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9.立ち入り禁止の問題と、聞こえた声。

あとがきに最新作情報(あとがき下にリンクあり)

そちらも、続きが気になる方はブックマークや、下記のフォームより評価など!

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 ――リコさんの兄、リュードさんは自ら命を絶った。




 彼にもきっと、日頃から大きな負担がかかっていたのだろう。

 それもそのはずだ。自分自身も他人からの悪意を受けつつ、妹の分まで必死に肩代わりしていたのだから。いつの日にか、緊張の糸が切れてしまってもおかしくなかった。

 だが、その中でもさらに不運だったのは――。



「彼の遺体と遺書を最初に見つけたのが、リコさんだったこと……か」



 リンドさん曰く、リュードさんの遺体の第一発見者がリコさん。

 そして彼女は、最愛の兄の残した遺書を読んだらしい。そこに何が書かれていたかは分からないものの、いまのリコさんが素性を隠して冒険者になったことを考えると、想像に難くない。


 きっと、リュードさんは……。




「これ以上、踏み込んでも良いのか……?」




 ボクはリュードさんの墓標の前で、一人そう呟いた。

 なにか問題を抱えていて、それが家族の問題だと思ったから首を突っ込んだ。それだけでも、十分な越権行為だったのは理解している。

 しかし、そこにあった問題の根は想像以上に深かった。

 人一人の命を背負って、なにかをする資格なんて、少なくともボクにはない。

 もし、それがあるとすれば、当事者であるリコさんだけ。だけど、そんな彼女にかける言葉をボクは持っていなかったのだ。




「それでも、依頼はこなさないと……」




 ――分かっている。

 いつもながら、ボクは部外者でしかない。

 それでも与えられた修繕依頼は、しっかりとやり遂げなければならない。




「リュードさん、貴方は――」




 そう考えて、ボクは最後の最後に。

 リコさんの最愛の兄であるリュードさんの墓に触れた。すると、




「――え?」




 思いもしないことが、起きたのだ。

 しばしの沈黙の後、突風が巻き起こり吹き抜けていく。

 そのことに驚くよりも、ボクには信じられないことがあったのだ。




「……いまの声、いったい誰の声だ?」




 周囲を見回しても、ボク以外に人の気配はない。

 それでも、ボクの耳にはハッキリと聞こえたのだ。男性のそれで――。









『助けてほしい。このままでは、大変なことになる』――と。








 あまりに悲しい声色で。

 懇願するように、その男性はそう言っていた。




「大変なこと……? それって、いったい」




 なにを意味するのだろうか。

 それは、分からない。だけど、居ても立っても居られずにボクは立ち上がった。そして、急いでタイクさんたちのいる小屋へと向かって駆ける。



 言いようのない緊張感と、胸の鼓動を必死に抑えながら……。




 


https://book1.adouzi.eu.org/n6663hx/

新作もよろしくね。

異世界恋愛に挑戦してみました。




面白かった

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