14.彼女が失った希望。
少女は誰にも頼れずに、生きてきた。
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――少女にとって、兄の存在は希望だった。
誰にも頼ることができない。振り払おうにも幼い子供にとって、家の問題はあまりにも重かった。その中において、リュードは間違いなく希望だったのだ。
リコは自身の無力さを痛感しながらも、兄の庇護下に身を隠す。
それが彼の負担になっていることは知っていた。分かっていたはずだった。
『お兄、ちゃん……?』
それでも、その結末は残酷すぎる。
自ら命を絶った希望を目の当たりにした少女は、ただ立ち尽くした。彼の残した遺書を読み、足元が崩れ去るかのような絶望に苛まれる。
昨日まで、ずっと笑顔だったリュードの顔を思い浮かべて。
その表情の裏にあって、自分が見て見ぬ振りをした悲しみは計り知れない。
どうして、こんなことになったのだろう。
原因はいったい、どこにあったのだろう。
そう考えているうちに、リコは一つの結論に至ったのだ。
そうだった。
自分もきっと『彼らと同じだったのだ』――と。
◆
「…………あぁ……」
ベッドの上に身を横たえているうちに、眠ってしまったらしい。
リコは頬に伝った涙を拭いながら、ゆっくりと身を起こした。今まで幾度となく夢に見てきた光景だが、いつまで経っても慣れることはない。最愛の兄の最期は、あまりにも孤独で悲しかった。誰にも理解されず、守られることもなかったのだから。
「私は、どうすればいいの……?」
そこまで考えると、思い出されるのはライルの必死な訴えだった。
あの青年が悪意をもって行動するとは思えない。そして同時に、嘘をついているようにも見えなかった。つまり彼が耳にした声の正体とは、間違いないのだろう。
それでも、だからこそリコは動けなかった。
「そんなの、だって……!」
まるで、あの日と同じように。
少女となった彼女は、膝を抱えて震え始めた。
理由は一つ。リコは兄に向き合う『勇気』が持てなかったのだ。
「お兄ちゃんは、私のこと絶対に……!!」
――大好きな兄は、きっと自分を恨んでいる。
それを誰かに確認したことはない。できるはずがなかった。
しかしあの遺書を目の当たりにした瞬間のことは、鮮明に思い出せる。そして、そこに連なった一字一句が答えのような気がしたのだ。
自分は間違いなくリュードにとって憎悪の対象だったのだ、と。
考えるだけで、気分が落ち込み涙が込み上げる。
誰にともなく救いを求めたくなる。
それこそ、あの頃のように。
「う、うぅ……!」
そうやって、自分は今までずっと逃げてきた。
兄を亡くした事実、そしてその一端となった『死霊術師』という職業から。冒険者として命を懸けていたのは、もしかしたら贖罪であり、逃避だったのかもしれない。
こうやって戦っていれば。
危険に身を置いていればいつか、兄のもとに行けるような気がしたから。
「……でも、駄目だったんだよ。私には、その勇気がない」
だが幸か不幸か、そんな彼女の隣にいたのは心強い仲間。
ジャックを始めとして、リンドのパーティーに加わってからは、よりいっそうに悲しい願いが遠退いていった。そして彼らと馬鹿な話をしている時間は自分から、彼と向き合う勇気、あるいは責任を一時的とはいえ忘れさせてくれたのだ。
とりわけ、ジャックはこんな自分のことを気遣ってくれた。
初めて会った頃から、無邪気な笑顔で自分を引っ張ってくれたのだ。
「あぁ、でも私はまたそうやって――」
――誰かを、頼るのか。
そうやってまた、誰かに『負担』を押し付けるのか。
そう考えてリコは静かに息を呑み、しばしの沈黙に身を委ねた。そして、
「ううん。いまは、もう少し休もう……」
そう、考えた瞬間だ。
「……リコ。いま、いいか?」
「え……?」
部屋の扉の外側から、彼の声が聞こえたのは……。
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