第12話 護衛依頼
冒険者に登録してから、俺の日常は領地とラースブルグでの二重生活となった。一月の約半分をラースブルグでの冒険者生活に当て、残りの半月は領地に帰って過ごしている。
正直、もうラースブルグの宿屋に住み込んで実家から出てしまいたいのだけど、両親からは15歳になるまでは実家にいるように言われているのだ。
というのも、貴族の元服の儀は13歳で行われているけど、一般社会では15歳で成人とみなされる。そのため身分に関する手続きは15歳以降にならないと出来ないという事情があった。
両親が俺に15歳になるまで実家にいろというのは、15歳になったら俺の貴族籍を抹消してヴィンター騎士爵家の籍から抜くためなのだ。
数えで15歳になれば、寄親であるラース辺境伯の元で貴族籍抹消の手続きが行われる。そして貴族ではなくなった俺は家臣や領内の庄屋の入婿、養子になる訳でもないため、ヴィンター騎士爵領に俺の居場所はなくなる事になる。
また、15歳になるまで実家に居ろという両親の言いつけは温情なのかもしれない。しかし、それ以前に、例えば俺が出奔したりして行方不明になれば貴族籍抹消の手続きを行う事が出来なくなり、そのまま何年かは俺の籍がヴィンター騎士爵家に残ってしまう。そうした事態を両親は嫌ったからなのかもしれない。
俺の両親の関心は妹エミリーの王立学院入学に向いていて、もう俺はヴィンター家にとって厄介者でしかないようだった。現に家中の者達からもそういった視線を感じている。
まぁ、それはある意味仕方のない事だ。この世界は前世の日本のように文明の発展した優しく寛容な社会ではない。ウチのような辺境の小貴族ともなれば、役に立たない者や存在が共同体にとって有害となる者を養う余裕なんて無い。
この世界は中世レベルの文明と凝り固まった身分制度の封建制の社会で、種族、人種、民族、地域による差別や偏見は当たり前。むしろそれが為政者にとって都合が良ければ積極的に助長すらする。
そして社会から弾かれればそこは暴力が全てを支配する世界となる。
これが剣と魔法の世界の現実だ。
俺に前世からの知識や技術が無く、魔法も使えず、「能力」も無ければ、実家から放逐されれば忽ち社会の最底辺を彷徨い、野垂れ死ぬ事になろう。
そのため、平民となり実家から出された後を見据えて独立と自活の資金を稼ぐため、俺はせっせとラースブルグまで通い続けていた。
〜・〜・〜
冒険者になったばかりの新人低級者は受けられる依頼が決まっている。それは比較的危険が少なく、単純なものが多い。素材の採集から市民からのさまざまな依頼に農民からの農作業などで、地道にそうした依頼をこなして行けば半年で上位青銅級に上り、1年で下位銅級に上がる事が出来る。
そうして俺が冒険者になってから1年が経つと、俺は下位銅級の冒険者となった。下位銅級になれば魔物や盗賊の討伐や商隊や要人の護衛などの依頼を受けられるようになる。
俺の下位銅級冒険者としての最初の仕事は貴族の子女の護衛となった。ギルドを通さない俺個人への直接依頼で、依頼主はヴィンター騎士爵家当主オーギュスト・ヴィンター。つまり俺の父で、依頼内容は元服の儀を受けるためラースブルグへと向かう妹エミリー・ヴィンターと家臣の娘マリーの護衛だった。
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それでは次話もお楽しみに!




