表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/144

第13話 猫連れ冒険者

ヴィンター騎士爵領からラースブルグへと至る街道を我がヴィンター家の馬車は行く。


ウチは辺境の騎士爵家だけど別に貧乏という訳ではない。領地である盆地は農業、畜産業が、山林は林業が盛んで自然の恵みも豊かだ。ただ、大々的な領地経営は他の寄子からの嫉妬と不審を招くため、敢えて伸び代を残した状態でいる。だから馬車の2台や3台の保有くらい余裕で出来ているのだ。


〜・〜・〜


「ねぇお兄さま、お兄さまってラースブルグの冒険者ギルドで"猫連れ"って呼ばれてるって本当?」


馬車の中、俺の斜向かいに座るエミリーが俺を揶揄うように言った。その横でマリーも俺から顔を背けて笑っている。


「それ、誰から聞いた?」


「誰だっていいじゃない。みんな言っていたわ」


みんな、ねぇ。

エミリーは特定の人物を挙げる事はしなかったが、娯楽の無い田舎の事だ。家中でも広まっているのだろう。いや、きっと領地の村々でも。


俺はマリーに視線を向けるもスッと逸らされた。まぁ、そういう事なのだろう。


そう、俺の行先にはこの世界の神々からの監視役である神使のメルが漏れなく付いてくる。それは冒険者ギルドや依頼された現場だって例外じゃない。


そんな何処へでも白い猫を連れて来る(いや、着いてくるんだけど)俺に付けられた渾名がエミリーの言った「猫連れ」、若しくは「猫連れ冒険者」だ。


そのせいで冒険者ギルドでも現場でも先輩冒険者達には馬鹿にされたし、揶揄われたし、ついでにかなり絡まれた。冒険者になるに際しての絡まれイベントはスルー出来たと思っていたけど、まさかこんな形で絡まれるようになるとは想定外だった。まぁ、あまりに悪質に絡む連中は皆返り討ちにしてやったけどな。


「で、でも、凄い冒険者には二つ名が付くって言うじゃないですか。流石、ホルスト兄さまです」


マリーは俺の幼馴染にして恋人。今は婚約者でもある。こんな時でも俺を立ててくれて有難いばかりだけど、流石にそれはちょっと無理があったか。


「マリーの言う二つ名はもっと格好いい"鉄腕"とか"疾風"みたいなのでしょう?お兄さまのは"猫連れ"だよ?」


そう言ってエミリーはまた笑い出した。

この妹は上の双子の兄達には素直で可愛い妹を演じているけど、俺に対してはいつも実に辛辣で容赦が無い。見てくれは綺麗でも、その分可愛気を感じる事が出来ない。


前世の妹の伊織は俺の事を「拓にい」と呼んで懐いて可愛いかったなぁ(遠い目)。思えば遠くへ来たものだと思う。

前世の俺はややシスコン気味であったのは否めないけど、今世の俺はそうでもない。


そうは言っても、この妹とも近いうちにお別れとなる。この父からの護衛依頼が終わって領地へ戻れば、俺の貴族籍は抹消されて俺は貴族でもヴィンター騎士爵家の者でもなくなり、家も出なければならない。

妹も来年には家を出て王都の王立学院に入学しなければならない。俺と妹は貴族と平民として身分も違えば、物理的にも距離的にも遠い関係となり、再び会う事などまず無いだろう。

そして、それをあまり寂しいと思っていない俺がいる。今世の俺は前世の俺よりも余程薄情であるようだった。


「しょうがないだろ。こいつが付いて来るんだから」


本当の事など言える訳もないが、何も反論しないのも癪だったので、悔し紛れの言い訳をした。

当事者であるメルは俺の膝の上で丸くなって寝ている。いい気なものだ。


メルが神使の姿を表した夜から、メルは毎晩寝る前に白猫から神使の姿となって俺とお喋りするようになっていた。寝る時は猫の姿に戻ってしまうが。

何だかんだ言ってメルは俺の好きなんじゃないの?なんてな事は言わない。でも、寝る前のそんなひと時をちょっと楽しみにしている俺だったりする。


〜・〜・〜


早朝に館を出立したヴィンター家の2台の馬車は丸一日の行程を経て、間も無くラースブルグの城門を潜る。

明日はいよいよエミリーとマリーの元服の儀だ。果たして二人は「能力」を授かるだろうか?

いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ