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3.ジャックの事情。

あとがきに新作_(:3 」∠)_








 ――そんな一件から、またしばらく経って。

 季節は夏季を終え、肌に触れる風も冷たくなってくる頃合い。雪の降る季節に少しずつ、足を踏み入れようとしていた。

 そんなことを考えつつも、いつものように依頼をこなしていると……。




「え、ジャックさんたち結婚するんですか!?」

「あぁ、そうなんだよ」




 その日、偶然にも修繕の依頼をしに訪れていたリンドさん。

 彼はいつものように微笑みながら、そんな幸せな報告をしてくれたのだった。どうやらジャックさんとリコさんは、正式に婚姻を結ぶことにしたそうだ。

 そのことに、ボクはアーシャと顔を見合わせて笑い合う。



 彼らの関係は誰もが知るところだ。

 これ以上の報告はない。そう思っていた。しかし、




「だけど、少しだけ問題があってね……」




 リンドさんはその笑みに若干の曇りを浮かべ、こう語るのだ。




「婚姻を結ぶのであれば誰からも認められ、祝福されるべきだ」――と。




 そう前置きをしてから。









「ジャックさんの実家、ですか……?」

「あぁ、そうなんだ。彼の実家は名門騎士の家系であり、跡継ぎだった。当然、ジャックは将来を嘱望されて、期待を一身に受けて育ったんだ」

「………………」



 ボクはリンドさんの話を聞いて、思わず黙り込んでしまう。

 ジャックさんの実家はエルタ王国でも有数の名門騎士家系であり、彼はそこの嫡男に他ならなかった。そして彼の父親も、幼いジャックさんに期待をかけて厳しく接してきたという。ひとえに次期当主を立派に育て上げよう、という一心からだったそうだが……。




「ただ、あまりに厳格な教えから、彼らの間に亀裂が生まれてしまってね。ジャックは何も言わず家を飛び出して今に至るのだけど、さすがに婚姻を結ぶとなると無視はできないんだ」




 リンドさんは事情を知りながらも、深入りすることは避けていた。

 それでも、婚姻となれば話は別なのだろう。先ほどの彼の言葉にもあった通り、誰からも祝福されるべき、というのはそういうことだろう。

 ボクもそれには賛成し、一つ頷いた。




「結婚相手の紹介をするよう伝えると、ジャックたちは渋い表情で頷いてくれたよ。ただ、どうにも心配でね……」

「……なにが、そんなに心配なのですか? リンド」




 彼の話に、一つ訊ねたのはアーシャ。

 少女がそう言って首を傾げると、リンドさんは困ったように頬を掻いた。




「……いえ、これは説明に難しいですね」




 そして、さらに困った様子でこう続ける。




「とにもかくにも、私が同行できれば良いのですが。二人が挨拶に向かう日、こちらは国王陛下からの呼び出しを受けておりまして、そちらに赴かなくてはいけないのです」

「ふむ、それは困りましたね……」




 なるほど、とボクは状況を理解した。

 アーシャも同じく、頬に手を当てて考え込んでいる。とにかく、リンドさんは二人の挨拶に同行できない。そうなると、同行できるのは――。





「そこで、忙しいところ申し訳ないのだけど。今回の一件、二人の事情に詳しいライルくんにお願いできないかな、と思ってね」





 ――どうやら、ボクということになるらしい。

 リンドさんは苦笑しながら、そう言って頭を下げるのだった。



「……分かりました!」






 他ならないリンドさんの頼みだ。

 それに、二人には幸せになってもらいたい。



 そう考えれば、ボクに断るという選択肢はなかったのだった。




 


https://book1.adouzi.eu.org/n8746ia/

下記リンクから新作です。

修繕師寄りなハイファンタジーです(*‘ω‘ *)



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