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第119話 孤児達の事情

勢いというか、その場の流れというか、思わず孤児達8人面倒見ます宣言をしてしまった俺。


勿論後悔なんてしていませんよ?あの場でケントの肩とミリーちゃんの病気を治して「お兄さん達もう行くから元気でね」はあまりに無責任だ。罠にかかって傷付いた兎を逃しても早々に狐や野犬に食べられてしまう例えがあるから、助けたなら最後まで面倒見ないとね。


実際、ティグル率いる孤児グループはあの時潰滅寸前だったようだ。ティグルが言うには元々のリーダーが対立グループとの抗争で亡くなり彼等のグループは分裂。すると主だった孤児達を連れてNo.2(ティグルがNo.3ね)がまさかの寝返りで対立グループに降伏してその傘下に降ってしまったのだという。


ティグルとNo.2は元々仲が良いという訳ではなく、恐らくそのNo.2はティグル達をスケープゴートにして自分が助かる道を選んだのだろうな。


ティグルの元にはグループの中でも彼と結び付きの強い今いるメンバーが残るも対立グループ(元仲間も含む)から更なる圧迫を受け、貧民街でもより環境の悪い奥部に追いやられてしまった。そしてミリーちゃんが発症。


後の事は知っての通りだ。おそらくそんな状況でも今までティグルのグループが無事だったのは皮肉な事にミリーちゃんの病気のお陰だな。対立グループはティグル達からの感染を恐れ、直接の攻撃は控えて兵糧攻めで餓死させようとしていたようだったという。


そんな話をティグルから聞いた。しかもティグル兄妹の家はシーン家という騎士爵家だったとかで、彼等の母親は早くに亡くなっていて、その後に父親も病気で亡くなると叔父に爵位を奪われ、更に口封じのため彼等は貧民街に捨てられたという。


俺の人生も波瀾万丈ではあるけど、ティグルとエマちゃんの人生もなかなかどうして苦労の連続だ。まぁそれを言ったら貧民街の住民は何だかんだ皆そうだし、そう言えば俺の周りも数奇な人生を歩んでいる人ばかりだな。


そんな事を訥々と語るティグルに俺は声を掛けずにはいられなかった。


「みんなを守って今まで一人でよく頑張ったな」


ティグルは「…はい」と俯いて呟くと、そのまま右腕で両眼を覆って男泣きに泣き出した。


見れば周りの孤児達もシクシクと泣き、妹のエマちゃんもティグルに抱き着いて泣いていた。


〜・〜・〜


貧民街を出た俺達は取り敢えず王都近郊のキャラバンサライに移動し、そこに大型テントを張って暫く過ごす事にした。亜空間収納に色々と入っているからね。


貧民街で暮らしていた孤児達だ。そのまま王都にある居候先に連れて行く事は出来ない。言っては悪いけど、みんな身なりは貧しいし、身体も垢なんかで汚いし、虱や蚤もいるだろうし。それにおそらくミリーちゃんが罹患していた病気(血咳病という)に孤児達は発症はせずともみんな感染しているだろう。まずは身体を清潔にして健康と体力を回復させなければならない。


よし、ここで孤児達の紹介だ。


まずはリーダーの虎獣人ティグル(15)。ティグルは恵まれた頑強で大柄な体格でいかにも強そう。それでいてキリッとした野生味溢れるイケメンで、孤児達を率いるくらいの責任感ある優しくいい奴だ。元は王都在住騎士爵家の出身だけにティグルもエマちゃんもどことなく他の子よりも品がある。


ティグルの妹であるエマ(12)はほっそりとした目鼻立ちのはっきりした美少女だ。虎獣人だからか気が強そうで、何故か俺を見ている。それは恋焦がれる熱い視線とかでは決してなく、観察というか監視というか、様子を窺っているような視線だな。嫌われている感じは無いのだけど、まだ俺を信用していないのだろう。まぁ納得出来るまで幾らでもじっくりしっかり観ればいいさ。


銀狼獣人のケント(14)。ケントは細マッチョの一見クールな目付きのきついイケメン、だけど実は妹思いの熱い奴だ。武闘大会での健闘からわかる通り、その強靭でしなやかな筋力を生かしたスピードファイターで、格闘技のセンスがある。


ケントの妹ミリーちゃん(10)は仔犬のように可愛らしい美少女。今は病み上がりだけど、結構活発なお転婆さんなのだとか。


続いて猫獣人の双子姉妹リラとミラ、どちらも14歳。この2人は双子だけに顔もほっそりした身体つきもそっくりな黒髪に釣り目の美少女達だ。ただお姉さんのリラは黒い瞳であるのに対し妹のミラはグレーの瞳。瞳を見る限り間違えないで済み助かっている。


最後は狐獣人の兄弟ジグ(13)とリグ(11)。2人とも明るいブラウンの髪と尻尾が特徴的で、鼻筋の通った整った理知的な顔をしている。そのせいか2人とも俺にもアイーシャやメリッサによく質問してくるな。


このグループの特徴は皆兄弟姉妹であるという事。おそらく長兄長姉が弟や妹を守るために似た境遇同士がティグルの元に集まったのだろう。


〜・〜・〜


ティグルとケントがいるとはいえ、キャラバンサライに子供達だけで放置すれば忽ち悪い大人達の餌食となる事請け合いだ。俺はテントの周辺に防衛用に式神を幾つか配して物資の購入に赴いた。


購入する物品は多い。食糧は元より、8人分の衣類に寝具に薬に様々な生活雑貨等。風呂にも入れなきゃいけないから浴槽替わりの樽とかもだ。


よくラノベなんかでは土魔法でちゃちゃっと浴槽やなんかを作って、なんて展開があるけど俺は土魔法が使えないから無理筋。アイーシャとメリッサも同様だ。それで考え出したのが前世でのドラム缶風呂を参考にした樽風呂。これはドラム缶風呂のように下から火で熱する必要も無く、魔法でお湯を入れるだけだから扱いも簡単だ。


そうした訳で大型テントの中からは入浴後の子供達がはしゃぐ声が聞こえて来る。実に明るく楽しそうな声だ。あの声を聞く事が出来るようになっただけでも子供達を助けて良かったと思える。


「ホルスト様、お肉が焼けました」


アイーシャが石で組んだ窯で串に刺した肉を焼き、辺りには香ばしい匂いが漂っている。


「ホルスト、こっちはシチューも煮えたよ」


メリッサが大鍋で作るシチューも湯気を立てて食欲をそそる。


俺は了解と応じると、折り畳みのテーブルに皿を並べてパンを配る猫獣人姉妹のリラとミラに声をかける。子供達は積極的に俺達の手伝いをしてくれているのだ。


「そっちはどうだ?」


「「は〜い、こっちも完了で〜す」」


双子だけに息もぴったりだ。


「リラ、ミラ、みんなを呼んできてくれ」


「「は〜い」」


リラとミラに呼ばれてテントから出て来た子供達がメリッサの元に並ぶと手に持つ器にシチューを注いで貰い、アイーシャから肉の串焼きを受け取る。そして全員が席に着くと早春の夕暮れ時は薄暗く、テーブル上のランプの灯りが照らす子供達の表情には暗さは無い。みんな湯冷めしないよう新品の上着を着ている。


アイーシャとメリッサが俺の分も夕食を配膳してくれて俺の両隣に座る。


「よし、冷めない内に頂こうか?」


俺が両手を合わせて日本式に「いただきます」と声を上げる。するともう慣れたもので皆の元気な「いただきます!」が夕暮れ時のキャラバンサライに響き、ここでの3回目の夕食が始まった。


ガツガツと音を立てて、もりもりと食べる。マナーなんて今はまだ気にせず、お喋りしながら楽しく過ごせばいい。この子達はまだ誰かに守られて然るべき年齢なのに、親を失ったり捨てられたりして貧民街で苦労してきたんだ。今くらい、この1週間くらい、誰かの庇護の元で楽しくのびのび過ごしたってバチは当たらない筈だ。


〜・〜・〜


この後の予定だけど、このキャラバンサライでのテント生活は1週間くらいで終える予定。健康と体力を回復させたら取り敢えず王都の居候先、クリス勇者パーティの館に戻りその間にギルド本部に近い辺りに家を買うなり借りるなりして引っ越しをする。


いや、だってただでさえ居候なのに、そこへ更に8人も増やす訳にはいかんでしょ。クリス達は多分いいよと言ってくれるだろうけど、俺が子供達の面倒を見ると言った以上、そこはキチンとケジメをつけなければならないからな。




いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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