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第123話 エマちゃんのホルスト観察日記③

そうして私達の新しい家での生活が始まりました。ホルストさん達のパーティはダンジョンでのクエストをメインに活動しているようで、その他には報酬が安くて引き受け手が

いないけど誰かがやらないとみんなが困る的な依頼や、幾つかの教団から依頼された奉仕活動(無料)などを引き受けています。


でも今は私達の教育や訓練に時間を割いてくれ、私達は上級冒険者から直々に訓練を受けているのです。ホルストさん達の教え方は上手くて、自分でもぐんぐん実力が付いているのがわかります。


そうした訓練が暫く続くと、ホルストさんの提案で私達はパーティを組む事になりました。兄がリーダーで盾と槍、ケントとジョグが前衛の槍と剣、リラとミラが後衛の弓、そして私がスカウトとなりました。


パーティの名前は「夜明けの星」としました。これは暗黒の貧民街での生活から自分達を救い出し、こうして導いてくれているホルストさんが私達とっての明けの赤星だ!という兄の提案に拠ります。


勿論、みんなが賛成したのは言うまでもありません。


因みに明けの赤星とは夜明け前に日の出を告げるように現れる赤い星の事ですね。


〜・〜・〜


スカウトの技術は狩猟と同じ。ホルストさんはそう教えてくれました。姿を隠し、音を出さず、気配を消す。五感を研ぎ澄まし、見て、聞いて、嗅いで、感じ、そして獲物に近づいて一気に仕留める。武器はタガー、短剣、短弓です。


スカウトの技術は王都郊外の山の中でホルストさんから教えて貰っています。元々虎獣人の私ですからスカウトの適性があるようで、ホルストさんが教えてくれる知識も技術もどんどん吸収します。


そうしたある日の野外訓練での事、昼過ぎから天候が悪化してしまいました。雷雨となり、降り頻る土砂降りの雨の中でホルストさんと私は岩場の迫り出した岩の庇で雨を避けたのでした。


雨は暫く降り続き、夕方になって漸く止んだのですが、暗い山中に雨でぬかるんだ山道を私達は危険と判断し、その日はそのまま岩場にテントを張ってビバークする事にしたのです。


私達は夕食と暖をとるため火を起こし、鍋でお湯を沸かして持参した保存食でスープを作りました。そしてそのあまり具の無いスープに硬いパンを浸し、折り畳みの長椅子に並んで座り食べます。きっと大して美味しくない空腹を満たすだけの夕食なのでしょう。でも山の中で焚き火を囲みホルストさんと食べれば最高のご馳走ですね。


私達が取り留めのない雑談をしながら食後のお茶を喫しているとホルストさんは私に私達のパーティ名「夜明けの星」について尋ねました。


最初、私は一瞬判断に迷いましたが、すっとぼける事にしたのです。するとホルストさんは誰に訊いても教えてくれないとボヤきました。当然です、だってみんなで照れくさいからホルストさんには黙っていようと決めたのですから。


でもホルストさんはそれは自分が私達から信用されていない結果だと思ってしまっていたのです。その様がとても寂しげで悲しげで、私まで何か切ない気分になってしまう程です。だから、


「あ、あの、」


と、気付けば口を開いていたのです。


「私達みんな、ホルストさんを信用していないとか、ホルストさんの人気が無いとか、そんな事絶対に有りませんから!」


そこから私はホルストさんが如何に私達から慕われ、信頼され、感謝されているかを怒涛の如く語ってしまいました。後から恥ずかしくなる程に。


「そ、そうなの?」


「そうです!だからパーティの名前だって私達をあの暗闇のような生活から救い出して導いてくれたホルストさんが、私達にとって、あ、明けの赤星みたいな人だからって、みんなでそうしようって、あっ!」


私は勢いのまま思わずみんなで内緒にしておこうと決めたパーティ名「夜明けの星」命名エピソードまで喋ってしまったのです。どうしよう。


「みんながそんな風に思ってくれているなんてとても嬉しいよ。有難うな。それとエマが言ったって事は黙ってるから心配するな」


ホルストさんは私を安心させるようにそう言うと、優しく私の髪を撫でてくれました。髪を撫でられるなんてもうどれくらい振りでしょう。母がまだ元気だった頃、甘える私の髪をよく撫でてくれました。


兄ですか?あの兄がそんな事する訳無いじゃないですか。


私は髪を撫でられる切なさと心地よさから思わずホルストさんに抱き着いてしまっていたのです。するとホルストさんは私の肩をギュッと抱いてくれて。私は密着するホルストさんの体温と匂いに包まれ、ドキドキしながらも幸せな気分でそのままどうやら眠ってしまったようでした。は、恥ずかしい…


〜・〜・〜


そうして一年が過ぎ、技術的にも大丈夫だとホルストさん達と勇者様のパーティが太鼓判を押してくれました。私達は一年という節目もあって冒険者登録をし、遂に冒険者としてデビューしたのです。


ホルストさん達や勇者様達から教えを受けたからといって驕らぬよう私達は自分達を戒める事としました。そうしないと慢心から大怪我をしたり、下手をしたら命を落とすからです。また、他の冒険者達から浮いてしまいますし、私達の評判が悪くなればホルストさん達や勇者様パーティの顔に泥を塗る結果となってしまいます。


焦らず、気負わず、最下級の依頼や採集などの常時依頼を地道にこなし、ゆっくりでも着実なランクアップを目指します。



冒険者デビューしてからはホルストさん達の教えを受ける機会は減りました。でも一緒に住んでいるし、一緒に家にいる時は食事も家事も一緒ですから寂しくはありません。


そうそう、王立学院で学ばれていた剣聖のマリー様が学院を卒業されて勇者様のパーティに参加されました。


以前に聖女ミシェル様が話していたホルスト様の元婚約者が剣聖マリー様なんですね。婚約は解消されても、今はホルストさんから赦されて再びホルストさんの恋人に返り咲いています。


正直、私はこの方には何かモヤモヤする思いを抱いています。だって、そうじゃないですか?いくら「剣聖」を授かって一時的におかしくなっていたからって簡単にホルストさんを裏切って。ホルストさんの諫言も聞かず、あまつさえ決闘でホルストさんを殺そうとまでしたんですから!あっけなく返り討ちにされたみたいですけどね。


それなのにホルストさんが赦したからって恋人面して会いに来て!


まぁ、本当に恋人の一人なのですから、私がとやかく言う事ではないのでしょうけど。


何かムカつくんですよ、あの女!


剣聖マリー様はホルストさんの幼馴染だけに、ホルストさんのご実家の領地で一緒に狩猟の訓練を受けていたそうです。だから駆け出しスカウトの私より技量は上かも知れません。しかも師に就いてムラージ流剣術を修め、今や名実共に剣聖の名に相応しい実力の持ち主。


おまけにルビーのように綺麗な赤髪で、色白のスラリとスタイルの良い美人なんです。うぅ、今の私にこの(ひと)に勝てる要素が見当たりませんよ。


でも私はホルストさんを絶対裏切ったりしませんから。それにこの一年で気付いたのですけど、ホルストさんの恋人さん達には何かしらのバックの存在が窺えるのです。アイーシャさんはちょっとわかりませんけど、メリッサさんにはナヴォーリ市、ゾフィ様とマリー様にはアプロス教団、聖女ミシェル様にはメティス教団といった具合です。


私は皆さんのホルストさんへの想いを疑う訳でも否定する訳でもありません。きっとそれぞれの役割でホルストさんと接するうちに好きになって愛しちゃったのだと思うんです。


私にはそうしたしがらみはありません。私は私の意志でホルストさんを尊敬し、憧れ、好きになったのです。


え?ホルストさんを好きに?そうだったの?私、いつの間にかホルストさんの事を好きになっていた?


ホルストさんの事が好きなんだ、つまり、ななな!内緒にしておきます。だって今の私は恋人の皆さんにとても敵いませんから。


だから今は気付いた恋心は封印します。何れ冒険者として実力を付けて、女の子として可愛く綺麗になって、ゆっくりゆっくり、誰にも気付かれないようホルストさんとの距離を詰めます。そしてこの爪と牙でホルストさんの恋人の座をがっつり押さえ込むんです。


ホルストさん、虎獣人の女は執念深く、愛情深いですからね。どんなに時間がかかってもホルストさんの恋人になってみせますから、覚悟して下さいね?


いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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