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11.残された希望と、ライル。

これにて第8章終了です。

最後の部分は、いわゆる匂わせです(ぉぃw










「それはまた、不思議な経験をしましたね」

「うん。でもそれより、ノア様の助けになれてよかったよ」




 ――王都に帰還し、ボクの日常が戻ってきた。

 コルネへの指導もひと段落したので、休憩時間を利用してアーシャとリーナにアルミンたちの話を語って聞かせる。しかし話せば話すほど、改めて不思議な出来事だった。

 それでも、ボクの心には青年の想いが残っている。


 一つの家族の在り方。

 それは、もしかしたらボクにとって――。




「……ところで、ライルさん」

「ん?」

「その手紙にはいったい、なんと書かれていたのですか?」




 そこでふと、リーナが訊いてきた。

 アーシャが横から「野暮ですよ」と、そう指摘する。だが機巧少女にとっては、父と子の関係を表すものとして興味深かったのだろう。それ以上、多く口にはしなかった。――ただ、どうにも無言の圧というものを感じてしまう。



「うーん、そうだね……」



 ボクは頬を掻いて、思わず苦笑い。

 そして、少しだけ考えてから答えるのだった。




「……あれは、きっと希望だよ」――と。











『父さんへ


 この手紙が見つかる頃には、僕はもしかしたら……。

 なんて書き出しにしたけれど、そうでないことを祈っています。明日も父さんから、母さんの話を聞きたいし、それ以外にも訊きたいことはいっぱいあるから。


 だけど、こうして残さないと後悔する気がしたから。

 直接伝えるのは、それでも気恥ずかしいので手紙にしようと思います。




 父さんは昔から、誰かのために一生懸命だったよね。

 王都からこっちにきて、最初は街のみんなのため。その次には、愛する母さんのために。そして今は、僕のために。常に誰かのために頑張って、疲れてないか心配です。


 だからもし、いつか我慢ができなくなって。

 とても深く傷ついてしまうのではないか、って。


 もしそうなったら、みんなを頼ってください。

 僕を含めて、街のみんなは父さんに感謝しています。

 父さんが大切に思っているのと同じくらい、みんながそれぞれ、父さんのことを想っているんです。だから信じて、頼ってください。



 ……なんだか、遺書みたいになっちゃったな。

 そんなつもりはなかったんだけど、これは額縁の裏にでも隠しておきます。



 見つからないに越したことはないし、僕が元気ならそれでいいから。

 それじゃ、またね!



 父さん いつまでも愛しています。




                             アルミン』












「――そう、か。ご苦労だったな、ライル・ディスガイズ」

「いえ、そんなことは」




 国王陛下の私室で、ボクは今回の一件について報告していた。

 一通りを話し終えると、陛下は一つ頷く。




「それでは、今日はもう帰ってよいぞ。謝礼は後日、使いの者に送らせよう」

「分かりました」




 そして、最後にそう言った。

 ボクもこれ以上、この緊張する空間に長居はしたくない。そんなわけで、一礼した後に部屋を出ようとした。その時だ。




「あぁ、そうだ。ライルよ――」




 陛下が、ボクにこう訊ねたのは。






「シャッツ・ディスガイズは、息災か?」――と。






 瞬間、思考が凍り付いた。

 何を言われたのか、最初は理解できなくて。

 それでも、何も答えないわけにはいかないから。だから――。




「あ、あはは……」





 苦笑いを返すしか、できなかった。




 


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