11.残された希望と、ライル。
これにて第8章終了です。
最後の部分は、いわゆる匂わせです(ぉぃw
「それはまた、不思議な経験をしましたね」
「うん。でもそれより、ノア様の助けになれてよかったよ」
――王都に帰還し、ボクの日常が戻ってきた。
コルネへの指導もひと段落したので、休憩時間を利用してアーシャとリーナにアルミンたちの話を語って聞かせる。しかし話せば話すほど、改めて不思議な出来事だった。
それでも、ボクの心には青年の想いが残っている。
一つの家族の在り方。
それは、もしかしたらボクにとって――。
「……ところで、ライルさん」
「ん?」
「その手紙にはいったい、なんと書かれていたのですか?」
そこでふと、リーナが訊いてきた。
アーシャが横から「野暮ですよ」と、そう指摘する。だが機巧少女にとっては、父と子の関係を表すものとして興味深かったのだろう。それ以上、多く口にはしなかった。――ただ、どうにも無言の圧というものを感じてしまう。
「うーん、そうだね……」
ボクは頬を掻いて、思わず苦笑い。
そして、少しだけ考えてから答えるのだった。
「……あれは、きっと希望だよ」――と。
◆
『父さんへ
この手紙が見つかる頃には、僕はもしかしたら……。
なんて書き出しにしたけれど、そうでないことを祈っています。明日も父さんから、母さんの話を聞きたいし、それ以外にも訊きたいことはいっぱいあるから。
だけど、こうして残さないと後悔する気がしたから。
直接伝えるのは、それでも気恥ずかしいので手紙にしようと思います。
父さんは昔から、誰かのために一生懸命だったよね。
王都からこっちにきて、最初は街のみんなのため。その次には、愛する母さんのために。そして今は、僕のために。常に誰かのために頑張って、疲れてないか心配です。
だからもし、いつか我慢ができなくなって。
とても深く傷ついてしまうのではないか、って。
もしそうなったら、みんなを頼ってください。
僕を含めて、街のみんなは父さんに感謝しています。
父さんが大切に思っているのと同じくらい、みんながそれぞれ、父さんのことを想っているんです。だから信じて、頼ってください。
……なんだか、遺書みたいになっちゃったな。
そんなつもりはなかったんだけど、これは額縁の裏にでも隠しておきます。
見つからないに越したことはないし、僕が元気ならそれでいいから。
それじゃ、またね!
父さん いつまでも愛しています。
アルミン』
◆
「――そう、か。ご苦労だったな、ライル・ディスガイズ」
「いえ、そんなことは」
国王陛下の私室で、ボクは今回の一件について報告していた。
一通りを話し終えると、陛下は一つ頷く。
「それでは、今日はもう帰ってよいぞ。謝礼は後日、使いの者に送らせよう」
「分かりました」
そして、最後にそう言った。
ボクもこれ以上、この緊張する空間に長居はしたくない。そんなわけで、一礼した後に部屋を出ようとした。その時だ。
「あぁ、そうだ。ライルよ――」
陛下が、ボクにこう訊ねたのは。
「シャッツ・ディスガイズは、息災か?」――と。
瞬間、思考が凍り付いた。
何を言われたのか、最初は理解できなくて。
それでも、何も答えないわけにはいかないから。だから――。
「あ、あはは……」
苦笑いを返すしか、できなかった。
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