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12.リコの悩みと、ジャックの言葉。

復活傾向のあざね。

頑張って前に進んでいきます。

※あとがきに、コミックスの情報あります。









「あちゃー、ライル。それは思い切り逆鱗だな」

「す、すみません……」

「謝るならオイラじゃなくて、リコに、だな」

「……そうですね」




 夜の公園で、ボクとジャックさんは長椅子に腰かけていた。

 見上げた空には厚い雲がかかり始めている。明るく輝く星々も、月も、何もかもが覆い隠されてしまっていた。そんな中で自分は、己の犯した誤りを悔いている。

 ジャックさんにも指摘されたけど、どう考えてもリコさんの逆鱗だった。

 彼女にとって間違いなくトラウマであろう、リュードさんのこと。そういった内容を槍玉に挙げられたりしたら、仮にボクだったとしても苛立つに決まっていた。



「まぁ、リコの場合は怒ってる、っていうよりも――」



 そう思っていると、ジャックさんはこちらを気遣ったのだろうか。

 あるいは、より彼女を知る者としての意見だったのか。そこで一度静かに息をつくと、こう口にするのだった。




「たぶん、悩んでいるんだろうな。アニキさんとの向き合い方に」

「え……?」




 ボクはその言葉に、うつむきかけていた顔を持ち上げる。

 すると、ジャックさんはこちらを見て続ける。




「アイツ――リコは、本当は優しい奴なんだよ。感情の表現が苦手なだけでさ、本当は誰よりも周囲のことを気にかけている」

「それって……」

「あぁ、それはきっとアニキさんの一件があったからだ。でも優しい性格なのはきっと、アイツ本来の気質なんだろうさ」




 そして『だからこそ』と。

 彼は少々悪戯っぽい顔立ちに、慈愛に満ちた色を浮かべた。




「自分でも、このままでは駄目だと分かっている。家のことも、自分の役割のことも、そして自分自身の気持ちに対する向き合い方についても、な」

「ジャックさん……」




 彼の言葉はまるで、ボクを励ますようでもあって。

 そして同時に、進む道を示してくれているようでもあった。




「ライルのやり方は、少しばかり急ぎ過ぎだったかもしれないけどさ。必ずしもお前が悪いわけじゃないなんだ。問題は結局、リコが踏み出せるかどうか、だからな」




 リュードさんとリコさん。

 絡み合った糸のような二人の関係や、状況を解きほぐすように。ジャックさんは無邪気に笑って、語って聞かせてくれるのだった。

 そんな彼の表情や話に接していて、ボクはふとこう口にする。




「ジャックさんって、リコさんのことよく見てるんですね」――と。




 きっと彼は誰よりも、彼女のことを気にかけている。

 そして、誰よりもリコさんという人物を知っているのだ。

 そう思っての言葉だったのだけど、ジャックさんは思わぬ反応を示す。





「ば、馬鹿じゃねぇの!? オ、オイラはあくまで仲間として……!!」





 夜の闇の中でも分かるほど、顔を真っ赤にして。

 ジャックさんは、ボクの言葉に過剰に反応するのだった。




「え、どうしたんですか……?」

「う、うるせぇ! 急に変なこと言うな!!」

「変なこと、言いましたっけ……?」

「あー、この話はやめだ!!」




 ボクはその理由が分からずに首を傾げる。

 すると彼は強引に、会話の流れをぶった切るのだった。




「――とにかく、だ」




 その上で、こう言う。




「この後のフォローはオイラに任せろ。アイツのことは、付き合いの長いオイラの方が分かっているだろうからな」――と。





 ほんの少し赤らんだ顔に、子供っぽい笑みを浮かべながら。

 ボクはそんなジャックさんの言葉に、納得したように頷こうとした。





 その時だ。






「あぁ、あぁ……! ライルさん、ここにいたのですね!!」

「え……タイクさん?」






 ボクらのもとに、リコさんの父――タイクさんが姿を現わしたのは。

 彼は酷く狼狽えた様子で、こう言うのだ。





「た、大変なことになりました」

「大変なこと……?」





 ボクが訊き返すと、老爺は蒼白な顔で喉を震わせるのだった。








「墓の中から、霊たちが溢れ出して……!」――と。








 それはきっと、現状で考えられる最悪の事態。

 あの声の言う通り、一大事であるように思われた……。




 


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詳しくはスターツ出版、グラストcomic様のページへ!!


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