7.職業の貴賤。
少し暗めなお話ですね。
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「『死霊術師』……ですか?」
「えぇ、そうなのです。私たちの家系は代々、この国の霊魂を鎮める役割を与えられた死霊術師。もっとも、そのようにたいそうな肩書きに及ばぬ実力ですがね」
「そう、だったんですね……」
思わぬ告白に、ボクはつい言葉を詰まらせてしまう。
世間的に『死霊術師』といえば、死者の魂や遺体を使役する者を指す。しかしどうやら、タイクさんたち夫婦が生業としているのは、そういったものと正反対のようだった。
どちらかといえば、霊との対話による鎮魂を目的とするような。
つまり、世の中に蔓延っている死霊術師のイメージとは異なっていた。
「ははは。驚かれるのも仕方ないです。……気味が悪いでしょう」
「そんなことは! でも、もしかして――」
自嘲気味に笑うタイクさんに、ボクは大急ぎで否定の言葉を告げる。
しかし、それよりも気になったのはやはり――。
「……えぇ、そうです。ライルさんの考えは、正しいですよ」
「それって、リコさんが家に戻らない理由、ですよね?」
ボクの問いかけに、タイクさんは静かに押し黙った。
それはすなわち、無言による肯定。しばしの間を置いてから、老爺は深く息をついて語り始めた。その内容はボクが考えるよりも、根の深い問題に思えるもの。
「私たち死霊術師はその名の通り、死霊との対話や遺体の管理を行います。それはどうしても、世間の皆様からしたら疎ましい、侮蔑の対象だったのでしょうね」
「………………」
だからボクは、思わず言葉に窮して黙り込んでしまった。
人々はどうしても『綺麗なもの』を好む。これは自分だってそうだし、人間として一般的な感性であるから批判はできなかった。
だけど、タイクさんの語る言葉に込められた苦しみはそれ以上のもので。
ボクの脳裏によぎったのは、ある言葉だった。
『修繕師になんてさせないからな!!』
先日、夢に見た過去の光景。
祖父と父が言い合いになって、その最後に父が吐き捨てたものだった。
それは、修繕師という職業そのものに恨みを込めるような、悪意の塊そのもので。だからこそボクは、タイクさんたち死霊術師の役割を否定的に見ることができなかった。
職業に貴賤はない。
そんなこと、みんな分かっているはずなのに。
どうして、そのような偏見が生まれてしまうのだろうか。
「あぁ、ライルさん。……ありがとう、私たちのために苦しんでくれて」
「え……?」
そんな気持ちが、表情に出ていたのだろうか。
タイクさんは少しだけ驚いた後に、そう優しい声をかけてくれた。そして、
「ですが、真に苦しんでいるのはリコでしょう。あの子は……」
「タイクさん……?」
「……あぁ、いえ。なんでも、ないのです」
ふと、なにかを口にしかけて押し黙ってしまう。
ボクが首を傾げると、タイクさんは椅子から立ち上がってこう言った。
「今日はもう、遅いですから。お仕事も終わりにしましょう」
「え、はい……」
そして彼はその場を去ってしまう。
だけどボクの胸には、タイクさんの話そうとしたことが引っかかって仕方がないのだった……。
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