8.リコの心を苛めるもの。
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「リコが、冒険者になった理由……?」
「はい、不躾とは分かっているんですけど」
翌日ボクはその日、一日を休暇としてリンドさんの家を訪ねた。
ちょうどシエスタさんも一緒にいて、昔の話を訊きたい、とお願いしたら快く通されたのだ。しかしボクが話題を切り出した瞬間、少しだけ空気が変わる。
「リンドさん。あまり、リコのことは……」
「いや、シエスタ。ライルくんが訊きたがっているということは、彼にもそれなりの思いがある時だろう。安易に他人の問題に足を踏み入れる青年ではないよ」
「……そう、ですね。貴方がそう言うなら」
「すみません。お二人とも」
これはきっと、なにか事情があるのは間違いなかった。
二人はそれを知っている。ボクは引け目を感じる心に喝を入れてリンドさん、シエスタさん両名の話に耳を傾けた。
すると、最初に口を開いたのはリンドさん。
彼は眉をひそめて、こう訊いてきた。
「彼女の家系が『死霊術師』であることは、きっともう知っているよね?」
「……はい」
「そうか。それなら、話が早い」
そして、一つシエスタさんに目配せをしてから続ける。
「『死霊術師』とは、その特異性から疎まれることの多い役割だ。そういった扱いは、リコが幼少の頃からあったらしい。イジメや嫌がらせ、同年代の子供からの無視。そんなことは日常茶飯事で、しかし彼女を守ってくれる存在もいた」
「守ってくれる、存在……?」
ボクが首を傾げると、言葉を引き継いだのはシエスタさんだった。
「リコのお兄さん、です。お兄さんは自分もイジメを受けているにもかかわらず、泣いてばかりの彼女のことを助けてくれた、という話です。リコはそんなお兄さんを頼りにしていたそうですが、そんな状況がいつまでも続くわけがなくて――」
「シエスタ。そこから先は、私が話すよ」
「…………はい」
タイクさんも語らなかった内容に耳を傾けていると、リンドさんが割って入る。そして、ここが問題なのだと分かるほど真剣に、息を整えて目を細めた。
彼は再度、ボクの覚悟を確かめるように視線を送ってくる。
それに真っすぐ応えて頷くと、リンドさんは一つ息をついて話すのだった。
「どうしても、リコの兄には負担が大きかったのだろう。一時的なものなら、それはきっと耐えられただろう。しかし問題は家柄そのものが関係していた。まだまだ子供だった二人が、簡単に覆せる問題ではない。そして、ある日――」
そこで一度、言葉を切って。
自身も覚悟を決めてから、沈んだ声色でこう言った。
「リコの兄、リュードさんは……自ら命を絶ったんだ」――と。
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