場合は水面が光り輝いて、その「能力」が文字として浮かびあがるのだ。
儀式に参列した子弟の親や関係者達は水面が光るか否かで一喜一憂。そして遂にエミリーの番が回って来た。
エミリーは少し不安気な表情で、キョロキョロと周りを見回し、そして俺を見つけると一瞬嬉しそうな顔をして俺に頷いで見せた。
エミリーが水盤の水面を覗き込むと、果たして煌々と光り輝き、果たして水面に文字が浮かび上がった。
「エミリー・ヴィンター、汝の能力は「看破」なり!」
今回の元服の儀、エミリーが授かった能力は「看破」、物事の真相を見抜き、嘘を見破る能力だ。
エミリーはうるうるした瞳で俺を見つめる。俺がうんうんと頷いてやると泣き笑いで俺に頷き返した。生意気な妹もたまには可愛いところを見せるものだ。
エミリーが終わり、次いでマリーの番となった。
マリーがおずおずと水盤の水面を覗き込むと、それに反応して水面が光を放った。その光はエミリーの時よりも強烈で、やがて水面に浮かび上がった文字は、
「マリー・マイルスター、な、汝の能力はけ、「剣聖」なりぃ!」
「剣聖」の二文字に思わず噛んでしまった初老の神官。
「剣聖」の出現に騒めき沸く殿内。マリーは一人目を見張り、喜びによるものなのか頬を上気させていた。
やはりエミリーがフラグを立てたせいだろうか。これは面倒な事になったな。
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それでは次話もお楽しみに!




