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第115話 さらば、丸谷先輩

いやいや、全くもって、怒られたのなんのって。え、誰にかって?メルにアイーシャ、メリッサにさ。それからゾフィと、何でかミシェルにまで。


そりゃあ第2王子の身柄確保したらナルディア教団の神殿に直行する予定が一週間も寄り道して遅れた挙句、連れて来るのが"王子"の筈がどう見たって美少女な女の子とくれば腹も立つだろう。


俺もそれについてはメル達に謝り、サリー(リサルト殿下)がこれから世話になるナルディア教団の関係者達にも詫びを入れた。教団の皆々は「いやいや、若い男女ですからねぇ」と愛と癒しの女神を奉じる信者さんだけに笑って許してくれたけど、アイリスって言う巫女には「お盛んな事ね」と嫌味を言われたな。って、アイリスってナヴォーリに行く途中で海賊に襲われた時にいた変な巫女じゃん!


まぁ結局、サリー(リサルト殿下)が半陰陽である事実を説明してみんなには納得して貰った。それでも色々と言われたけど。


アイーシャ「殿下の事情はわかりましたけど、態々女の子の格好をさせなくても」


メリッサ「最後、抱き合ってたよね?」


ゾフィ「まさか温泉で混浴なんかしてないでしょうね?」


ミシェル「ええと、その、もう!」


ゾフィには悪いけどリサルト王子として一緒に風呂に入っちゃった。だってサリーが「男同士でもあるからいいよね?」とか言って突撃して来たんだ。でもゾフィはこれに関しては他人(ひと)をとやかく言えないよな。


ミシェルは、きっと何か俺に文句言いたいのだけど、何に文句を言っていいのかわからなくてって感じかな。出会って最初の頃の聖女然とした印象から随分外れてちょっとポンコツ感が出てるけど、人間らしくていいと思う。


流石にメルは愛と癒しの女神ナルディア様の眷属だからか、正妻の余裕なのだろうか何も言わなかった。サリーの心は女性であるにも関わらず半陰陽故に男である事や王子である事を強制されていた事実と漸く本来の自分になる事が出来た事情を慮っての事だろう。


サリーはナルディア教団に保護され、今後どうなるのだろうか?世間での熱りが冷めて王族の籍から外されれば神殿から出る事は出来るだろうけど。それまでは籠の中の鳥状態が続くのだ。


だけど、それまでと違って男や王子である事を強制される事は無く、本来の自分でいられるはずだ。あの教団は女性が多いから、そのまま巫女か神官になってしまうというのもアリかもしれないな。ともあれ、彼女の新しい人生で女性としての幸せが得られるよう願って止まない。


〜・〜・〜


バラライカ作戦の顛末だけど、長い寄り道をしつつもリサルト殿下の身柄確保はハインシャルタット殿下にアイーシャ経由で知らせていたので、互いの行動に関する認識のズレは生じなかった。


ハインシャルタット殿下は俺からの報告を受けるや直ちに行動に移った。ドゲメネ公爵の元にリサルト殿下の行方について詰問使を送り、殿下が行方不明とわかると不敬罪と反逆罪によりドゲメネ公爵の王都の本邸と飛び領地の別邸を近衛師団で急襲したのだ。


ドゲメネ公爵はハインシャルタット殿下からの挑発には乗らず、のらりくらりと対応して時間稼ぎをし戦力を集めようとしたのだろう。しかし、ハインシャルタット殿下はすかさず行動に出たのだ。


近衛師団による急襲によりドゲメネ公爵とその一族郎党は忽ち捕縛され、そのまま全員が略式裁判で処刑された。その中には当然公爵夫人や側室、令息令嬢も含まれていた。ハインシャルタット殿下が処刑を急いだのは彼等を生かしておいたら夫人等の実家やら何やらが助命嘆願するなど事態が複雑化するからだろう。


近衛師団によるドゲメネ公爵邸急襲と共に王都は戒厳令が敷かれ、近衛師団と陸軍常設第1騎士団が展開して第2王子派の貴族達の動きは封じられた。


ハインシャルタット殿下の行動は王都だけに止まらなかった。第2王子派貴族家の当主はその殆どが王都から身動きが取れない状態の中で自派の領主貴族にドゲメネ公爵の本領や第2王子派貴族の領地を攻撃させたのだ。


これにより王都にはいなかったなドゲメネ公爵家の親族と主だった第2王子派の貴族家は当主からの指示が無いまま交戦状態となって各個撃破され、第2王子派の軍事力は壊滅されてしまった。


ハインシャルタット殿下の行動は更に王宮内にも及んだ。それは第2王子派に与した法服貴族に留まらず、現国王の正妃であるキャサリン妃も例外では無かった。


ドゲメネ公爵という王国内におけ最大の後ろ盾を瞬時に無くしたキャサリン妃は何も出来ないまま叛逆者との内通の恐れありとして王城内にある問題あり王族を幽閉するための塔に強制的に居を移されてしまったのだ。それは彼女の夫である現国王の同意があっての事である。キャサリン王妃はおそらく徐々に衰弱して…


そうしてハインシャルタット殿下はその迅速な行動により第2王子派を早々に壊滅させ、クーデターによる内乱の危機を完全に摘み取る事が出来たのだった。そして同時にドゲメネ公爵家というジギスムンド王国に長年巣食っていた獅子身中の虫である売国奴をも、その派閥共々王国内から一掃する事に成功した。


〜・〜・〜


それはその後のある晩の事。俺は丸谷先輩に呼び出されて居候先の屋根上にいた。依代である杖から姿を現した丸谷先輩は屋根の大棟に腰掛けると俺に隣に座るよう促した。


真夜中、館の屋根上で青白く発光するレイスと並んで座るという奇妙な構図の出来上がりだ。


「今宵は月が無くて良い闇だな。宵闇だけに」


「ナイスレイスジョーク!」


「よせやい、照れるぜ」


「「…」」


何となくわかるのだ。丸谷先輩が俺を呼び出した理由が。


「ホルスト、短い間だったがお前には世話になったな」


あぁ、やっぱりか。


「もう逝ってしまうんですか?」


死者の魂をレイスたらしめているのは生前果たせなかった無念や怨みだといわれている。丸谷先輩は王室特務機関の長たる王宮魔術師として知り得た魔王国群からの侵略と王国内の裏切り者についての情報を入手していながら主君たる先々代国王に自らの戦死によりそれを報告出来なかった。その無念とジギスムンド王国の将来を憂う思いが死した先輩の魂をレイスにした。


「あぁ、お前のお陰ですっかり心残りが消えた。ドゲメネ公爵家は断絶し、魔王国群と繋がっていた証拠もハインシャルタット殿下が抑えた。これで少なくとも100年は王国の安泰は揺るがない」


確かに内通するドゲメネ公爵家が消え、魔王国群側から王国内へ工作を仕掛けるルートは消えた。魔族どもが再び王国内に新たな裏切り者を仕立て上げるまでは王国内は安泰と言えるだろう。


ただし、魔王国群が直接大規模な侵攻を仕掛けたり、人類側から魔王国群への逆侵攻を企てたりしない限り、ではあるけど。


しかし、今回は魔王国群はドゲメネ公爵という貴重な内通者を失う危険を冒してまで王家簒奪、国家転覆を企てたのだ。これは近い将来、魔王国群によるカブラチッド回廊へ、更にはローメリア帝国への大規模侵攻の兆しと見て良いのではないだろうか?


そうした事は死した丸谷先輩の魂をレイスとしてこの世に留めた無念には含まれては無いようだ。先輩としては、それは後進達がしっかりやるべき事という認識なのかもしれない。


「これで俺も漸く成仏出来る。そうしたら日本に帰れたいものだな」


「強く願うと良いそうですよ。でも、そうすると報酬の話が違やしませんか?先輩が成仏したら先輩の知識や技術が貰えてアドバイスもしてくれるって話でしたよね?」


これは半ば冗談ではあるけれど、まるで遺産相続して大金が入るかと思いきや、結構な借財も含まれていました的な感じではある。


「嘘は言ってないさ。その杖には俺の知識が込めてある。お前が杖を握って必要な情報を念じてヒットすれば伝わるようになっているからな」


それだと約束のアドバイスが含まれてないのでは?と思わないでは無いけど、ここまで至ってそれを口にするのは野暮というものだろう。もう既にただでさえ半透明な先輩の身体が光の粒子となってきえかかっているのだ。


「そう言えば、ホルスト、お前の前世での名前を訊いていなかったな」


「俺の名前は拓人、神崎拓人だ」


正確には"だった"だけど。


「そうか。じゃあな、拓人」


「先輩、お疲れ様でした。日本で今度は美少女にTS転生でもして下さい」


ほぼ消えかかっている丸谷先輩は微かにニヤッと笑った。


「馬鹿言え、次もイケメンに生まれるに決まってるだろ」


なんて事を言い終えるや、丸谷先輩は光の粒子となって消えた。


全く、俺を巻き込むだけ巻き込んでおいて、約束も守らない。それで満足したらさっさと成仏しやがって。嘘つきは地獄に落ちるんだからな!


とは言え、丸谷先輩はこの世界に転生し、生前には冒険者、宮廷魔術師として随分と多くの人々を救い、死後もレイスとなって内乱を防いだ。ならちょっとくらいの嘘なんて神様も大目に見るかな。もしかしたら本当に日本に転生するかも。イケメンか美少女かは知らんけど。


日本の八百万の神々、どうか丸谷先輩の魂を日本へ帰れるよう導いて下さい。


そのように世界線の向こうに想いを馳せていると、いつの間にか隣にメルが腰掛けていた。


「あのレイス、逝ったのね。良かったわ、ちゃんと昇天出来て」


「先輩の魂は日本に帰れるかな?」


「さぁ、どうかしらね。それは私にもわからないわ」


女神の眷属でも転生者の魂が死後、元の世界に帰る事が出来るかは知りようがないようだ。


「俺が死んだらどうなると思う?」


我ながら馬鹿な事を口にした。メルが俺を見上げるとキッと睨む。


「ホルストは死なない。私が死なせないから。ホルストはずっとずっと私と一緒なんだからね。変な事言わないでよ!」


そうだよな。こんな可愛い嫁や恋人達を残して死ねる訳無いよな。


「ごめんな、メル。俺達は永遠に一緒だもんな」


「うん」


俺に寄り添うメルの肩を抱きよせると、俺達は仲直りのキスをした。あつ〜いやつをね。


いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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