表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/9

幕間~姉のつぶやき~

side エイヌ


 可愛い可愛いと育てられた。

 銀色の髪と青い瞳を持つ、私はイベロヒー。


 父は人間と兎獣人両方の血を引く。

 若い頃は王国の騎士だった。

 母は、兎獣人と高山に住む山羊獣人の間に生まれた者。

 容姿は美しく、好き嫌いが激しい女性。


「あなたは領地内は勿論、王国でも一番の美人になるわ」


 母は私に王国貴族の子女と変わらないほどの、お金をかけて育てていた。


 ある日、母のお腹が大きいことに気付いた。

 弟か妹ができるという。


 近くに住む、お友だちのスキラがこんなことを言った。


「あらエイヌ、可哀そう。きっとお母様の愛情は、全部下の子にいくわ」


 スキラはリスの獣人。

 木の上から私を見下すように言った。


 イラっとした。

 可哀そうって何よ!


 怒鳴った私を見たスキラは、クスクスと笑いながら、森の中に消えて行った。



 私は不安になった。

 もしも……。

 もしも母が私よりも下の子を、下の子だけを愛するようになったら……。


 私はどうなるのだろう……。


 月満ちて、下の子が産まれた。

 妹だった。


 獣人の血を引く子どもは、赤ちゃんの時は獣の色が濃く出る。

 生まれたばかりの妹は、ホワホワの毛に包まれた、子ウサギそのものだった。

 目も開かない妹の耳は、とっても小さい。


 素直に可愛いと思った。

 同時に不安が押し寄せた。


 こんなに妹が可愛いのなら、母の愛情は全部、妹に取られてしまう。



 それは……。

 嫌だ!


 私は考えた。

 まだ二歳だったが、知能は発達していた。

 そして特異能力をいくつか、生まれながらに持っていた。


 外見の美しさと、兎獣人特有の超聴力。

 更に、周囲に敵がいないかを瞬時に判断する、索敵も。


 索敵は敵を察知するだけでなく、敵を幻惑することも出来る。

 そう、自分の思った通りに、敵を誘導することが。


 私は家の中でも、索敵を大いに活用した。

 妹へ向ける愛情を、全部私へ振り替えるために。



 キーワードは「可哀そう」だ。

 例えば妹のコーニイが泣いていたら、母にこう言う。


「可哀そうね、コーニイ。泣いてばかりで、これではお母様、疲れが取れないわね」


 母は私を見て微笑む。


「あなたが居てくれるから、お母様は大丈夫よ」


 私のとって望ましいことに、コーニイは成長すると、私ほどの美貌がないことが分かる。

 母はコーニイよりも、私を優先してくれる。

 母にとって、イベロヒーの長女は、自慢の娘なのだ。

 妹はオマケみたいな扱いになる。


 やった!

 妹に勝った!

 勝ったなら、妹の物を、貰っても良いよね。


 コーニイは半分垂れ耳なので、超聴力を持っていないようだ。

 だから何度も私はコーニイに言った。


「可哀そうなコーニイ! あなたには、何もないのね。美しさも、特異能力も」


 嫌な言葉でしょ、『可哀そう』って。

 何度も繰り返すと、コーニイは自信を失くしていった。


 コーニイが幼馴染のローレンを好きだと知っていた。

 でもローレンは私に熱い視線を向けてくる。


 私は王都で高位貴族と結婚するの。

 ローレンくらいなら、コーニイにあげてもいいわ。


 王都の高等学校でも、気に入らない女子には超聴力で弱味を探り、目の前から排除した。

 素敵な男子には索敵を使い、相手から告白させた。

 何組かのカップルが、破綻したと聞いたけど、私のせいじゃないわ。


 そんな時、王族の一人と、深い関係になった。

 この人ならば、結婚しても良いと思った。

 婚約者はいたけれど、私に夢中になって、婚約破棄すると言ってくれた。


 だけど、結局、婚約は続行された。

 私のことを、何人もの女子が学校長に訴えていたのだ。


――こんなに君の評判が、悪いとは知らなかったよ


 私は捨てられたの!?

 私はイベロヒー、優秀な者なのよ!


 学校から、退学勧告が出た。

 今なら「自主退学」扱いにすると言われた。


 私は学校からも見捨てられ、仕方なく家に戻った。

 誰かと早く、結婚しなければ!

 焦る気持ちを抑えて母と話をしていると、私の耳に、コーニイとローレンの楽しそうな声が届いた。


 この際、ローレンでいいわ。

 コーニイのがっかりした顔も、見ることが出来るし。


 だからダメよ、コーニイ。

 この家から出て行くなんて言わないで。


 私たち、姉妹でしょう。

 とても、とっても仲の良い、姉と妹なのだから。




 なのにローレンたら、何で止められないのよ!

 あなたは熊獣人の息子だって、自慢していたじゃない!


 なんでアナグマなんかに負けるのよ!


 行かないでコーニイ!


 あなたは……。

 あなたは、可哀そうな妹のまま、いてくれないと困るのよ!

ここまでお付き合いくださいまして、ありがとうございます!!

誤字報告、助かっております。


完結まで、あと少し、お付き合いくださいますよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 仲がいいって解釈を大いに間違えてますなぁ姉ちゃん(;'∀') 喧嘩とかしない=仲がいいってワケやないぞ(;'∀')
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ