15.リコとジャック、腐れ縁の二人。
電子2巻配信開始してます!!
紙コミックス1巻は1月です!!!!!
クリスマスなので、一気に頑張って更新したいです(願望
「ライルくん! これは、思ったよりも……!!」
「リンドさん、無理はしないでください!」
リンドさんたちを連れて墓地へと向かうと、そこにあったのは昼間とは打って変わって異様な光景だった。空気はどこか肌寒くなり、背筋が凍るような感覚がある。
墓の中から溢れ出したという霊体たちは、一見して靄のようだった。
実体がなく、しかし確かな存在感を持っている。
リンドさんたちは彼らと相対しながら、苦しい表情を浮かべた。
幾度か牽制するように剣を振るってみたが、どうにも手応えがないのだ。だから今は、とにかく時間を稼ぐしかないのだろう。
そう考えてボクが声をかけると、リンドさんは首を左右に振って言った。
「いいや、そういうわけにもいかない! ……この霊たちは、街の方へと向かおうとしている。このままだと、どれ程の被害が出るか分からない!!」
その言葉の通り、霊体と思しき靄は各々にどこかへ向かおうとしている。
もしかしたら自身の生まれた地、あるいは過ごした場所へ帰ろうとしているのかもしれない。無縁仏となった者も多い場所であるここでは、きっと寂しいのだろうと思った。
だが、仮にそうだとしても行かせるわけにはいかない。
悪霊となった者もいるのだろう。だからもし、突破を許せば――。
「ライルさん、やっぱりここは……!」
「テーニャ……うん、やっぱり彼女の協力が必要みたいだ」
そう考えていると、少年冒険者のテーニャが剣を構えて言う。
彼の言わんとしていることは、すぐに分かった。
きっと、この事態を解決できるのはリコさんしかいない。
ジャックさんやタイクさんが、彼女を説得して連れてくるまで。ボクたちはどうにかして、踏み止まらなければならない。だから――。
「信じて待つしかない。……お願いします、ジャックさん!」
ボクは、この場にいない青年戦士に希望を託したのだった。
◆
「なに、しにきたの……?」
「いいや、別に? 買い出しのついでに、な」
「そんなわけない。だって、タイミングが最悪すぎるもの」
いつものような剽軽さで。
何の遠慮もなく部屋に入ってきたジャックに対して、目元を赤くしたままリコはそう言った。青年戦士とは、自分が冒険者になってからの腐れ縁だ。何年も一緒に行動していれば、嫌でも相手の考えていることは分かってしまう。
そう思って、リコはこう訊ねた。
「……外に、お父さんがいるわね?」
戦闘経験のない素人がいかに息を殺しても、気配は消しきれない。
違う道を歩んできた彼女は鋭くそれを察知して、見事に言い当ててみせた。しかしジャックは相も変わらず、首を左右に振って続ける。
「いや? ……あ、台所借りるぜ?」
そしてリコの答えも聞かず、台所に買ってきた物を乱暴に置くのだ。
それに対して、彼女もあえて何も言うことはない。それこそ、ジャックという人物の性格をしっかりと把握しているからこそだった。
二人の間に、余分な言葉など要らない。
冒険者として死線を潜り抜けてきた相棒とも呼べる彼らには、きっと互いにしか分からない繋がりがあるに違いなかった。
「………………」
それが、いまのリコにとっては心地良い。
少々乱れていた心も、普段と変わらない青年を見て落ち着いていった。
そんなことを知ってか知らずか、ジャックは鼻歌交じりに料理を続けている。作っているのは温かなスープだろうか。ふわりと漂ってきた香りが、リコの鼻腔をくすぐった。
「……なぁ、リコ?」
「ん……?」
そうして、どれくらいの時間が過ぎただろうか。
作業もひと段落したのか、ジャックは鍋を見ながらこう言った。
「オイラ、リコのことを愛してる。好きだ」――と。
それは、あまりにも不意打ちで。
きっと彼女さえも、想像していなかった言葉で。だから、
「…………え?」
しばしの沈黙の後に、リコは小さくそう声を漏らしたのだった。
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