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第121話 卒業

ティグル率いる8人の孤児達を引き取った直後のテント生活。それを予定通り1週間で終え、その間に子供達の健康と体力を回復させた。身なりも小綺麗に清潔にしてね。まぁミリーちゃんは病み上がりだからまだ注意しなければだけど。


なので、俺は取り敢えず王都の居候先に子供達を連れて向かう事にした。


俺の大家さんとも言える勇者クリスは、俺が8人もの子供達を連れて来てもこのまま館に居てもいいよと言ってくれた。


しかし、それに甘える事は出来ない。これは俺の事情で関わった事であり、俺が子供達引き取ると決めたのだから。飽くまで俺が主体とならなければ、助ける者が助けられては助けられる子供達への示しもつかない、と俺は思う。まぁ手助けしてくれる分には嬉しいけどね。


そうした訳でクリス達の好意は謝辞しつつ、商業区のギルド本部近くに大きな格安物件を見つけて購入し、居を移した。何で立地も間取りも良い物件が格安かと言えば、早い話、事故物件のお化け屋敷だったんだな。棲み着いていた悪霊の類は全て払ったから結果オーライでいい買い物だったかな。


とはいえ、新居は元居た貴族街の居候先から遠い訳ではない。区で言えばすぐ隣だし、王立学院だって近い。まぁそうした条件があったからゾフィとミシェルも俺達の引っ越しに同意したのではあったのだけど。


そうした訳で引っ越ししてもゾフィとミシェルはすぐに新居に来るし、なんなら泊まってく。そうなると勇者クリスと盾聖ディックもちょいちょい遊びに顔を出すようになり、なんなら泊まってく。


勇者パーティの館では執事さんやメイドさん達が待っているだろうからちゃんと帰ってやれよとクリスに言っても、


「こっちの方が賑やかで楽しいんだよね」


との事。


そんな事言われたら帰れとかあまり来るなとか言えなくなるだろうに。勇者パーティが来ると子供達も大喜びだしな。


子供達は勇者パーティに会えて非常に影響を受けたようだった。年少組のミリーとリグを除き、皆が冒険者になりたいと言い出した。


え?俺の影響じゃないの?と内心ショックを受けたのはここだけの話。しかし、メルとアイーシャとメリッサにはしっかりバレていたようで、揶揄われつつもその夜にしっかりと慰めてくれたりした。


彼等の希望を知り、俺とアイーシャとメリッサは子供達に勉強とそれぞれ得意分野を教える事にした。そして年長組の子供達にティグルをリーダーとしたパーティを組ませ、徐々に冒険者活動に必要な採集や狩猟などの野外活動、ダンジョンでの魔物討伐などを指導。一年を経過して十分に実力が着いたあたりで、遂に冒険者デビューするに至ったのだ。


ティグルをリーダーとするその冒険者パーティは、その名も「夜明けの星」!


盾と剣のティグル、槍のケントと剣のジョグが前衛を担い、リラとミラが後衛で弓士、エマが斥候と攻守バランスの取れた良い組み合わせだと思うのだけど、どうだろうか?


しかも、ティグルは盾聖のディックから、リラとミラは弓聖ゾフィからそれぞれ直に教えを受けているのだ。


ジョグにはアイーシャが剣を教え、ケントには俺が徒手格闘術と槍術を教えた。また、エマには俺が生まれ故郷であるヴィンター騎士爵領の山野で培ったスカウトに通ずる狩猟の技術を特に教え、メリッサもダンジョンでの探索術を惜しみなく教えている。


ある意味、上級冒険者パーティと勇者パーティから一年に渡って教えを受けたのだから冒険者パーティ「夜明けの星」はエリートパーティと言えようか。冒険者なんて普通は農村から出ざるを得ない連中がなるものだし、知識や技術は実地で覚えるものだから。


最初こそ俺達が同行して指導しつつのダンジョンクエストだった。しかし、今は独り立ちし、最下級のパーティとして地道にクエストや依頼をこなしているから順調にランクアップする事だろう。


どうして子供達を一つのパーティにまとめ、俺達のパーティに入れなかったかと言えば、俺の能力に彼等が関係してしまうからだ。


俺の能力「アクションヒーロー」には同じパーティのメンバーとなった者に能力を分け与える「スーパー戦隊化」という現象がある。アイーシャとメリッサがそれまでより剣技が伸びて強くなったり、身体能力が向上しているのはそのためだ。


もしも子供達を俺達のパーティメンバーにしたとする。そうなれば当然「スーパー戦隊化」が発動して彼等にも能力が分け与えられてしまい、まだ実力が伴っていない彼等に実力以上の力が着いてしまうだろう。それは自らへの過信と増上を招いて危険だ。


「スーパー戦隊化」によって実力以上の力が着き、その後、俺達のパーティから抜けたらどうなるのか?分け与えられた能力はその身から消え去り、本人に残るのは元々からの実力のみとなる。


その際に冒険者を辞めるならそれは良い。分け与えられていた能力に胡座をかいて実力不足のまま冒険者を続けるのはリスクが高く、身の丈以上の討伐依頼を受けたり、ダンジョンの深層に潜ったりすれば本人が死ぬばかりか周りも危険に晒してしまうだろう。だから彼等は彼等でパーティを組ませ、ひたすら実力を鍛えた方が良いかと俺は判断したのだ。


〜・〜・〜


ティグル達のパーティ名「夜明けの星」。彼等で考えたそうなんだけど、その由来について俺には教えてくれない。誰に訊いてもすっとぼけられるので、王都郊外の山中にエマとスカウト訓練に出た時にこっそりと訊いてみた。


尚、山野での狩猟は俺にしか知識、経験が無く、俺にしか教えられない。なのでエマと2人(白猫姿メルの同行あり)になったのは飽くまで不可抗力である。


その日の夜はスカウト訓練先で天候悪化に見舞われ、山中に大きく張り出した岩場で雨避けのビバークをする事に。雨は夕方には止み、焚き火を前に並んで簡単な夕食の後、徐にエマに切り出してみた。


「なぁ、誰も教えてくれないんだけど、パーティ名は何で「夜明けの星」なんだ?」


俺がそう尋ねると一瞬ギョッとなるエマちゃん。だから、何でそうなる?


「え、え〜とぉ、何でだったっけ、かなぁ〜?」


両目を泳がせるエマ。何とも態とらしいしらばっくれ様だ。なので俺も少しばかり演技を込め、肩を落としてがっかりして見せた。


「そうか。エマも教えてくれないのか。俺って信用無いっていうか、人気無いっていうか。何か寂しいな。まぁこればっかりはきっと自分に問題があるのだろうから仕方のない事だけどさ」


そう言うと、最後に止めとばかりに「はぁ〜」とため息を吐いておく。と、エマは明らかな動揺を見せると、次いで泣き出しそうに表情を歪ませた。因みに最近エマからは観察する様な視線を向けられる事はなくなっている。


「あ、あのっ」


「うん?」と弱々しくエマの方に向く。


「わ、私達みんな、ホルストさんを信用していないとか、ホルストさんが人気無いとか、そんな事絶対に有りません。って言うかあり得ませんから!」


そこからエマは俺がいかに自分達から慕われ、信頼され、尊敬されて感謝されているかを怒涛のように語った。それは聞いている自分が恥ずかしくなる程に。


「そ、そうなの?」


「そうです!だからパーティの名前だって私達をあの暗闇のような生活から救い出して導いてくれたホルストさんが、私達にとって、あ、明けの赤星みたいな人だからって、みんなでそうしようって、あっ!」


察するに、エマのこの様子から出鱈目を言っている訳ではなさそうで。最後の慌てる様子を見ればパーティ名については照れ臭いから俺には黙っていようみたいな感じになっていたっぽいな。


「ううぅ」


黙っているべき事を俺に言ってしまったからか、俺の事を普段からどう思っていたかを本人に言ってしまって恥ずかしいのか、エマは顔を真っ赤にして涙目で俯いてしまった。


「みんながそんな風に思ってくれているなんてとても嬉しいよ。有難うな。それとエマが言ったって事は黙ってるから心配するな」


そう言って頭を撫でて慰めると、俺は隣に座るエマは感極まったように抱き着いて来た。なので俺はエマの肩に腕を回して抱き、よしよしと落ち着かせた。ジト目で俺を見るメルの視線を間近に感じながら。


そんな事があって冒険者パーティ「夜明けの星」命名の謎は解けた。帰宅後にメルから話を聞いたアイーシャとメリッサから


「そんな事したらエマちゃんが誤解するでしょ!」


と長時間の正座で反省を促されるという代償を払いはしたけど。


〜・〜・〜


貧民街からティグル達を引き取ってから一年。実力はまずまずで、取り敢えず保護者の務めは果たせたかな。これからも同じ家に住む訳だし、年少組もいる事からフォローはしっかりするつもりだ。


そして一年間が経過して、王立学院に在学中の妹エミリーとかつての婚約者で剣聖にして今は恋人(仮)のマリー、それにソフィア第3王女が王立学院を卒業する。


卒業後、エミリーはやはりソフィア王女の側近侍女となり、マリーは剣聖としてクリス勇者パーティに参加する事となる。


この卒業式のために新調した正装に袖を通し、俺はエミリーの父兄枠で王立学院の卒業式に来ている。流石にヴィンター家の領地からは遠すぎるので両親は式には来られず、王都勤務の双子である長兄次兄には式へ来る事をエミリーが拒否したそうだ。そのためエミリーのご指名で俺が式に来ている訳なのだった。


「兄さま!」


式を終えて講堂から校庭に出て、俺を見つけるや飛び込んで来たマリーを受け止める。式には来賓で勇者クリス、王室や軍のお偉方々も来ていたけどマリーは気にしちゃいない。


「マリー、卒業おめでとう。あれから2年間、よく頑張ったな」


「兄さま、有難うございます。これで私も大手を振って兄さまの元に行けますね」


可愛い事を言う。でも、まずは勇者パーティに馴染んで上手く連携出来るようにしないとな。


「こほん、お兄さま、私達もいる事を忘れてませんよね?」


態とらしい咳払いのした方を見れば、今やすっかりレディになった妹のエミリーと、更に美しさに磨きのかかったソフィア王女が両手を腰に当てた「怒ってますよ?」のポーズで立っている。


「そんな事無いよ。ソフィもエミリーも卒業おめでとう」


マリーが空気を読んでさり気なく離れると、俺は子供の頃から数年ぶりに妹を抱き締めた。


ちょっ、ソフィ、何拗ねてるんだよ。いくら親しくなっても流石に王女様にはこんな真似、出来ないからな。




いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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