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1.なぜか気恥ずかしくて。

第10章開幕です(*‘ω‘ *)!

紙コミックス1巻が1月27日発売です!


是非お手元に置いてやってください!!








 ――いったい、ボクはどうしたのだろう。

 先日の一件以降、何度かアーシャに日頃の感謝を伝えようとしてみた。しかし、いざ口にしようとすると、喉に言葉が詰まって出てこないのだ。

 理由は分からない。

 もちろん、アーシャに感謝していないわけではない。

 それどころか、いつも世話になってばかりだ。だから、この状況は正直よろしくない。だが、どうしたら良いのかも分からなかった。






「なぁ、聞いてるか? 師匠」

「……へ? あぁ、どうしたの。コルネ」




 などと考え込んでいると、弟子のコルネの声を聞き逃していたらしい。

 ボクは慌てて取り繕って訊き返した。すると彼は、少し呆れた様子で言う。



「……まーた、夜中まで依頼品の修繕してたんだろ? 少しは休めって」

「あ、あはは……心配してくれてありがとう、コルネ」

「心配というか、なんというかな……」



 こちらの言葉にどこか気恥ずかしい表情を浮かべるコルネは、しばし腕を組んだ後にツンとそっぽを向いてしまうのだった。彼は彼なりに、ボクの心配をしてくれたらしい。

 そう思っていると、次に声をかけてきたのはリーナだった。



「ライルさん、紅茶をどうぞ。心が休まりますよ?」

「あぁ、ありがとう。リーナ」



 彼女はそう言うと、ボクの前のテーブルにカップを置く。

 それに対して感謝を述べると、機巧少女は嬉しそうに微笑むのだった。




「あれぇ……?」




 だけど、ボクの方はといえば。

 むしろ自分のことが分からなくなって、首を傾げてしまった。いまの一連の会話の中でボクは、二人に自然と感謝を口にしていたのだから。

 それを認識すると、さらに疑問が生まれてしまうのだった。

 どうして、アーシャに限って感謝が伝えられないのだろうか。改めて確認するが、もちろん彼女のことを嫌いなわけでもなんでもないのだ。


 思い返してみると、リンドさんやテーニャにだって感謝は伝えている。

 しかし、ありがとう、という一言が彼女には向けられなかった。




「どういう、ことだ……?」




 ひとまず紅茶を口にしながら、ボクは眉をひそめる。

 そんなこちらの様子を見て、リーナとコルネは顔を見合わせて肩を竦めていた。

 ボク自身が分からないのだから、二人に訊いても分からないだろう。もし相談するとしたら少し年上で、こういった機微に敏感な相手の方が良いかもしれない。


 だとすると、いったい誰が良いだろうか。

 そんなことを考えていると、ちょうど店に来客があった。




「いらっしゃいませ……あ、ジャックさん!」

「おう、ライル! 修繕を依頼しにきたぜ!」




 挨拶をすると、そこに立っていたのはよく知る青年戦士。

 ジャックさんはボクを認めると、悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言った。そんな彼の顔を見て、ふとボクは先日の一件、その一連の流れを思い出す。

 その上で、もしかしたらと思ってこう言うのだった。




「……あの、ジャックさん。少し相談しても、良いですか?」

「ん……?」




 こちらの問いかけに、依頼書を記入する青年は首を傾げる。

 しかし、意外にすんなりと頷いてくれたのだった。



 


https://book1.adouzi.eu.org/n5722ia/

ついでに新作もよろしく。

下記リンクより(*‘ω‘ *)





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