表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/73

外伝Ⅸ カプアと幽霊船⑤

☆★☆★ もうすぐ発売 ☆★☆★


5月9日単行本10巻発売!

『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』(10)

気が付けば、今週発売です。

ご予約お願いします。


挿絵(By みてみん)


「ぬおおおおおおおおお!!」


 俺は甲板を横切り、一気に海に向かってダイブする。

 なんだ。簡単に脱出できるじゃねぇか。

 そう思ったのもつかの間、俺は再び幽霊船の甲板に戻されていた。


「し、ししょー?」


「聖者様、どうしたんですか?」


 突然奇行に走ったかと思えば、突如甲板に現れた師匠を見て、自称弟子たちが驚く。

 俺も呆然としていた。ループ系の結界か、おそらく呪いの類いだろう。

 この手の奴を解呪するのは、かなり難しい。

 即死魔法を打ち込んでも、キャンセルすることはできないだろう。

 対象がはっきりしたものではないかぎり、死を与えることは不可能だからな。


 試しにパフィミアにも同じことをやらせてみたが、結果は同じだった。

 魔族、人類関係ないようだ。


「ね? 出られないでしょ?」


「〝ね?〟 ――じゃねぇんだよ! とんだポンコツ幽霊船じゃねぇか」


「いや、むしろ褒めるべきですよ。本当の幽霊船を作ったんですから」


「なんで誇らしげになれるんだよ。どうにかしろ。お前らが作ったんだろ?」


「いえ。それが私たちじゃないんですよ」

「実は、幽霊船を作った魔族が誰かわからなくて」

「新人が作ったんじゃないかってぐらいしか」


 幽霊船を作った魔族が誰かわからないって。

 おいおい。さっきの風通しのいい職場はどうした?

 ここから出るには、幽霊船の制作者の協力は必要不可欠だ。

 なんとしてでも、見つけなくては……。

 さすがにこんな薄気味悪いところで、セカンドライフはしたくないぞ。


 一応俺から他の魔族に尋ねたが、誰も幽霊船製作に関わっていないそうだ。

 それじゃあ、誰が幽霊船を作ったんだよ!

 絶対誰か黙秘してるだろ。


「聖者様、1つお尋ねしたいことが……」


 俺とリトたちがギャーギャーと言い合いをする中、シャロンが心配そうに進み出てくる。

 側にはパフィミアの姿もあった。


「王女様の姿がないんだよ。他の船員たちもいるのに」


 後ろには魔族に交じって、転覆した船員たちの姿もあった。


 そう言えば、幽霊船に初めて来た時、船底の檻にマリアジェラがいたな。

 俺が逃げちまったから、その後どうしたのかわからねぇけど。

 ともかく、俺はその事情を弟子たちに話した。


「え? マリアジェラ王女が船底の檻にいる?」


「あいつらしいといえば、あいつらしいけどな。でも、なんか様子が変だったな」


 俺の顔を見るなり、悲鳴を上げていたし。

 いつもなら「愛のヴェーゼを!」と気持ち悪いこといいながら、タコみたいに唇を伸ばして、キスしようとしてくる癖に。


 幽霊船のことは一先ず置いて、俺は弟子’Sと、リトたちを連れて船底に行く。

 早速、聞こえてきたのは、か細い震えた声だった。


「1枚……2枚……3枚……」


 冷静に聞いてみると、マリアジェラに似てなくもない。

 ただあいつがこんな声を出したところを、俺は見たことがない。

 まあ、そもそも変態王女って以外に、興味などサラサラないけどな。


「……9枚! ああ。また足りない! 一万札が足りない!!」


 檻の中でマリアジェラが頭を抱えていた。


「マリアジェラ王女! シャロンです。もう大丈夫ですよ」


「そうだよ。ししょーもいるよ。安心して」


 おい。余計なことを言うな。

 俺としては一刻も早く離れたい相手だというのに。


 帰ろう、と格子の向こうから弟子たちは説得を試みる。

 だがマリアジェラは動こうとしなかった。

 頑なに首を振るどころか、さらにヒステリックに叫ぶ。


「いや! いや! あたくしはここにいます」


「一生幽霊船で過ごすことになるんだよ」


「それでいいです」


 なんかやっぱおかしいぞ、あのマリアジェラ。

 もしかして、取り憑かれてる。

 面倒だな。普段から獣か悪魔かに取り憑かれてるような奴だから、よくわからぬ。


「あたくし、もう帰りたくないです。あの職場にはもう2度と。だから、あたくし……」


「あの子、なんか取り憑かれてますね」

「職場とか言ってるし」

「うちのゴーストに取り憑かれましたかね」


 どうやら、そうらしい。

 さっきから1万札がどうのこうのと言ってるのも、魔族で出回っている紙幣のことだろう。人類圏では貨幣が一般的だが、魔族圏では紙幣が出回っている。


 貨幣は使うよりも、愛でるものだからな。魔族圏なんかで金貨が出回った日には、たちまち種族間で取り合いになるだろう。

 それほど魔族たちは、宝石や綺麗なものが好きなのだ。


 ということは、マリアジェラに取り憑いている奴も魔族ってことか。

 当人が大人しくしている間に、一応質問だけしておくか。


「なあ。あんた、名前は?」


「…………」


 無視かよ。

 なんかマリアジェラの顔で、素っ気なくされるのって微妙にグサッとくるな。

 普段は鬱陶しいぐらいすり寄ってくるのによ。


「おい。名前ぐらいいいだろ」


「あなたは嫌いです」


 これまたマリアジェラの口から漏れた言葉とは思えないな。

 弱ったな。こいつ、結構陰キャだぞ。俺も大概だけど……。


「聖者様、マリアジェラ様は一体……」


「どうやら、ゴーストに身体を乗っ取られたらしいな」


「じゃあ、シャロンの浄化魔法で成仏させれば――――」


 すとぉぉぉぉっっっっっっっぷ!!!!

 やめろ。サラッと怖いことをいうな。

 パフィミア。お前が言ったことは、大虐殺のスイッチなんだぞ。

 ゴーストはおろか周辺の魔族全員消し飛ぶわ!


「待て、パフィミア。なんでも安易に魔法に頼るのはお前の悪いところだ。ゴーストにも良いゴーストと、悪いゴーストがいる。無理矢理引き剥がすのは、そいつの尊厳を無視することなんだぞ」


「さすが聖者様。ゴーストにまで情けをかけるとは……」


「わかったよ、ししょー。僕が間違ってた」


 シャロンが称賛すれば、パフィミアは頭を下げる。

 うむ。相変わらず、ちょろい勇者と聖女である。


 そもそも仮にゴーストだけを払えたとして、このややこしい状況でマリアジェラにまで出っ張られると、俺の精神が持たない。

 しばらく大人しくしておいてもらった方がいいだろう。


「よろしければ、聖者様。わたくしがお話しましょうか?」


「大丈夫か、シャロン」


「以前狐憑きの方と対話したことがあって。その時、見事狐の霊を追い払ったことがあります」


 (けもの)とゴーストでは天と地の差があるけど、本人がやる気になってるんだからいいか。

 どっちみち俺は嫌われてるようだし。

 俺はシャロンにお願いすると、代わりに松明を持っていてほしいと頼む。

 その光を近くの壁に当てるように指示された後、シャロンは指で独特の形を取る。

 指の影が壁にできる。それは狐の形になっていた。


「コンコンコン……。あなたはどなた?」


 ここに来て、影絵かよ。

 いつからここは子どものお遊戯会になったんだ?

 シャロンに悪いが、マリアジェラについているのは生粋の魔族だ。

 そう簡単に応じるわけが……。


「コンコンコン……。あたくしはアモーレです」


 そろそろと狐の形をした影絵が出てくる。


 通じるのかよ!

 どうやらちょろいのは、うちの勇者と聖女だけではないようだ。


 俺はシャロンにアモーレに聞いて欲しいことを耳打ちする。


「アモーレ。わたくしたち幽霊船を作った人を捜してるんだけど、何か知らない?」


「知ってます」


「本当ですか?」


「はい。だって……」



 あたくしが作ったんですから。


☆★☆★ 5月刊 ☆★☆★


5月15日単行本9巻発売!

『アラフォー冒険者、伝説となる ~SSランクの娘に強化されたらSSSランクになりました~』


挿絵(By みてみん)



☆★☆★ 好評発売中 ☆★☆★


『獣王陛下のちいさな料理番~役立たずと言われた第七王子、ギフト【料理】でもふもふたちと最強国家をつくりあげる~』が、好評発売中です。

GWの帰りの車中、待機時間の列の間のお供として、サクッと読んでください!

よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ10巻5月9日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる10』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス9巻 5月15日発売!
70万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



最新小説! グラストNOVELS様より第1巻が4月25日発売!
↓※表紙をクリックすると、公式に飛びます↓
『獣王陛下のちいさな料理番~役立たずと言われた第七王子、ギフト【料理】でもふもふたちと最強国家をつくりあげる~』書籍1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本2巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シリーズ大重版中! 第4巻が4月18日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本4巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス第4巻2月24日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



今回も全編書き下ろしです。WEB版にはないユランとの出会いを追加
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』待望の第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


12月10日発売! 全編書き下ろしですよ~。
↓※タイトルをクリックすると、カドカワBOOKS公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる2』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

ヤングエースUPコミカライズ配信中!
『ゼロスキルの料理番2』

好評発売中です。最強の村人の成り上がり!
『劣等職の最強賢者~底辺の【村人】から余裕で世界最強~』


小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ