3.ジャックの事情。
あとがきに新作_(:3 」∠)_
――そんな一件から、またしばらく経って。
季節は夏季を終え、肌に触れる風も冷たくなってくる頃合い。雪の降る季節に少しずつ、足を踏み入れようとしていた。
そんなことを考えつつも、いつものように依頼をこなしていると……。
「え、ジャックさんたち結婚するんですか!?」
「あぁ、そうなんだよ」
その日、偶然にも修繕の依頼をしに訪れていたリンドさん。
彼はいつものように微笑みながら、そんな幸せな報告をしてくれたのだった。どうやらジャックさんとリコさんは、正式に婚姻を結ぶことにしたそうだ。
そのことに、ボクはアーシャと顔を見合わせて笑い合う。
彼らの関係は誰もが知るところだ。
これ以上の報告はない。そう思っていた。しかし、
「だけど、少しだけ問題があってね……」
リンドさんはその笑みに若干の曇りを浮かべ、こう語るのだ。
「婚姻を結ぶのであれば誰からも認められ、祝福されるべきだ」――と。
そう前置きをしてから。
◆
「ジャックさんの実家、ですか……?」
「あぁ、そうなんだ。彼の実家は名門騎士の家系であり、跡継ぎだった。当然、ジャックは将来を嘱望されて、期待を一身に受けて育ったんだ」
「………………」
ボクはリンドさんの話を聞いて、思わず黙り込んでしまう。
ジャックさんの実家はエルタ王国でも有数の名門騎士家系であり、彼はそこの嫡男に他ならなかった。そして彼の父親も、幼いジャックさんに期待をかけて厳しく接してきたという。ひとえに次期当主を立派に育て上げよう、という一心からだったそうだが……。
「ただ、あまりに厳格な教えから、彼らの間に亀裂が生まれてしまってね。ジャックは何も言わず家を飛び出して今に至るのだけど、さすがに婚姻を結ぶとなると無視はできないんだ」
リンドさんは事情を知りながらも、深入りすることは避けていた。
それでも、婚姻となれば話は別なのだろう。先ほどの彼の言葉にもあった通り、誰からも祝福されるべき、というのはそういうことだろう。
ボクもそれには賛成し、一つ頷いた。
「結婚相手の紹介をするよう伝えると、ジャックたちは渋い表情で頷いてくれたよ。ただ、どうにも心配でね……」
「……なにが、そんなに心配なのですか? リンド」
彼の話に、一つ訊ねたのはアーシャ。
少女がそう言って首を傾げると、リンドさんは困ったように頬を掻いた。
「……いえ、これは説明に難しいですね」
そして、さらに困った様子でこう続ける。
「とにもかくにも、私が同行できれば良いのですが。二人が挨拶に向かう日、こちらは国王陛下からの呼び出しを受けておりまして、そちらに赴かなくてはいけないのです」
「ふむ、それは困りましたね……」
なるほど、とボクは状況を理解した。
アーシャも同じく、頬に手を当てて考え込んでいる。とにかく、リンドさんは二人の挨拶に同行できない。そうなると、同行できるのは――。
「そこで、忙しいところ申し訳ないのだけど。今回の一件、二人の事情に詳しいライルくんにお願いできないかな、と思ってね」
――どうやら、ボクということになるらしい。
リンドさんは苦笑しながら、そう言って頭を下げるのだった。
「……分かりました!」
他ならないリンドさんの頼みだ。
それに、二人には幸せになってもらいたい。
そう考えれば、ボクに断るという選択肢はなかったのだった。
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修繕師寄りなハイファンタジーです(*‘ω‘ *)
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