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第129話 再会、友よ

フォートセプト市代官所の貴賓室に近い会議室へ向かう。会議室の入り口は既に白百合騎士団の団員が警護に当たっていた。


ここでこの白百合騎士団について説明しておこう。白百合騎士団は女性王族を守るため編成された女性騎士のみで構成される騎士団だ。


構成員である騎士は近衛騎士団と同様に貴族の子女からなり、概ね2個中隊規模の戦力となっている。女性騎士の従者も勿論女性で、騎士の実家が家臣の娘を従者として付ける場合が多い。実家が裕福な場合は腕利きの女性冒険者を家臣に取立てて騎士となる娘の従者とするらしい。


騎士一人につき従者が2〜3人付く。この従者は無論戦闘技術がある訳で、従者を歩兵とするならば白百合騎士団は騎兵2個中隊に歩兵が2個大隊という結構な戦力となるのだ。その実力はどうあれ、だけど。


白百合騎士団はこのように結構な人員を擁しているだけに、ジギスムンド王国貴族の子女(特に下級貴族)にとり恰好の就職先となっている。上は公爵令嬢から下は男爵、騎士爵の娘まで、剣術・槍術・馬術等の腕自慢な令嬢達が団の門を叩く、らしい。


一説によれば、白百合騎士団には近衛騎士団や軍の騎士団などと合同任務や演習もあるため、それが出会いの場となって交際から婚姻に至る事が多いそうだ。なので座して死、じゃなく実家による意に沿わぬ結婚を嫌う令嬢達にとっての婚活の側面もあるのだとか。


また、白百合騎士団は女性王族を守る事がその任務であるため近衛騎士団に属する形となっている。といってその隷下部隊という事ではなく、指揮系統上は近衛騎士団長の直轄となっているものの多分に名目上であり、近衛騎士団長と白百合騎士団長はほぼ同格らしい。警察庁長官と警視総監みたいなものかな。


因みに、この白百合騎士団を見てわかるようにジギスムンド王国は比較的女性の権利が確立されていて、社会的地位も高い。上は王族から下は自作農に至るまで家督を相続する事も可能だ。まぁ原則男子による相続が優先されるそうだけども。


そういった訳で、白百合騎士団の団長ともなるとなかなかの権勢がある。特に実家の爵位が高い場合などは王城内でも肩で風切って歩く程だそうだとアイーシャが言っていた。


だから俺達が王太子の依頼を受けて王城でソフィア殿下の護衛と派遣軍への従軍に関する打ち合わせ会合に出席した際には白百合騎士団の女性騎士から結構な罵声を頂いたものだった。


その女性騎士は今回の従軍におけるソフィア殿下身辺警護分遣隊隊長だそうで、アマーリエ・フェルゼン伯爵令嬢。彼女の俺達への第一声はこんな感じだった。


「姫様は我々がお守りする。金級だか何だか知らないが冒険者の、平民ごときの力は借りない!女子供を集めて何が親衛隊だ、一体何の役に立つのか笑わせてくれる。戦を舐めるのもいい加減にしろ!」


「「「…」」」


アマーリエ嬢は色白な長身で艶のある黒髪をショートにした宝塚の男役のような美人なんだけど、彼女のいきなりなそんな発言に俺とアイーシャとメリッサは無言で顔を見合わせてしまった。勿論呆れて、だけど。俺達の背後に控えるティグル、エマ、ケントからは殺気がダダ漏れだ。


アマーリエ嬢は俺達の沈黙を自らへの萎縮と見たのだろう、その表情に俺達へのあからさまな侮蔑を浮かべたものだ。


ここで沈黙しっぱなしでは今後の活動に支障をきたす。折角王太子殿下より直々に頂いた自由裁量権がなし崩し的に無意味になってしまうからな。


「殿下の身辺警護を貴騎士団がなさるのはブラーシュ閣下より伺っているので問題ありません。我々親衛隊が冒険者なのも事実ですから、まぁ良いでしょう」


ここまでは事実確認、次からが問題だ。


「しかし、「平民ごとき」という発言は看過出来ません。この戦役に動員される士卒の多くが平民です。その平民を「ごとき」と侮る。本来その平民を守るのが貴族の役目では?ならばこの戦、近衛騎士団だけで魔王国軍と戦えば良い。おもちゃの兵隊がどれだけの物か見せて貰いたいものですね」


努めて丁寧な口調を心掛けたのだけど、アマーリエ嬢と白百合騎士団の騎士達の顔は怒り?で見る見るうちに赤くなる。


この席には護衛対象であるソフィア殿下とそのスタッフ、俺達親衛隊と白百合騎士団以外にも王太子側近のブラーシュ子爵やオブザーバーとして陸軍常設第1騎士団からも連絡士官が出張っていた。常設第1騎士団の連絡士官は平民出身なのか事の推移を興味深そうに見ていたけど、その他のメンツは皆「アチャー」という表情をしていた。


「それからあなたは我々の事を女子供言っていましたが、そもそもそちらも女子供の集団ではないですか?ですがこちらの女子供は冒険者として野で山でダンジョンで無数の魔物と戦い続けて莫大な利益を上げている一騎当千の強者です。騎士ごっこの女子供とは違いますので悪しからず」


俺がそう言い切ると現実逃避か式神の栗鼠と戯れ始めたソフィア殿下と、その傍に立ち天を仰いで首を振るエミリーの様が目に入った。ごめんな、エミリー。兄ちゃん仲間を侮辱されて黙っていられなくてさ、ちょっと言い過ぎちゃった。


「兄貴、そんなにまで俺達の事を、」


「ホルストさん、私…、うぅ…」


「兄貴、俺、一生着いて行きますから…」


打ち合わせ会合に同席させていたティグル、エマ、ケントからは感動したかのような呟きが聞こえて来る。


初対面であるにも関わらずいきなり罵声を浴びせかけてきた勘違い女にしっかり言い返してスッキリした俺は、その後激昂したアマーリエ嬢から決闘だ何だと騒ぎ立てられた。面倒くさくなった俺はアマーリエ嬢と白百合騎士団に威圧を放って黙らせ、すっかり怯え、いや、大人しくなった彼女達に俺達が王太子殿下の意向で動いている旨を説明して理解して貰った。


因みに、王族の御前で許可なく抜剣したりして明らかに武器の使用をしたり、攻撃系の魔法を発動させたりすると不敬罪に相当して厳罰に処される。しかし、俺が放った威圧は武器でも魔法でも「能力」でもないから俺が不敬罪で罰せられる事は無い。


その後は誰も俺とアマーリエ嬢との遣り取りについては触れず、淡々と必要な打ち合わせを済ませると速やかに解散となった。


「ホルスト様は女性にはお優しいのですね」


帰り道、何故かアイーシャからそのように(なじ)られた。


「本当、そう。あれが男なら決闘になって容赦無くぶちのめしてたんでしょ?」


「そ、そんな事無いよ?」


「「どうだか!」」


メリッサもアイーシャに同調し、2人からツンとされてしまった。何故に?


"日頃の行いでしょ?"


メルからも呆れたような念話が伝えられた。


まぁみんなそう言うけどさ、どんな事言われようがやっぱり女性に手荒な真似は出来ないじゃん?


〜・〜・〜


会議室の入口を守るのは白百合騎士団の若い女性騎士2人。彼女達も貴族の子女だけあって綺麗な顔立ちをしているけど、俺とアイーシャの姿を認めると一瞬目を見張った。流石にそれ以上内心を表情に表す事は無く、気を付けの姿勢となってこちらに敬意を表した。


「親衛隊だ。入るぞ!」


「は、はい!どうぞお入り下さい」


直立不動な2人の騎士に軽く頷き返すと、俺とアイーシャはドアを開けて会議室の中へ歩を進めた。


会議室には俺達の他に白百合騎士団の女性騎士(アマーリエ嬢ではない・プラチナブロンドのクール系美人)が一人、先に入室していた。互いに挨拶の言葉を交わす事は無いものの、女性騎士が読んでいた本から顔を上げたので何となく互いに黙礼する。


※ 上記女性騎士が読んでいた本が『美少女騎士ヒルデガルド-天に代わって不義を討っちゃうわよ?』であり、ホルストがその作者である事を彼女が知るのはまだ先の話。



すると会議室に一人の士官が入室して来た。その士官は巨躯に陸軍の騎士服を着ており、はて?何処かで見た憶えが、


「陸軍常設第1騎士団司令部から連絡士官として参りましたロームス・ヘルベルトです、って、ええ⁉︎」


「ロームス!」


「お前、ホルストか?」


俺とその連絡士官は互いに足速に歩み寄るとガッチリと握手を交わした。


そりゃあ見覚えがあるはずだ。このロームス・ヘルベルトは俺の子供時代におけるただ一人の友達なんだから。


「ホルスト、こんな所で会えるとは!お前が冒険者になったとは聞いていたが、噂の親衛隊の隊長さんだったとは驚きだぞ」


「まぁいろいろとあってさ。ロームスは学院を卒業して陸軍に入ったんだな」


「ああ。近衛騎士団って柄じゃ無いしな。陸軍常設第1騎士団に騎士見習いで入隊したんだ。最近漸く正騎士になれたところだ」


「そうか。それはおめでとう。ゴルムおじさんも喜んでいるだろうな」


俺の脳裏に2本角の兜を被った髭面のゴルムおじさんが満足気に笑う姿が浮かんだ。


「そうかな。そう言えばホルストがウチの領地を魔物の群から守ってくれたんだってな?有難う、恩に着るよ」


「いや、まぁ、あの時は間に合って良かったよ」


あのヘルベルト騎士爵領が複数のゴブリンキングに率いられた魔物の大群に襲撃された事件。あれは第1王子派と第2王子派による王家の内紛とそれに影響されたラース辺境伯家の御家騒動、複数の冒険者ギルド支部における幹部職員による横領等の汚職が複雑に絡み合った結果発生した事件だったな。それらの背後に魔王国群の陰謀があった訳だがけど。


と、そこへソフィア殿下の側近となっている妹のエミリーが会議室に現れる。


「ロームスさん?」


「エ、エミリーちゃんか?」


ヴィンター騎士爵領とヘルベルト騎士爵領は隣接していて、当主同士が友人である事もあり、ラース辺境伯の寄子貴族の中では交流が多かった。その領主の子供である俺とエミリー、ロームスと彼の妹セシリーはそれぞれ年齢も一緒だった事もありよく遊んだものだった。


ロームスはエミリーが来ると俺なんか放ったらかしだ。


「エミリーちゃん、綺麗になったな!」


「…はぁ、それは有難う御座います」


そう言えば子供の頃、ロームスはエミリーの事が好きだったんだよな(エミリーはそうではなかったようだけど)。


しかし、友よ。エミリーを褒めるのは良いけど「綺麗になったな!」だと以前はそうではなかったと受け取られてしまうから結構アウトなセリフだぞ?


ほら、エミリーの奴、ちょっと不機嫌そうな表情になってる。


ロームスの外見は彼の父親に似て大柄で厳つい筋肉達磨だ。さっき握手した時も正直力入りすぎだろっていうくらいだった。短く刈った栗色の髪は柔らか気だけど、顔はそうだな、キリッとしたバズラ○トイヤーといった感じかな。


数年ぶりの友との再会だ。積もる話もあるものの、今この場は公務の場。ロームスとは従軍中この先も会う機会があるだろう。


「皆さん、着席して下さい。姫様からのお言葉をお伝えします」


エミリーの仕切りで皆着席し、打ち合わせ会合が始まった。


いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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