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第97話 暗殺者

貴族街はこの国でも身分の高いお貴族様や平民でも富裕層が暮らしている。そんな街区だから衛兵の見回りや大身の貴族家の私兵による警備もあってこの世界では比較的治安が良い場所ではある。


だがしかし、それは飽くまで「比較的」の話しだ。この剣と魔法の世界には街灯なんて無いし、夜ともなれば貴族街といえども人気の無い暗がりがそこここに出現する。前世での日本のように夜中に女性が酩酊していても通行人が救急車を呼んでくれたりする親切で安全な街では絶対にない。


しかも、貴族街には貴族の館を専門に狙う盗賊団も出没するし、政敵から放たれた暗殺者と護衛の暗闘も普通にあるという。また、ギルド本部で聞いたところによると、貴族に虐げられた人々で結成された貴族制度打倒を掲げる秘密結社が存在し、具体的な事案まではわからないものの貴族に対するテロ行為も行われているという。だから貴族街といえど安全では決してないのだ。


俺はねちっこく俺を付け狙う連中を片付けるため、何も気付かない体で空き屋敷が作り出す荒事におあつらえ向きな暗がりへと向かう。


案の定、連中はそのまま着いてくる。気配は四つで、その中の一つは強烈な殺気を放っている。そいつが誰だか知らないけど、そいつははっきり言って暗殺者としては落第もいいところだ。こんなに殺気を放っていれば「私、これからあなたを殺しに行きます」と言っているようなものだからな。


もう随分と暗がりの奥へと進んだ。そろそろ頃合いだろう。


「姿を見せろ。俺に用があるんだろう?」


そう振り向いて俺が煽ると早速ご返杯とばかりにナイフが放たれた。俺は自分目がけて飛んできたナイフを左手で掴み、そのまま投げ手に向けて投げ返す。


「うぐっ」とくぐもった呻き声が聞こえた。俺が投げ返したナイフはバッチリ投げ手に刺さったようだった。これぞ某一子相伝の暗殺拳の奥義「ニ○真空把」を再現した技「擬似ニ指真空把」。


あっ、気配が一つ減った。どうやら俺に放たれたナイフには致死性の毒が塗ってあったようだな。


3人に減った暗殺者達は一際強い殺気と威圧感を放つ大柄な奴を中心に手下?が左右一人ずつ配置され、俺を半包囲するように迫る。


まぁ、それはいいのだけど、折角最初は4人いたのに1人が軽率にナイフなんか投げるから無駄に戦力を減らしている。そんな事せずに問答無用で4人一斉に俺に襲いかかったほうが余程勝機があったと思うのだけどな。


さて、暗殺者どもが俺の暗視能力で顔が視認出来る距離まで詰めて来た。顔が見えたところでおそらく顔は隠しているだろうからあまり意味はない。さっさと片付けて、と思っていると真ん中の奴が俺の名を呼んだ。


「ホルスト、久しぶりだな」


ん?誰?と思うもそいつの声を聞いて思い出した。


「お前、ジードか?」


そいつはラース辺境伯家の寄子カリスト男爵の元長男で跡継ぎであったジードだ。この男、今から約3年前の元服の儀で念願だった「剣士」の能力を授った。それによって調子に乗った奴は儀式の最中に何故か俺に絡んで返り討ちにされ、寄親の居城で抜剣して暴れた咎で廃嫡の上で奴隷に売られた、筈だったけど、何でここにいるのだろう?


「お前、どっかの鉱山で穴でも掘ってるかと思ってたよ」


「ぬかせ!俺には「剣士」の能力があるからな。俺は剣闘興行師に買われて奴隷剣闘士としてコロッセウムで日々戦い生き残って来た。そしてそんな俺に目をつけた暗殺者ギルドに身請けされてこうして貴様の前にいる。第1王子に与する金級冒険者を始末しろという依頼を受けたら貴様だとはな。俺は初めて神に感謝したぞ」


「そうかい。訊いてもいないのにベラベラと情報を喋ってくれて有難うよ。相変わらずの馬鹿で助かるよ」


「貴様!」


ジードは怒声と共に抜剣しつつ距離を詰め、下段からの凄まじい斬撃を放った。剣闘奴隷でいた3年間がジードの腕を上げているようだ。だがしかし、こいつはどんだけ俺が憎いのか、殺意が強すぎて動きが全て読めてしまうのだ。


俺はバックステップして上半身を反らせてジードの斬撃を避ける。と同時にちょっと間を詰めて左上段の横蹴りを斬撃を放ってガラ空きとなったジードの右頬にヒット。しかし、体勢的に蹴り込めず威力が足らなかった。


ジードはそこは流石に歴戦の剣士。その大柄な体格で重心を取ると、俺の蹴りに耐え切った。まぁ、威力の乗りきっていなかった蹴りとはいえ、以前の奴ならぶっ飛んでいた筈だ。


「少しは成長したな」


()れ!」


蹴りを食らった影響が残るのか、ジードは俺は頭を何回か降ると両脇の手下に俺に襲い掛かるよう指示を出した。


と同時に別方向から数本の矢が俺に放たれた。実は誘い込んだつもりが誘い込まれたのは俺の方とか?まぁどちらであっても関係ない。俺と敵対しようというなら皆殺しにするだけだ。


飛来する矢を電磁バリアを展開して防ぐ。最近は修行の成果かラジャータを使わない技はそのまま出せるようになったのだ。


飛来する矢と僅かな時間差でジードの手下二人が短剣を構えて襲いかかる。この2人はジードのように殺気は放たず、ある意味ジードよりも暗殺者としては優秀だ。俺に武器を出す暇を与えない。


なので俺は瞬時に両手を6番目の昭和ライダー様に変化させて手下2人の胴を薙ぎ、更に頭から縦に切り裂く。


「大切断!」


ジードの手下2人はそれぞれ6番目の昭和ライダー様に硬く鋭くなった俺の爪で縦横に切り裂かれると、バラバラの物言わぬ肉塊となって路面に崩れ落ちた。


「それが貴様の能力か?」


自分の部下達がそんな事になってもジードに動揺した様子は無い。


「その一部だがな。だけど、お前も一角の剣士になったようだからな。剣士には剣で葬ってやるよ」


俺はラジャータを召喚させると5番目の平成ライダーの武器ブレードに変化させて構える。


「ホルスト、俺は今までの俺じゃねぇ」


俺とジードは暫く対峙すると突きを放ち、俺がブレードでいなして互いに数太刀打合い鍔迫り合う。


「この3年間、貴様への恨みだけが俺を支えた。傷を負いその痛みが貴様への恨みを思い起こさせ、俺を奮い立たせて来た」


俺も恨まれたものだ。だけどお前がいつも一方的に俺に因縁付けてきたんじゃないのか?


「貴様だけは俺が必ず殺す!」


ジードは俺から離れて距離を取ると、八相の構えから袈裟斬りに鋭い斬撃を放った。俺は斬撃を半身を切って避け、ブレードで振り切った瞬間の奴の剣を上から押し伏せ、ブレードに力を加えてジリジリと切っ尖を下げる。


ジードは自分の剣をブレードの圧力から逃そうと力を込めるが2号ライダーの剛力からは逃れる事は出来ない。


こうした場合はさっさと剣を手放せば良い。だけどジードは剣士だからなのか、それともそうした考え自体が思い付かないのか剣を手放そうとはしない。


「剣士」の能力に優れた運動神経、恵まれた体格と膂力。それに加えた3年に及ぶ剣闘奴隷としての経験値がジードを優れた剣士に成長させた。剣士としてある事が奴の存在意義となっているのだろう。だけど、今回はそれが逆に奴の命取りとなる。


俺がブレードにかける力を解くと、ジードの剣は自身が力を加えていただけに一気に跳ね上がる。そして俺はガラ空きとなったジードの胸部の中心をブレードで貫いた。


「ぐあぁ」


ジードが呻き声を上げる。


ブレードはおそらくジードの右肺と右心室を切り裂いて背中から突き抜けた。ゴフッと大量の吐血をして崩れるように膝を突き、そして前向きに倒れるジード。


周囲に俺を狙う者の気配は無い。矢を放った奴等は既に逃げ去ったようだった。


俺が致命傷を受けたジードを見下ろすと、奴は苦しいのか自ら仰向けになると俺を見て口を僅かに開く。俺は片膝を突いて奴に耳を傾けた。


「何か言いたい事があるなら聞いてやるぞ?」


ジードには僅かな逡巡が見られたけど、やがて徐に口を開く。


「俺は、お前が羨ましかった。美男子で頭が良く、剣と魔法も上手く使えて、お、おまけに、可愛い幼馴染を恋人にしやがって。俺が、どんなに望んでも、手に入らないものを、ぜ、全部持ちやがって。だから、お前を、憎んだ」


ジードは息も絶え絶えに、時折吐血しながらそんな事を口にした。


「そうか。俺は逆にお前が羨ましかったよ。男爵家の跡取り息子で、家族に愛されて、仲間や友達もいっぱいいてな。俺なんか親には相手にされず、兄弟には嫌われ、友達もいなくて家にも領地にも居場所なんか何処にも無かった」


ジードはそんな俺の愚痴を聞くと少し黙り、そしてフッと寂しげに笑った。


「互いが互いを羨んで、いたという、事か」


「そういう事だな」


「全く、俺は、本当に、馬鹿だったよう、だな」


ジードは最後にそう言うと息絶えた。


〜・〜・〜


ジードを殺した事に特に思う事はない。言ってみれば自爆して奴隷になった嫌いな奴が逆恨みを拗らせて襲って来たのを返り討ちにしただけだからな。だけどまさかジードが暗殺者になっていて、こんな所で奴に襲われるとはね、とは思った。


しかし暗殺者が俺を狙って来たという事は第2王子派は遂に俺を第1王子に与する者として排除に動いたという事だろうか。証拠がないから何とも言えないけど。


ただ、はっきり言って会った事も無い奴の仲間だと思われるだけでも迷惑な上、更に命まで狙われるとかこれは洒落にならないレベルだ。


俺だけならまだしも、今の俺には守るべき妻に恋人達に妹がいる。みんなの安全のためマリーが言ったようにこれは勇者クリスの館に皆で暫く居候しなきゃダメかな。


いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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