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第108話 彼女が大会に出た訳

今更だけど王都武闘大会というのは3日間に渡って行われるんだよね。


1日目は魔物と剣闘士との対戦、近衛や国軍の騎士や剣士による模擬試合などエキシビジョンを含めた前夜祭。


それに続く2日目は本戦日。


そして3日目は何をするかと言うと、武闘大会の各部門の優勝者と準優勝者に3位入賞者の3人がエスコートの女騎士と共に1台の馬車(オープンの奴な)に乗り、エスコートも含めて7台の車列で王都各街区のメインストリートをパレードするのだ。


それから大競技場で表彰式が行われ、興業主、じゃなくて王室から賞金と記念品(トロフィー的な小楯)、称号が贈られ、その後で王位継承順位1位にある王族から一人一人が有難いお言葉を賜るのだ。


因みに俺達をエスコートする女騎士は、女性王族を警護する女性のみで組織された白百合騎士団に所属している。白百合騎士団って、何か意味深だよな。


〜・〜・〜


3日目のパレードに参加させられるため、各部門の優勝者を始めとする入賞者達は2日目の全試合終了後から大競技場近くの高級宿に留め置かれている。


俺は2日目の夜になり漸くその高級宿でアイーシャに会う事が出来た。出来たのだけど、アイーシャには何故か余計なおまけが引っ付いていた。


「美しいアイーシャよ、僕こそ君に相応しい男だ。君は知っているだろうか?決勝戦で対戦した男女は結ばれるというこの大会のジンクスを。そう、まさにアイーシャと僕の事だよ!僕はアイーシャ、君に一目惚れだ。君に負けた事すら僕には甘美な思い出。どうか僕のこの愛を受け取ってくれないか?」


そんな聞いていてこっちが小っ恥ずかしくなる言葉を大袈裟な手振り身振りと共に一方的に囁かれ、アイーシャはというと心底うんざりした表情をしていた。


そのおまけが誰かといえば、剣術部門でアイーシャに敗れたイケメンエルフ剣士だ。


「アイーシャ」


俺が呼びかけるとパッと表情を綻ばせて駆け寄って来るアイーシャ。


「ホルスト様!」


そのままアイーシャを抱き止めると、俺もアイーシャの背中に両手を回して抱き締める。


「優勝おめでとう、アイーシャ。「剣王」か、凄いな」


「有難う御座います。ホルスト様こそ優勝おめでとう御座います」


そして声を潜めてアイーシャの耳元で囁くように尋ねる。


「で、アレは?」


「決勝戦の相手なんですけど、やたら言い寄って来て鬱陶しくて。私には恋人がいるって散々言っているのに本当にしつこくて困っているんです!」


そう言って俺を見つめるアイーシャの瞳は「恋人としてアレを何とかして」と如実に語っている。


「おい、何だ君は?僕のアイーシャに何をするんだ!アイーシャもこいつからさっさと離れるんだ」


俺への「こいつ」発言でアイーシャの両目がつぅと釣り上り、今にも食ってかかりそうに身構えるのがわかる。


「何だ君は?ってか。それよりも他人に名を尋ねるなら自分から名乗るのがマナーじゃないのか?俺は冒険者のホルストって者で、このアイーシャの恋人にしてパーティのパートナーだ。ついでに言えば今大会拳闘術での優勝者でもある」


そう一気に捲し立てると、一瞬うっと怯むイケメンエルフ剣士。だけどそこで持ち堪えるところは流石か。軽く咳払いをするとエベンスは反撃を始めた。


「僕はエベンス・マルグリット。マルグリット伯爵家の長男だ」


マルグリット?伯爵家?そう言えばゾフィの実家ってマルグリット伯爵家、だよな。そこの長男という事はこのイケメンエルフ剣士、ゾフィの兄って事になるのか?うん、ゾフィが俺の恋人の1人という事は言わないでおいた方が良いな。面倒事が増える。


「ゾフィさんの兄ですから、あまり邪険にも出来なくて…」


思わずアイーシャと目が合うとそのように耳打ちされた。


「その伯爵家のご長男さんが他人の恋人にちょっかいをかけるのはどうなんだ?アイーシャが美人なのはよぉ〜くわかるけどな。あんた、いい男なんだから他を当たってくれ」


さぁ、そう言われてイケメンエルフ剣士はどう出るか?


「ふむ。恋人がいる女性をその恋人の前で奪うというのも一興かもしれないが」


うわっ、そっち系かよ。こいつ最底だな。


「僕には寝取りの趣味は無いからな。そういう事なら失礼するよ。アイーシャ、君との熱い一時を僕は生涯忘れないよ。それじゃあミナレンサ(アデュー的なエルフの言葉)」


すかした野郎め、しかしラノベやアニメと違って呆気なく引いたな。しかし、イケメンエルフ剣士の奴、最後までアイーシャを呼び捨てにしやがったな。しかも何が「熱い一時」だ!剣術の試合だろ、それ。


アイーシャも去り行くイケメンエルフ剣士の後ろ姿をうへぇといった感じで見ていた。


〜・〜・〜


所変わってここは俺達表彰予定者が宿泊する宿のラウンジ。俺とアイーシャはイケメンエルフ剣士のエベンスを追っ払うと、ここ2〜3日間の積り積もった話をするため2人で河岸を変えてラウンジ隅の席に移った。


俺の正面に座るアイーシャは少し決まり悪そうにもじもじしている。ここは俺の方から口火を切るのが良いだろう。


「なぁ、アイーシャ」


「は、はい」


俺に声をかけられてビクッとなるアイーシャ。その姿は出会った頃の出来る女風でもなく、凛々しく戦う女戦士でもない、まるで叱られる事を恐れる子供のようだ。


「あのエベンスだっけ?決勝戦見てたけど、あいつ強かったろ?」


「…はい。ゾフィさんのお兄さんが剣の使い手とは聞いてましたけど、あれ程とは思いませんでした。しかもこの大会に出場して決戦で当たるなんて。本当、ギリギリだったんです」


俺がエベンスとの決勝戦の話を振るとアイーシャはホッとした表情を見せる。だけど、決勝戦の様子を聞くに本当にギリギリの僅かな差で勝利を手にする事が出来たようだった。


「ホルスト様が教えて下さった戦法が無ければ、何れジリ貧で私が負けていたと思います」


アイーシャが言った俺が教えた戦法。それはここぞという時には固定概念に縛られず相手の意表を突く行動に出ろというもの。


あの決勝戦の終盤でエベンスの胴を払おうとして阻止され、もうここでエベンスから一撃貰ってアイーシャの負けという場面。ここでアイーシャは地を蹴って右斜めに跳び地面を一回転。そしてエベンスの左大腿に痛打を与えて勝利へ繋げている。


「そうか。あれが生きたのなら俺も嬉しいよ」


「はい」


ニコニコして朗らかに返事するアイーシャには悪いのだけど、訊く事は訊かないと。


「それはそれとして、アイーシャ、君が武闘大会に出場した真意は?」


それまでの笑顔から一転してうっと言葉を詰まらせるアイーシャ。俺は怒っている訳じゃないと伝えると、漸くアイーシャは口を開いた。


「あの、私、ホルスト様から第1王子との面会について頼まれていたのに第1王子側から十分な回答を引き出す事が出来ませんでした。ですから、その、私も武闘大会に出場して優勝すればホルスト様との優勝2人分で更に第1王子と接触出来る機会が多くなると、そう思ったのです」


「…」


それで本当に優勝してしまうのがアイーシャの凄いところだ。しかし、そうすると俺一人の力ではなく、言葉は悪いけど女の手を借りて云々という解釈になりかねない。


だけどその事は言うまい。


「そうか。俺のために頑張ってくれたんだな。アイーシャ、本当に有難う。とても嬉しいよ」


「ホルスト様…」


アイーシャの気持ちは嬉しい。だけど言うべきは言わないと、だな。


「俺もアイーシャに何の相談もせず動いてしまった事は申し訳なかったな。これからはアイーシャにもメルにもメリッサにも相談するよ。だからアイーシャも思うところは俺に話して欲しい。何だって聞くから」


「はい、ホルスト様」


口に出しさなくても分かり合える事があれば、言葉にしなければ通じない思いもある。それは例え相手が妻であろうが、恋人であろうが誰であっても一緒だ。俺達は王都に来てパーティを組んでから暫く経つものの、ダンジョンでのクエスト以外の活動はしてこなかった。だから自然と互いに慣れが生じていたのかもしれないな。その結果がパーティメンバーのアベック優勝とか、皮肉なものではあるけど。


その後、俺はしゅんとするアイーシャを慰めつつ彼女の部屋まで送って行った。尤も、おやすみと言ってドアを閉じようとしたら中からアイーシャに手を握られて部屋の中に引っ張り込まれてしまったのだけど。


いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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