トレーダー
巨大な石を積み上げて作ったであろう塀を横目に、カラカラと音を立てて進む馬車はやがて門を抜け、雑踏の中へと踏み込んでいく。
ダルアの街に到着したのだ。
大通りには店が軒を連ね、屋台から漂う香ばしい匂いが食欲をそそる。
街を行き交う人々はこちらを見たとてすぐに目線を切り、それぞれの目的地へと足を進める。
ここはアーケの城下町と各街を繋ぐ行路の中継地点になるため、交易の馬車など見慣れているのだろう。
まずはギルドへ向かい素材を売却した後、宿の手配をする。
馬小屋を備えた宿屋も比較的多く、高価ではあるが無事確保する事が出来た。
宿に泊まり旅の疲れを癒す。
夕食は穀物を粗く煮込んだオートミールの様な粥に、パン、何の肉か分からないがハム、ベーコンをエールと一緒に流し込む。
隣の席では「俺の皿の肉を取った、取らない」などと、くだらない喧嘩が始まり、やがて掴み合いの喧嘩に発展したとこで兵士に仲良く連れて行かれる。
こんな事は日常茶飯事なのだろう。
歌を歌いながらエールを飲み、どちらが勝つか賭ける者もおり、兵士が来た途端他人事を装い、大人しく杯を傾ける。
ある一団が目に付いた。
三人が机を囲み、その後ろに武装した二人が壁を背にして立ち、周りに目を光らせる。
その隣のテーブルにも三人が席について食事を取っているが、会話は少なく何かを警戒している素振りが見られる。
中央の一見質素だが採寸がきちんと取られた服を着ている三十代半ばの男を除き、全員が荒仕事を生業とする者のように思えた。
貴族? いや自分と同じ様にキャラバンを率いる商人かも知れない。
隣の席の男達も護衛なのだろうか。
少し考えた挙句、彼らと接触してみる事にした。
店の給仕に頼み彼らにエールを運んでもらう。
次々と運ばれるエールに眉を顰める彼らに、給仕がこちらを指差しなにやら囁く。
最初からこちらを見ていた者、話しを聞いてからこちらに目を向ける者、酒を見て気付いた者と様々だ。
しかしこちらが杯を持ち上げると意図が通じたのだろう、同じく杯を持ち上げる者とより警戒を強める者がいた。
「兄弟、もう一杯どうだい?」
進められるままにもう一杯飲む。やはり彼らは行商人とその護衛だったようだ。
最初はお互い警戒していたが、リーダーであろう商人の男は名をグランカーと言い、話が面白く次第に打ち解けていった。
聞くとアーケの城下町からルクセリオの街へ向かう交易の途中らしい。
良かったら商品の交換、もしくは売買をしないかと持ち掛けて来たのだが……
俺が今回運んだのは、ニンニク、調味料、ドライフルーツ、織物だ。
この街で売った場合
1、ニンニク―――――――――100銀➡102銀
2、調味料――――――――――100銀➡102銀
3、ドライフルーツ――――――200銀➡320銀
4、織物―――――――――――100銀➡120銀
合計―――――――――――――500銀➡644銀
程度になると予想される。
彼らは全て欲しがっているようだ。積み荷をある程度減らす事が出来たら、ルクセリオには行かずアーケの城下町に戻るらしい。その方が利益が出るようだ。日程的にも人件費を抑える事が出来る。
こちらとしてもアーケまで売りに行く事は出来ない。依頼の積み荷をデッサまで輸送しなければならないからだ。これは渡りに船と言えるかもしれない。
彼らが提示した商品は以下の通りだ。
1、ガラス細工――――――――200銀
2、銀細工――――――――――500銀
3、染料―――――――――――100銀
4、陶磁器――――――――――200銀
5、船材―――――――――――200銀
6、宝石―――――――――――800銀
物々交換の場合、商会の利益を考慮しなくていいため、こちらの商品は770銀ぐらいの価値と考える。
さてどうするか……。
まずは、宝石は見ても価値が分からんので真っ先に除外。
次に船材は売るのに苦労しそうなので却下。
となると……。
考慮の結果、ガラス細工、銀細工、染料をこちらの商品全てと交換する事にした。
見た目で判断し易い物を選んだつもりだ。
さらにどれも破損、転倒などで運搬しにくく、交渉を有利に進める事が出来たからだ。
カードにする事により破損のリスクを抑える事が可能であるが故の選択であろう。
積み荷の確認と交換は明日とし、食後は水風呂に入り寒さに震えながら体の垢を落とす。
そして牛の様子を見てから就寝とする。




